【徹底解説】新型スープラ(A90)のエンジン性能とその特徴を詳細に分析!

5代目として2019年にデビューしたトヨタ GRスープラ(A90型)は、BMWとの包括提携による初のモデルとして登場した。そのため、GRスープラは、マグナ・シュタイヤー社グラーツ工場(オーストリア)で生産され、海路で日本に運ばれ、トヨタ自動車元町工場を経由してからユーザーのもとに届けられる。よって、クルマの心臓とも言えるエンジンはBMW社製となっている。今回はBMWの技術が搭載されるGRスープラのエンジンについて深堀りしていく。

新型スープラ(A90)のエンジン性能の特徴

まず、GRスープラのエンジンラインナップを紹介する。GRスープラに搭載されるエンジンは、排気量だけに注目すると、3.0L直列6気筒ツインスクロールターボエンジンと2.0L直列4気筒ターボエンジン(ツインスクロールターボチャージャー)の2種類となる。

なお、2.0Lターボエンジンは、258PSバージョンと197PSバージョンが用意されている。よって、実質3種類のエンジンがラインナップされていることになる。GRスープラのグレードと搭載エンジンの関係は、以下の通りとなっている。

  • RZ:3.0L直列6気筒ツインスクロールターボエンジン(387PS)
  • SZ-R:258PS 2.0L直列4気筒ターボエンジン(ツインスクロールターボチャージャー)
  • SZ:197PS 2.0L直列4気筒ターボエンジン(ツインスクロールターボチャージャー)

これらの出力の違いは、加速性能やエンジンの伸びに影響する。後に詳しく解説するが、最大トルクや最高出力を発生させるエンジン回転数も異なる。ここから先は、エンジンの最大トルクや最高出力を発生させるエンジン回転数にも注目しながら読み進めてもらいたい。

2.0L直列4気筒ターボエンジン(B48B20型)

2.0Lエンジン(B48B20型)には、チューニングの異なる2種類の直列4気筒ターボエンジン(ツインスクロールターボチャージャー)が用意されている。

SZ-Rに搭載されるエンジンは最高出力190kW(258PS)で、SZに搭載されるエンジンの最高出力は145kW(197PS)となっている。エンジンの出力はグレードによって異なるが、直列4気筒ならではのコンパクトさと軽さによって、前後重量配分が最適化され、軽快なスポーツドライビングを楽しむことができる。

エンジンのスペックや採用されている主な技術は次のとおりだ。

【SZ-R(258PS)】

  • エンジン:直列4気筒ターボエンジン(ツインスクロールターボチャージャー)
  • 総排気量:1998cc
  • 最高出力:190kW(258PS)/5,000rpm
  • 最大トルク:400Nm(40.8kgm)/1,550-4,400rpm
  • 0-100km/h加速:5.2秒
  • 使用燃料:無鉛プレミアムガソリン(ハイオクガソリン)
  • 燃費(WLTCモード):14.0km/L

【SZ(197PS)】

  • エンジン:直列4気筒ターボエンジン(ツインスクロールターボチャージャー)
  • 総排気量:1998cc
  • 最高出力:145kW(197PS)/4,500rpm
  • 最大トルク:320Nm(32.7kgm)/1,450-4,200rpm
  • 0-100km/h加速:6.5秒
  • 使用燃料:無鉛プレミアムガソリン(ハイオクガソリン)
  • 燃費(WLTCモード):14.5km/L

【主なテクノロジー(SZ-R/SZ共通)】

  • ツインスクロールターボチャージャー
  • 無段階可変バルブリフト
  • 吸排気無段階可変バルブタイミング
  • アイドリングストップ機能
  • 高精度ダイレクトインジェクションシステム

など

3.0L直列6気筒ツインスクロールターボエンジン(B58B30型)

3.0L直列6気筒ツインスクロールターボエンジン(B58B30型)は、歴代スープラに採用されてきた直列6気筒エンジンの伝統を継承するエンジンとしてスープラの最上級グレード「RZ」に搭載されている。

優れたパフォーマンス、パワフルな加速、高い効率を融合させた3.0L直列6気筒ターボエンジンは、ツインスクロールターボチャージャーにより気筒間の排

気干渉を防ぎ、低回転域から高回転までパワーとダイレクトなレスポンスを発揮する。

また、高圧の燃料を燃焼室内に直接噴射する高精度ダイレクトインジェクションシステムに、無段階可変バルブリフト、吸排気無段階可変バルブタイミング機構、アイドリングストップ機能を組み合わせることで燃費性能を両立。後ろから背中を押されるような力強いパワーと環境性能を両立し、アクセルを踏み込む気持ち良さを感じることができる。

【エンジンスペック(RZ)】

  • エンジン直列6気筒ターボエンジン(ツインスクロールターボチャージャー)
  • 総排気量:2997cc
  • 最高出力:285kW(387PS)/5,800rpm
  • 最大トルク:500Nm(51.0kgm)/1800-5,000rpm
  • 0-100km/h加速:6MT 4.4秒、8AT 4.1秒
  • 使用燃料:無鉛プレミアムガソリン(ハイオクガソリン)
  • 燃費(WLTCモード):6MT 11.0km/L、8AT 12.1km/L

2.0Lと3.0Lエンジンの比較

2.0Lと3.0Lエンジンを比べると出力やトルクが異なる。そのため、加速性能や燃費性能も変わってくる。よって、高い出力を求めるのであれば、直列6気筒エンジンを搭載する「RZ」となる。

ただ、日常生活の中で力強い加速性能や軽快なドライビングを楽しむなら2.0L直列4気筒エンジンの「SZ-R」または「SZ」を選ぶとよいだろう。

通勤や送迎など、街中や日常生活の中でスポーティな走りを楽しみたいのであれば、1,450rpmという低いエンジン回転数から最大トルクを発生させる「SZ」がおすすめだ。

街中におけるスポーティなドライビングと高速域におけるエンジンの伸びを両立させたモデルが良いのであれば、1,550rpmから最大トルクを発生させ、最高出力を5,000rpmで発揮する「SZ-R」がおすすめとなる。

スープラらしさを楽しむなら直6

エンジン回転の滑らかさと心地よさを体感することができ、背中を押されるような力強さを楽しみたいのであれば、1,500rpmから5,000rpmまで幅広い領域で最大トルクを発生させ、5,800rpmで最高出力を発揮する直列6気筒ターボエンジン搭載の「RZ」がよいだろう。

走らせたい場面に応じたグレード選び

日常をスポーティに変えるなら「SZ」(税込:4,995,000円)、日頃の運転をスポーティにするだけでなくスポーツ走行も楽しみたいのであれば「SZ-R」(税込:6,013,000円)、直列6気筒エンジンならではの気持ち良さと力強さを存分に楽しむなら上級グレードの「RZ」(税込:7,313,000円/6MT、7,313,000円/8AT)がおすすめだ。

前後重量配分はエンジンによって異なる

GRスープラは、BMWとの提携により誕生したモデルであるため、前後重量配分が50:50になっているか気になる人もいるだろう。

GRスープラの前後重量配分は、次のようになっている。

  • 直列6気筒エンジン搭載モデル:前輪側がやや重い。ただし、ドライバーが乗車すると50:50になる
  • 直列4気筒エンジン搭載モデル:静止かつドライバーが着座していない状態で前後重量配分が50:50

よって、GRスープラは、搭載されるエンジンの種類を問わず前後重量配分が最適化されているといえるだろう。

エンジンの技術解説

GRスープラには、BMWのエンジンが搭載されているため、BMWならではのエンジン技術が採用されている。ここでは、GRスープラのエンジンにも採用されているBMWのエンジン技術について解説する。

  • ツインスクロールターボ:排気ガスを取り込むタービンの流路を2つ分け排気力が弱い低回転から排気力が強い高回転まで効率的にタービンを回転させる技術
  • バルブトロニック(可変バルブリフト機構):吸気バルブの開度(リフト量)を無段階で可変させる電子制御機構
  • ダブルVANOS:可変カムシャフトコントロール。吸気側と排気側のカムシャフトのバルブタイミングを調整する機能
  • オートスタート/ストップ機能:アイドリングストップ機能

これらの技術により、エンジンの高効率化と燃費性能を両立させている。

エンジンチューニングについて

GRスープラに搭載されるエンジンは、チューニングを施すことで出力をアップさせることができる。エンジンにチューニングを施し、出力をアップさせるとより力強い走りや優れた加速性能などを実現できることから、エンジンチューニングをするオーナーも多いだろう。エンジンチューニングのメニューには、主に次のようなものがある。

  • ECUリマッピング
  • 吸気や排気系のアップグレード
  • 過給器のアップグレード

このようにエンジンのコンピューター(ECU)をはじめ、吸気や排気の効率を上げたり、過給器(ターボチャージャー)に手を加えたりすると、エンジンをパワーアップすることができる。

ただし、エンジンチューニングをする際は、エンジンの強化や負荷が一部に集中しないようにするなど、エンジン全体のバランスを取ることが重要だ。部分的にチューニングすると、最悪の場合エンジンが故障する可能性がある。よって、エンジンチューニングをする際は、GRスープラをはじめとするスポーツカーやスポーツモデルの取り扱いに慣れていて、BMWのエンジンチューニングも手がけることができる専門性の高いチューナーに依頼するとよいだろう。

エンジンメンテナンス

GRスープラの優れた走行性能を維持するためには、エンジン関連のメンテナンスを欠かすことはできない。エンジンに関連するメンテナンスや注意事項には次のようなものがある。

エンジンオイル交換とオイルの種類

エンジンオイルの交換は、GRスープラに限らずエンジンを搭載しているクルマ全てに言えることだ。エンジンオイルには、エンジンの洗浄・潤滑・密閉・冷却・防錆といった役割がある。よって、定期的にオイル交換をしなければ、エンジンに不具合やトラブルが発生してしまう。また、エンジンオイルの交換と合わせてオイルフィルターも交換しておくと、エンジンのコンディションをより良い状態に維持できる。なお、エンジンオイルやオイルフィルターの交換サイクルはクルマの使い方によって異なる。

そのため、定期的にエンジンオイルレベルをチェックしておくとよいだろう。また、次のような場面ではエンジンオイルの消費量が増えやすいため、こまめにエンジンオイル量をチェックすることをおすすめする。

  • スポーティな運転をした場合
  • エンジンの慣らし運転の場合
  • アイドリング時間が長い場合
  • 不適切なクラス/等級のエンジンオイルを使用した場合など

上記のような運転をしたときは、こまめにエンジンオイルの消費量を確認するとよいだろう。

エンジンオイルを交換するときは、搭載されているエンジンや使用シーンに合ったタイプのオイルに交換するとよいだろう。エンジンオイルの品質は、エンジンの耐用年数に大きく影響する。よって、GRスープラのコンディションを維持するために適切なエンジンオイルを選ぶことをおすすめする。

GRスープラに適したエンジンオイルの種類は次のとおりだ。

  • Toyota Genuine Motor Oil SN 0W-20 C5 for GR Toyota Supra
  • BMW Longlife-17 FE+ 規格適合品

また、適切なエンジンオイルが入手できない場合、1L以内であれば、次の仕様のエンジンオイルを補給することが可能だ。

【ACEA規格】

  • ACEA A3/B4
  • ACEA C2
  • ACEA C3

【粘度規格(SAE)】

  • SAE 0W-20
  • SAE 5W-20
  • SAE 0W-30
  • SAE 5W-30
  • SAE 0W-40
  • SAE 5W-40

なお、粘度が高い粘度グレードの場合、燃費が悪くなることがあるため、クルマを使うシーンに合わせたエンジンオイル選びが重要だ。もし、エンジンオイルの適切なオイル仕様および粘度グレードがわからない場合は、販売店に問い合わせるとよいだろう。

GRスープラのエンジンオイル交換サイクルは15,000kmとなっている。だが、運転の仕方によってオイルの消費量や汚れ方などは異なる。よって、メーカーの推奨は15,000kmだが、サーキット走行やスポーツ走行などをした場合は、使い方に合わせたタイミングでオイル交換をした方が良いだろう。

GRスープラのエンジンオイル量は、エンジンによって異なる。2.0Lエンジンの場合は5.3L、3.0Lエンジンの場合は6.5Lとなる。なお、エンジンオイル交換をした場合の費用は15,000円程度が相場だ。

エアフィルターの点検と交換

エアフィルターは、エンジンに取り込む空気を浄化するフィルターであるため、定期的な点検が必要となる。また、定期的なクリーニングや交換も必要だ。

エアフィルターは定期点検の際にチェックするため、日常使いがメインで時々スポーティな走りをする程度であれば、定期点検時にクリーニングまたは交換をすればよいだろう。ただ、頻繁にハードなドライビング(サーキット走行や高速走行など)をするのであれば、エンジンオイルと同様に使い方に合わせたタイミングで点検してもらい、クリーニングまたは交換をしたほうが良いといえる。エアフィルターの交換費用は、フィルターのタイプによって異なるが、相場は5,000円〜となっている。

使用燃料

GRスープラの使用燃料は、無鉛プレミアムガソリンとなっている。つまり、ハイオクガソリンということだが、エンジンのタイプによって指定のオクタン価が異なる。

  • SZおよびSZ-R(2.0L直列4気筒ターボエンジン):95オクタン(リサーチ法)以上の無鉛プレミアムガソリン(ハイオクガソリン)の使用を推奨
  • RZ(3.0L直列6気筒ターボエンジン):98オクタン(リサーチ法)以上の無鉛プレミアムガソリン(ハイオクガソリン)の使用を推奨

また、最適な燃料消費量を得るために、ガソリンは無硫黄または硫黄分の少ないものを使用するようメーカーは推奨している。さらに、給油機に金属添加物の表示のある燃料は使用しないよう注意喚起している。なお、エタノール濃度が25%以下の燃料(E10やE25など)は給油することが可能だ。

GRスープラに搭載されているエンジンは、ノッキング制御を装備しているため、さまざまな品質のガソリンを給油することができる。

最低品質の燃料(無鉛レギュラーガソリン/RON91)やエタノール含量が10%~25%の燃料を使用すると、ノッキング音や走行時の異常・異音が発生する可能性がある。メーカーの説明によると、これらの燃料を使用しても故障することはないとされているが、優れた走行性能や燃費の定格値を達成するためにも、エンジンに合った燃料を使用する方が良いといえるだろう。

まとめ

GRスープラに搭載されているエンジンは、駆け抜ける歓びで知られるBMWのエンジンが搭載されていることから、優れた走行性能と気持ち良さを両立している。また、どのエンジンでも低回転域から最大トルクを発生させるため、押し出されるような感覚を感じることができるだろう。

ただし、最大トルクの太さや発生エンジン回転数はエンジンの種類によって異なる。そのため、どのような走りを求めるかで選ぶエンジンつまりグレードが変わる。

日常をスポーティにさせたいのか、日常における優れた走行性能とスポーツドライビングを両立させたいのか、力強さとエンジンが回転する気持ち良さを追い求めるのかといった希望する走りによってグレードを選んでみるのも楽しいといえるだろう。