【スープラの歴史を辿る】歴代モデルの特徴と進化の軌跡を徹底解説!

2002年に販売終了した80型の後、17年ぶりとなる2019年にトヨタのスポーツ系ブランド「GR」の専売モデルとして復活を遂げたスープラ。

今年で46年を迎えるその歴史を辿り、スープラがどんなクルマなのかを掘り下げてみよう。

スープラの誕生背景

スープラという車種が誕生したのは1978年。

トヨタのスペシャルティカーのポジションとして販売されていたセリカの上位モデルとして、その車格に相応しいように直列6気筒エンジンを搭載して発売されたのが「セリカXX(ダブルエックス)」。

その北米販売モデルの名称として考えられたのが「スープラ」である。

セリカとの関係

中位の価格帯でカジュアルに乗れる位置づけのセリカに対して、最上位モデルのクラウンに次ぐ価格帯でスポーティな雰囲気が与えられた“高級スペシャルティカー”と呼ばれる新たなポジションのモデルとして生まれたのがスープラというわけだ。

スープラの名前の由来

スープラの綴りは「SUPRA」で、ラテン語で「上に」「超えて」という意味がある。

ベースモデルであるセリカはスペイン語で「天国の、神の」という意味で、国内の名称はそこに未知の象徴である「X」を2つ重ねて「XX(ダブルエックス)」と付けられた。

しかし北米でリリースする際に「XX」は性的な隠語として使われていて不適切と判断されたため、代わりにスープラという名が与えられたとされている。

初代スープラ(A40/A50型、1978-1981年)

コンセプト

日本国内の景気の向上に合わせた高級レンジのスペシャルティカーを投入するため、セリカのリフトバックのボディ前半部を延長して直列6気筒エンジンを搭載。

加えて内外装共に高級&先進装備を充実させ、最上位モデルであるクラウンのスポーツクーペ版的位置づけのモデルとして展開された。

エンジンとパワートレイン

搭載されるエンジンはすべて直列6気筒SOHCエンジンに統一。ほぼクラウンと同じ

当初は2.0ℓの「M-EU型」と2.6ℓの「4M-EU」で展開されたが、1980年におこなわれたマイナーチェンジで2.8ℓの「5M-EU型」が追加された。

型式名で分かるとおり、すべて電子制御燃料噴射のEFI仕様で、排気ガス規制に対応した。

また、ミッションはクラウンと共にトヨタで初めて4速ATが投入された。

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当時の評価と販売実績

この代のスープラの北米での販売成績は不明だが、国内版セリカXXの40型と後期の50型を合わせた販売台数は3万9082台で、セリカ全体の13万7165台の中では22%を占める。

数字としては寂しい結果だが、高級スペシャルティカーという新たなジャンルの先駆けとなった功績は大きい。

2代目スープラ(A60型、1981-1986年)

コンセプト

スープラとして2代目となるA60型も、国内では引き続きセリカの上位モデルとしての「セリカXX」として販売された。

しかしこの代ではよりラグジュアリー面を強調したソアラが投入されたため、こちらはよりスポーツ色を強めた性格のクルマとして仕立てられた。

そのキャラクターを立たせるために、空力特性とデザイン性を高めるリトラクタブルライトが採用された。

装備としてはオートドライブやクルーズナビコンなど、ソアラと共にその当時の最先端機能が盛り込まれていた。

エンジンとパワートレイン

エンジンは先代に引き続いて直列6気筒のみで、2.0ℓと2.8ℓという基本構成。

そのどちらの排気量もDOHC型式にバージョンアップされている。

上位版の2.8ℓ「5M-GEU型」は「5M-EU型」の発展系で、170psと出力は大幅に向上。空力特性の良さと合わせて200km/hオーバーのポテンシャルを誇っていた。

2.0ℓ版はそのレンジの次世代ユニットである「1G-EU」に切り替わる。

当初はSOHCだったが、後にDOHC版の「1G-GEU」が投入された。

また、先代の「M-EU型」にターボを装着した「M-TEU型」(145ps)も追加された。

モータースポーツでの活躍

発売してすぐはモータースポーツ活動をおこなっていなかったが、海外のETC(ヨーロッパツーリングカー選手権)やイギリスサルーンカー選手権などのグループAシリーズに参戦を開始。

続いて国内のJTC(全日本ツーリングカー選手権)にも参戦したが、めぼしい成績は残せなかったようだ。

2代目の販売実績と評価

60型のセリカ全体としての販売台数は15万1297台とスマッシュヒットを記録。

この代のセリカXXとしての販売台数は不明だが、高い話題性を生んだこともあって販売成績は良かったと思われる。

業界の反応や評価も高く、マンガや映像作品に登場していたのはその表れと言えるだろう。

3代目スープラ(A70型、1986-1993年)

コンセプト

先代の60型と同じく、ソアラと共通のプラットフォームで作られるが、この70型の代から車名が北米と統一されて「スープラ」となり、名実ともにセリカとは独立した車種となった。

基本コンセプトは先代と同じく、兄弟車のソアラとの差別化でスポーツ系の方向性で展開された。それに伴いボディサイズは拡大され、3ナンバーサイズとなった。

セリカXXのアイコンでもあったリトラクタブルライトは引き続き採用された。

エンジンとパワートレイン

エンジンの構成は、2ℓクラスがSOHCの「1G-EU」「1G-FE」、DOHCの「1G-GEU」、DOHCターボの「1G-GTEU」の4種類。

2.5ℓクラスには新開発されたDOHCターボの「1JZ-GTE」型が投入され、最上位には3.0ℓクラスのDOHCエンジンにターボを組み合わせた「7M-GTEU」が用意されていた。

この当時は280PSの自主規制枠いっぱいの出力のエンジンが各メーカーから出揃っていて「パワー戦争」などと言われる様相だった。

スープラの最高スペックは280psの「1JZ-GTE」だが、実質の最強ユニットは270psながら排気量による厚いトルクを発揮した「7M-GTEU」(ターボA)と目されていた。

トランスミッションは4速ATと5速MTの設定。

モータースポーツでの活躍

70型スープラでは国内のモータースポーツ参戦のメイン車種となり、トヨタワークスとして精力的な取り組みがおこなわれた。

国内では早くからワイドボディ仕様のグループAホモロゲーションモデル「3000GT ターボA」で参戦し、印象的なデビューウインを飾ったが、その後はライバル車の台頭に押される形で戦績は尻すぼみとなっていった。

3代目の販売実績と評価

3代目(国内では初代)70型スープラの国内新車登録台数は9万385台。兄弟車のソアラが14万台強を売り上げるヒットを記録したので目立たないが、スポーツ系ラグジュアリー車としてはかなりの販売台数だったと言える。

モータースポーツでの成績は振るわなかったものの、国内最強レベルのパワーユニットと最新技術を投入した足まわりと各種装備の充実により、長距離を移動するGTカーとして高い水準にあったため、評価は総じて高かった。

4代目スープラ(A80型、1993-2002年)

コンセプト

4代目となる80型スープラは、「THE SPORTS OF TOYOTA」と掲げられたキャッチコピーの通りに、よりスポーツ色を強めたキャラクターに仕立てられた。

この代でもソアラとプラットフォームを共用しているが、ソアラはこれまでとは方向性を変えてオープンボディとなったためシャーシの強化がおこなわれ、スープラの剛性も大幅に向上した。

外観ではリトラクタブルライトをやめて固定式の行け以来とを採用。

全体のフォルムはカチッとした面構成の先代からガラッと変えて曲面主体のなめらかなデザインとなった。

新プラットフォームによりホイールベースは短縮、逆にボディ幅は拡大され、ホイールベース・トレッド比は1.67となり、理想値と言われる値に近付けられている。

ハンドリングなどのスポーツ性能を評価する場としてドイツのニュルブルクリンクを本格的に活用したという点を見れば、トヨタが世界に通用するスポーツ車を作るという強い意気込みが窺える。

スポーツ色を強めたことにより、サスペンションやブレーキなども国内の最高レベルのものが装着されている。

エンジンとパワートレイン

エンジンは全グレードで当時のトヨタ最強のユニットである3ℓの「2JZ型」に統一され、280psを発揮するツインターボの「2JZ-GTE」と、225psそ発揮するNAの「2JZ-GE」の2種に絞られた。

「2JZ-GTE」は自主規制から出力を280psに抑えられていたのでライバル車と同じ数値だが、3ℓ(2997cc)という国産では最大サイズの排気量から得られる46kgmという厚いトルクは国産車のトップを誇った。

トランスミッションはトヨタで初めて6速MT(ゲトラグ社と共同開発)が採用された。

モータースポーツでの活躍

モータースポーツでの活躍は、1993年に始まったJGTC(全日本GT選手権)が主戦場となった。

それまで参戦していたJTCは改造範囲の少ないグループA規定だったが、JGTCでは大幅な改造が認められるグループC規定に近いレギュレーションとなり、大型ウイングを備えた超ワイドボディで武装され迫力の姿が、モータースポーツ好きのファン達を魅了した。

その時代はホンダ・NSXと日産・スカイラインGT-Rとスープラで三つ巴の戦いが繰り広げられた。トヨタがワークスとして参戦を開始した当初は突貫で作られた車両の調整に苦心してめぼしい結果が出せなかったが、後半は熟成が進んだスープラも良い成績を残せるようになった。

ちなみにJGTCではエンジンの変更もレギュレーションで許されていたため、当時最も戦闘力が高かった4気筒の3S-Gベースのビッグタービン仕様「661E」を搭載。後期では5.2ℓのV8(NA)エンジンに切り替えられた。

映画「ワイルド・スピード」シリーズに起用

また、当時はチューニングの勢いが過熱していた時代で、国産のスポーツ系では最大排気量だった「2JZ-GTE」エンジンを搭載したスープラが最強の一角を占めていた。

その影響から、大ヒットしたカーバトル映画の「ワイルドスピード」シリーズに起用され、北米から大きなムーブメントを生み出した。

4代目の販売実績と評価

80型スープラの販売実績は、新車登録台数で3万1372台。兄弟車のソアラは6486台で、歴代で初めて上回る結果となった。

強力な2JZエンジンに注目が集まりがちだが、短いホイールベースを活かしたコーナリング特性も評価が高かった。

日本のサーキットや山道ではライバル車にタイムで敵わなかったが、ニュルやヨーロッパの高速道路などのハイスピードなステージではスープラの性能と特性の良さが高く評価されていた。

5代目スープラ(A90型、2019年-)

コンセプト(BMW Z4とのジョイント開発)

90型スープラは、BMWとの提携によって生まれたモデルと言っていいだろう。

企画はトヨタからの発信で始まり、設計・検討はBMWでおこなわれたが、商品の方向性にはトヨタの要望がかなり盛り込まれている。

その方向性は、できるだけ妥協せずに本格スポーツカーを作るというもの。

クルマの運動性能を決めてしまう四輪の位置関係の数値であるホイールベース・トレッド比を、加速、曲がる、止まるのバランスが理想的と言われる1.6にできるだけ近づけることから車体の寸法を決めていった。

企画当初の段階ではミッドシップやハイブリッドも含めて健闘され、エンジンも直列6気筒の採用が決まっていなかった。

トヨタとBMWの強みを活かし、ハイブリッドではなくレシプロエンジンのみの展開が決まった段階でスープラとしては必須条件だった直列6気筒を採用することができ、GRブランド初の専売モデルとして17年ぶりの復活が叶った。

同様にBMWではZ4として復活するモデルとなり、トヨタとBMW共に、この技術提携でなければこのご時世にこれほどスポーツ性に割り切ったモデルをリリースすることは叶わなかっただろう。

基本の構成が定まった後の性格付けは各社独自におこなっているので、乗り味は別物に仕上がっている。

プラットフォームやエンジンをはじめ、ほぼすべての部品の設計はBMWがおこない、生産はオーストリアの「マグナ・シュタイア」でおこなわれる。

搭載エンジンとパワートレイン

搭載されるエンジンはすべてBMW製のもの。フラッグシップモデルには直列6気筒2997cc直噴+ターボ(ツインスクロール)で387psを発揮する「B58型」を搭載。

また、スープラとしては初となる4気筒エンジンが採用されたのも特筆ポイントだろう。

そちらは「B58型」から2気筒を除いて4気筒にしたような、気筒数以外はほぼ同じ構成の直噴+ターボ(ツインスクロール)で、燃費重視の低出力版(197ps)と、性能重視の高出力版(258ps)の2本立て。

燃費よりもスポーツ性を優先させたため、いわゆる“バブリング”機構を搭載している。これはスープラのみの設定。トランスミッションは当初8速ATのみの展開だったが、市場の要望により6速MTが追加された。

新世代のデザインと技術

デザインのテイストは先代の80型に共通する曲面主体のものだが、スポーツ性に振り切ったシャーシ設計を反映し、よりスポーツカーらしいシルエットに仕立てられている。

ルーフ形状は、トヨタ2000GTをオマージュしたとも取れる“ダブルバブル”スタイルを採用。空力特性の向上にも寄与する。

また、スポーツ車と言えど安全性能を欠くことはできないため、レーダーとカメラを使った衝突回避機構を採用。前車追尾や車線逸脱警告などの機能も備えている。

注目は、走行時の車両の情報を記録するロガー機能を採用している点。

実際の走行の情報を専用のアプリで処理し、確認、再生などが可能となっている。

モータースポーツでの活躍

GRでは市販車の発売に先駆けて、2018年に数種類のレース用コンセプトモデルを発表した。

海外ではLM-GTE仕様やNASCAR仕様、GRスープラ レーシングコンセプトを展示したが、国内ではSUPER GTのGT500クラス向け車両のプロトタイプ「GRスープラ スーパーGTコンセプト」を2018年の「東京オートサロン」で展示した。

そして2019年からは本格参戦を開始。すでに参戦しているレクサスLC500と共用のレース専用シャーシに、レース専用の直列4気筒直噴ターボの「R14AG」エンジンを搭載したマシンを投入する。

戦績は2019、2023年でシリーズチャンピオンを獲得し、しっかりと結果を残している。

また、世界各地でおこなわれているツーリングカーレース向けに、サーキット専用車の「GR Supra GT4」を18万6000€(約3060万円。※2023年型のEVO)で販売している。

5代目の販売実績と評価

90型スープラの販売状況は、国内ではコロナの影響で落ち込む年も挟みつつ、堅調に販売目標の200台/月をおおむねクリアする好調を維持しているようだ。

一方海外ではざっくりと5000台/年という勢いで販売できているようで、兄弟車のZ4やポルシェ・ボクスター&ケイマンを大きく上回る結果を残している。

評価の面でも高いレベルにあるようだ。

国内外のインプレッション記事を見てみると、トヨタ車らしくないという声も混じるものの、おおむねその剛性や、優れた車体の比率、そして扱いやすく官能的であるエンジンなどによるコーナーリング特性の良さや高いドライビングプレジャーが好評を博しているようだ。

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スープラの歴代モデルの比較まとめ

エンジンの進化

エンジンは直列6気筒にこだわって、5代にわたってそれを守ってきた。

初代の「M系」にはじまり、DOHC専用設計の「G系」を経てターボ主体の「JZ系」に進化して1つのピークを迎えたのち、現在はBMW製ハイパワーユニットの「B系」に至っている。

出力を最強モデルで見てみると、「4M-EU型」の145psから、現在は「B58型」の387psまで、モデルチェンジごとにアップし、その代ごとの最強クラスのパフォーマンスを発揮してきている。

走行性能の向上

初代の「40&50型」は今見返すと4気筒のセリカに6気筒を搭載して装備を充実させた、形だけ高級感をまとわせたクルマという言い方もできる。

そのため走行性能もそれなりでしかなかっただろう。

しかし代を重ねるごとにスポーツ色が強まっていき、80型ではトヨタを代表するスポーツモデルにまで昇華した。

そして現行の90型では基本レイアウトの選定から始め、妥協なく本格スポーツカーとしての必須条件を盛り込んだ結果、世界でもトップレベルの走行性能と高いドライビングプレジャーが得られるクルマに生まれ変わった。

市場での評価の変化

モデルチェンジごとにキャラクターが変化してきたのは、ある意味市場の動向とユーザーの求める方向性の変化にアジャストした結果だと言うこともできる。

国内ではライバルメーカーの競合車種に一歩先駆けてマーケティングを展開してきた部分もあり、全ての代でとは言えないが、おおむねそのジャンルのニーズを引っ張ってきたように思える。

現行の90型に至っては、環境対応が第一命題のこのご時世に高出力なレシプロエンジン専用モデルを新規開発するというアクロバティックな企画を展開し、むしろ市場に対してクルマの在り方のひとつの方向を提案しているようにも感じられる。

その評価は順調な販売成績が実証しているのではないだろうか。