【新型スイスポ 試乗】本当に絶賛に値する名車なのか?

新型スイスポは、現代の車とは思えない要素を沢山持ち合わせたスポーツカーだ。

その理由は主に2つ、軽さと値段だ。そんな軽くて、安くて、手の出しやすいスポーツカーとしての人気を集める新型スイスポ(ZC33)だが、一体どのぐらいのポテンシャルがあるのか。

今回の記事では、新型スイスポをワインディング、サーキット走行好き目線で解説していきたい。

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最大の魅力は軽さ

まず新型スイスポの1番の魅力は、なんといっても軽さだ。

驚くことに車重は1トンをきって、970キロ(MT)と非常に軽量だ。どのぐらい軽量かというと2シーターのNDロードスターは1番ベーシックなモデルで990キロだ。

しかもスゴいのは、先代よりも約70キロの軽量化に成功していることだ。安全性の向上を果たすために各メーカーの車両が重くなるなかで、スズキが本気でスイスポを開発したことがよく分かる。

この軽さの1番のメリットは、軽快なハンドリングが生み出すドライビングプレジャーだろう。

車重が軽いため、ドライバーがステアリングを操作した際の車の動きが素早く、車を意のままに操れるような錯覚に陥る。

また感覚だけではなく、軽量ゆえにコーナリングスピードも高くドライビングを楽しめる。

さらに軽いことによる副次的なメリットだが、車重が軽いことでタイヤやブレーキに掛かる負担が少ない。そのため、サーキットを連続周回しても、ブレーキやタイヤの熱ダレなどがおきにくい。また消耗量も抑えられるため、ブレーキやタイヤの交換頻度も下げられる。

これは新型スイスポを検討しているようなユーザーにとって大きなメリットではないだろうか。

限界の高いコーナリング性能

さらに魅力的なのは、そのコーナリング性能の高さだ。

ワインディングを走ると、新型スイスポは素直なステアリングフィールがある。ステアリングを切ってすぐのノーズの入りがよく車を曲げやすい。また、車の姿勢が内側を向いてコーナリング姿勢が出来上がってからの安定性も高い。970キロの車重と2450mmのホイールベースを考慮すると、この安定感のあるコーナリングフィールを実現できるほど、設置感の高い足回りになっているのはこの車の基本設計の優れている点だ。

このドライビングプレジャーと安定感のある乗り心地を下支えしているのは、剛性の高いボディーだ。

軽さはコーナリング性能の武器ではあるが、軽い=コーナリング性能が高いというわけでは決して無い。

新型スイスポは軽いだけではなく、とても剛性の高いボディを纏っていることにより、コーナリング中にボディに対してねじれる力が加わっても、ボディがねじれることがないので、サスペンションジオメトリーが崩れずに高いコーナリング性能を発揮するのだ。

とくに、新型スイスポはフロントとリアの剛性のバランスがよいために、ステアリング操作を行ってからリアタイヤが追従してくるまでの時間が短く、一体感のある走りを見せてくれる。

また皆さんが1番懸念するリアサスペンションも良く出来ている。トーションビームという構造上どうしてもロールが大きくなると、ロードホルディング性能が落ちてくる印象があったが、街乗りや少しワインディングを流すぐらいでは全く不満のない完成度であった。

ちなみにこのトーションビームは、ノーマルのスイスポにたいして、トーションビームのねじり剛性を30%UP、トレーリングアームも専用設計で、先代に比べてトー剛性が約1,4倍、キャンバー剛性が約3倍とカタログスペックでは伝わらない点も抜かり無く補強されており、こういった細かい改善が走りに大きな影響を与えていることが推察出来る。

この車の足回りを中心にチューニングしていくことで、格上スポーツカーを超える性能を発揮出来るのだが、それはまた別の記事でご紹介したい。

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1.4Lとは思えぬハイパワーエンジン

もう一つ新型スイスポを面白くしているのがエンジンだ。

先代の1.6NAからK14Cと呼ばれる1.4Lのターボエンジンになっている。このエンジンは140馬力と先代から4馬力アップだ。

そう聞くとたった4馬力と思うかもしれないが、スゴいのはトルクだ。

トルクは23.4kgmとかなり大きく(先代は16.3kgm)、これは新型のGR86の25.5kgmに肉薄するパワーで、約300キロも車重の重いZN6のトルク20.9kgmを上回っている。

ターボエンジンのため最大トルクが2500-3500rpmと約1000回転の幅で発生するためNAエンジンよりも実際の加速性能に優れることになる。つまり、馬力は無いために最高スピードこそ無いものの、コーナーの立ち上がりなどからの加速性能は軽い車体と組み合わさり驚異的なポテンシャルとなる。

実際に運転したフィーリングとしても、かなり元気の良いエンジンだった。

アクセルを踏み込んですぐに、過給圧が高まりほとんどターボラグもなく加速し始める。トルクがかなり高いために、スピードメーターはすぐに法定速度に達した。

エンジンの美味しい領域はターボの効き始める2500回転から5500回転と約3000回転もあり、コンパクトハッチバックでありながら、多少のシフト操作ミスをカバーしてくれる懐の深さも魅力的だ。

ただし一点だけ弱点がある。それはエンジンが6000回転までしか回せないのだ。

低速トルク型のエンジンなので、高回転まで回しても旨味はないのだが、どうしてもあと500回転上まで回したくなってしまった。

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何年経っても楽しめるチューニングベースとしての魅力

新型スイスポのもう一つの魅力が、チューニングカーとしてのポテンシャルの高さだ。

何年も乗っていると愛着が湧いてくると同時に、目につく場所が増えてくるオーナーさんも多いのではないだろうか。

そんな時に新型スイスポは長く楽しめる魅力がある。

それはチューニングの余白が大きいことだ。

例えばエンジンは、マフラー交換とECUチューニングだけで、160~180馬力に到達する。970キロのボディに180馬力のパワーが備わったら、ワインディングやミニサーキットでは、めちゃくちゃ速い。

また、新型スイスポの唯一のウィークリーポイントとも言えるリアサスペンションは、社外製サスペンションをはじめ、トーションビームであってもアライメントセッティングが行えるように数々のパーツが揃っているのだ。

余談ではあるが、私は土屋圭市さんがチューニングの監修をした新型スイスポに一般道、高速道路、ワインディングと試乗をしたが、新型スイスポがこれほどまで速く曲がれるのか、とも言える非常に高いコーナリング性能を有していた。運転する楽しさがここまで詰まっている車はなかなかないと思える完成度だった。それだけ新型スイスポの素性が良いのだろう。

さらに先のことをいえば、今後新型スイスポのように軽量なスポーツカーが出てくる可能性は低いだろう。そうすると、最後の軽量FFスポーツとして人気をはくし、何年たってもアフターパーツが出続ける可能性も高い。

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まとめ

新型スイスポはスズキが車好きのために作ってくれた最後のご褒美になるかもしれない。

電動化や安全性向上が進んでいくと1トンを切るような軽量ボディの車を作り続けることは難しくなってくるだろう。

そうなってきた際に、このスイフトスポーツは、ライトウェイトスポーツの醍醐味を手頃に楽しめる最後のマシンとなるかもしれない。