2012年の登場からずっと高い水準で人気を誇り、2021年のモデルチェンジで「GR」ブランド扱いとなってさらに人気が再燃した感のある「GR86」。 素の魅力もさることながら、カスタムベースとしても盛り上がりを見せるこの「GR86」の、カスタムの面での魅力を掘り下げてみよう。
GR86のカスタムの魅力
GR86のカスタムの魅力の要因は、なんといってもそのパーツの豊富さにあるのではないだろうか。 GR純正のカスタムパーツだけでもひと通りの機能を伴ったドレスアップが楽しめるほか、サードパーティのパーツメーカーやショップオリジナルパーツまで、数え切れないくらいの商品が溢れている状態だ。 これにはGR86のデザインが、ドレスアップが映える素材として優秀だという点も貢献していると思われる。
カスタムの目的は?
カスタムの目的には大きく「機能性向上」と「ドレスアップ」の2つに分けられると思う。 機能性の向上としては、リヤウイングや各スポイラーなどのエアロパーツや、マフラーやエアクリーナーなどの吸排気系パーツ、そして高性能ホイールや強化ブレーキなどの足まわりのパーツが挙げられる。 ドレスアップのパーツは主に内外装のルックスをアップデートするためのパーツだが、上記の機能性向上パーツもその目的で使われることも多い。 巷には様々なパーツが販売されているので、中には道交法の保安基準に合致していないものもあり、その点は購入時に確認するなど注意が必要だ。
エクステリアのカスタム
GR86のイメージを効果的にブラッシュアップできる外装のカスタムパーツから見ていこう。
フロントバンパー
まずいちばんの見せ所である顔まわり、フロントセクションのカスタムでいちばん需要が多いのがリップスポイラーだろう。 大きな変化は見込めないが、純正の良さを維持しながら機能性を付加してくれるアイテムだ。
その多くはアゴの下面に装着して、整流効果の向上と張り出し感を強調してくれるものだが、左右別体のものや凸型に中央が盛り上がったものなどがあり、さり気なく差別化もできる。
大胆にイメージを変えたい場合はバンパーごと換える方法も有効だ。 これはダクト形状など純正と変化を付けたものも多く、イメージの変化と共に、空力や冷却性にも影響が出るので、造形の目的も確認しておきたい。
サイドステップ
サイドステップは車体下面の空力効果を高めるのが本来の目的だが、実際はその多くが、ボディのシルエットにかたまり感を強め、最低地上高を低く見せる効果の方が用途として大きいように思う。 また、面の広いサイドセクションでアクセントを持たせられるアイテムでもある。 車高の設定によっては歩道に乗り上がる際にサイドステップが擦ってしまうこともあるので、その点に注意して選んで欲しい。
リアバンパー
リヤバンパーはフロントと同じく、イメージを大きく変えられるアイテムだ。 GR86の純正バンパーは下部がディフューザーを意識した形状になっているので、それを強調するタイプや、逆に抑えてすっきり感を強めたものもあり、全体のイメージに合わせてコーディネートしてもらいたい。 また、左右両出しのマフラーとの兼ね合いも考慮すると収まりが良いだろう。
ボンネット
ボンネットはそれだけを交換するというパターンは少ないと思う。 ボンネットを交換するいちばんの目的は軽量化だが、GR86は純正で軽量なアルミが使われているので大幅な軽量化は見込めない。 なので交換する目的としてはダクトなどが加えられたものを選び、機能感を高めるケースが多いだろう。 大きなダクトが設けられたものはイメージの変化も大きいが、日常で使う場合は雨の日などの対策が考えられたものを選ぶようにしよう。
インテリアのカスタム
GR86はインテリアカスタムの需要が多いクルマで、市販のパーツも豊富に展開されている。
シート
実際にサーキットなども楽しむという場合は、レカロやブリッドなどのフルバケットタイプのシートを選ぶことが多い。 見た目もレーシーな雰囲気になるので機能とルックス両面で有効なアイテムだが、リクライニング機構は廃されているので、使い勝手は制限される。 特に、統一感を狙って左右ともフルバケットタイプに交換してしまうと、リヤシートへのアクセスが困難になるので、助手席のみリクライニング機構が付いたセミバケットタイプにするといいだろう。 手軽にイメージ変更をしたいなら、シートカバーも何社からか販売されているので、それを試してみるのもありだ。
ステアリング
ステアリングは運転中に常に触れている部分なので交換したいと思っている人が多い部分だろう。 交換したい人のためにそれなりの種類が出回っているが、いちばんの問題点はエアバッグだ。
エアバッグ機構はそのままに、ステアリングの骨格のみを交換する製品や、エアバッグごとカスタムして丸ごと完成品として売られているものもあるが、安全に大きく関わる部分なので、選択は慎重にして欲しい。 また、競技を重視するならエアバッグを切り捨ててしまうという割り切りが必要になるだろう。
シフトノブ
マニュアルミッション車でステアリングを変更するなら同時にシフトノブも交換したい。 交換は簡単で、種類もいろいろあるので好みで自由に選べるが、あえて注意点を述べておくと、金属むき出しのタイプは真夏に熱く冬は冷たくて触れないというケースもあるので、それを覚悟して導入して欲しい。
足回りのカスタム
スポーツ性能が持ち味のGR86は、足まわりのカスタムをおこなうケースも多い。 ただし純正が高いレベルでまとまっているので、目的がはっきりしないモディファイは改悪になりかねないので注意したい。
車高調
車高調整式のダンパーユニットは、走りの要求がノーマルの範囲で不足を感じた場合に必要になるアイテム。 速度域が上がったり、タイヤのグリップが上がったりした場合にグリップ性をアジャストするのが本来の役割なので、装着したら速く走れるというわけではないということは頭に入れて欲しい。 ただし、見栄えを良くするために車高を下げたいという場合にも必須となる。 その場合も、ストローク量とバネレートを吟味することで乗り心地をキープしながら車高を下げることができる。
スタビライザー
スタビライザーの変更は車高調の装着よりもセッティングが難しいアイテム。 単純に言うとロールの傾きを制限するためのものなので、主にコーナーリングの際の接地性を整える役割として交換されている。 街乗りでは底までのカスタムは必要ないと思われる。
ホイール
ホイールの交換は、性能面、ルックス面の両方で効果的なアイテムだ。 性能面では軽量化がサスペンションの動きをよくできるので、走りを良くしたい人やサーキット走行をする人に勧めたい。 また、大径化して低扁平のタイヤを履かせると、外観がシャープな印象になり、ハンドリングがダイレクトになる効果もある。 近頃の純正ホイールは軽量化も進んでいるので、交換したがそれほど変わらなかったというケースもある。 大径化すると重量が増すのでその点も留意して欲しい。
エンジンのカスタム
GR86のユーザーは走りを意識した人が多いと思うので、エンジンの性能を向上したいと考えるケースも少なくないだろう。
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ターボチャージャー
大幅なパワーアップをおこないたいならターボ化という選択肢が有力だ。 同じFA24系エンジンを搭載するスバル・インプレッサWRX S4はターボ仕様のユニットで275psを発揮している。
これは環境対応と燃費性能を考慮しての数値なので、社外のビッグタービンを装着すれば400ps以上のパワーを手に入れることもじゅうぶん可能だ。 ただし水平対向エンジンの弱みとしてエンジンルームのスペースが少ないという面があり、ビッグタービンの装着に伴うパイピングやインタークーラーの置き場所には苦労するだろう。
高回転仕様のターボエンジンが発するパワーは魅力だが、大幅なパワーアップには様々な弊害の発生が伴うので、その点を留意して欲しい。
ECUチューニング
ターボ化よりもイージーにエンジンの出力を変更できるのがECUのチューニングだ。 エンジンを制御するECUを書き換え、あるいは割り込み制御を加えることで、エンジンの出力特性や電子スロットル制御のセッティングを変更できるというもの。 ただし、GR86の制御はかなり複雑なことをおこなっていて介入が難しいことや、単純に純正ECUのマップが完全には解析できていないという話もあるので、ちょい足しのECUチューンでは望んだ効果が得られない可能性もある。 場合によっては、根本からフルコンによる制御に置き換えた方が手っ取り早いかもしれない。
排気系のカスタム
マフラー
マフラーを交換することで排気のサウンドが変えられるので、運転中の気分をアゲられるというのがいちばん多い理由だろう。 また、GR86は左右2本出しレイアウトを採っているので、エンド部を4本出しに変えて迫力を増せる製品も多くリリースされている。 ほとんどの製品は車検対応になっていると思うが、構造によっては低速トルクに影響が出たりするものもあるので、その点には注意して欲しい。
エキゾーストマニホールド
エキゾーストマニホールドの変更でもエンジンの特性を変えることができる。 基本的には4気筒それぞれのエキゾーストパイプを等長で集合させるのが最も排気効率に優れるとされていて、NAエンジンでは重要な要素とされている。 社外品の多くはその部分を重視して製作されているが、集合部までの長さなどで特性は異なるので、その点をよく調べて購入しよう。
カスタムする際の注意点
カスタムすることで様々な変化がもたらされ、GR86に乗るときや、仲間と過ごすことがより楽しくできる。 ただしその実現には注意しておきたいことがあるので、それも紹介しておこう。
予算設定
無尽蔵の予算があるケースはそうそう無いと思うので、限られた予算をどう配分して満足度の高いカスタムをおこなえるかというのは、誰もが抱える悩ましい部分だと思う。 外観のカスタムの場合は各パーツのコーディネートとホイールのマッチングなどを長期的に考えて選ぶのが後々に効いてくると思われるので、いちど理想の姿をしっかり描いておくと良いかもしれない。
法規制への対応
カスタムとは言わば改造なので、公道を走るなら道交法の保安基準の範囲内でおこなわないとならない。 例えば外装パーツの場合、純正の寸法より全長で±3cm、全幅で±2cm、全高で±4cm以内なら申請の必要は無いと定められているので、それを越える場合はそのままでは車検に通らない。 足まわりやマフラーなどを交換する際には最低地上高の確保が必須になるし、音量の確認も必要だ。 マフラーなどは経年劣化で音量が変化することもあるので、事前の確認がベターだろう。
保証への影響
カスタムをおこなうと、新車の補償が適用されなくなるとか、ディーラーの整備を断られるという懸念もある。 これについては個々のディーラーの対応規定で違いがあるかもしれないが、基本的には保安基準に違反していなければ問題無いというのが大方の意見のようだ。 もし心配であれば、カスタムをおこなう前に担当のディーラーに尋ねておくと良いだろう。 ただし、タービン交換や、外装の記載事項変更申請をおこなうほどの大幅なカスタムの場合は、整備に特殊な作業が必要になるのでこの限りではない。
メンテナンス性の変化
保安基準に適合した外装パーツやホイール、車検対応のマフラーなどの装着であれば整備性に大きな変化は無いと思われるので、ディーラーに預ける際も問題は無いだろう。 ただし、足まわりの変更をおこなってアライメントを調整した場合は、ディーラーの整備でその状態が変えられてしまうこともある。 保安基準に適合と言っても、ワンオフパーツの装着など、脱着に特殊な方法が必要になる場合もディーラー整備を断られることもあるので注意が必要だ。
これから購入と同時にカスタムを考えている人や、カスタムの途中でいちど方向性を再検討しておきたい場合など、ノーマルのGR86のスタイリングや乗り味をじっくりと確認することができる「おもしろレンタカー」を利用してみてはどうだろう。