新型BRZの235馬力の真の実力とは? 

BRZ

新型BRZは、スバルの長年の技術とトヨタとの共同開発によって生まれた意欲作である。初代モデルから進化し、2021年に2代目モデルであるZD8型が登場した。

FRレイアウトや水平対向エンジンを採用することで、運転する楽しさを追求しているこのモデルは、多くのスポーツカーファンに高く評価されている。

この記事では、ZD8型BRZの特徴を詳しく紹介していく。

BRZ(ZD8)の特徴

スバル・BRZは2012年に発売されたスバル初のFRスポーツ。トヨタとの共同開発が話題となり、意欲的な車両開発がおこなわれた結果、兄弟車のGR86と共に本格的な走りのポテンシャルを備えたモデルとして認知されている。

BRZは2012年から2020年まで発売された初代モデル(ZC6型)と、2021年に発売された2代目モデル(ZD8型)に分かれる。

ここでは現行モデルである2代目について話していこう。

運転する喜びを追求したピュアスポーツカー

スバル・BRZは、スバルの象徴ともいえる水平対向ボクサーエンジンを基幹としたFRレイアウトのライトウェイト・カテゴリーのスポーツモデルだ。

「水平対向エンジンをより低い位置に搭載した『超低重心パッケージング』が生み出す高度なハンドリング性能により、誰もがクルマを操る喜びを感じることができるモデル」というコンセプト通り、優れたハンドリング性能が高く評価されている。

高回転仕様に設計された2.4リットル自然吸気ボクサーエンジンの回転フィールと共に、クルマを操る楽しさを味わえる本格派のスポーツカーに仕上がっている。

FRレイアウトへのこだわり

ライトウェイト・カテゴリーのスポーツカーの醍醐味である、車体を振り回すダイナミックな楽しさを追求し、現在では採用例が少なくなったフロントエンジン後輪駆動のレイアウトを採用。

煮詰められた足まわりにより高い安定性を確保しつつ、リアタイヤをブレイクさせるドリフト走行も可能で、ビギナーからエキスパートまで幅広い層が操る楽しさを感じられるスポーツカーに仕上がっている。

また、前後の車輪への重量配分は、あえて理想とされる50:50ではなく前寄りの53:47となるように設計されている。これによりステアリングの応答性が高められ、軽快なハンドリングに仕立てられている。 

水平対向エンジン

操る楽しみの中心に据えられているのが、スバルが長年熟成をおこなってきた水平対向レイアウトのボクサーエンジン。

「FA24(D)型」という型式の水平対向DOHC 4気筒 2387ccエンジンは、先代「FA20(D)型」のボア×ストローク86mm×86mmからボアを93mmに拡大し、ショートストローク仕様となっている。

「FA20型」は今では珍しく高回転が気持ちよくフケる仕様に設計されていたが、「FA22型」ではボアの拡大によって低中速トルクを増しつつ、高回転のフケ上がりの気持ちよさは維持されており、さらに高いバランスのエンジンに仕上がっている。

出力・トルクは173kW(235PS)/7000rpm、250N⋅m(25.5kg⋅m)/3700rpmとなっており、1300kg未満の軽量な車重と合わせて高いレベルの加速性能を発揮する。

軽量化やシンプルな構造

車両のベースとなるプラットフォームは、トヨタとスバルの共同開発としてスバルが設計をおこなったFR用の新しいもので、2代目のZD8型でも継続して採用。ボディ全体の骨格連続性を高める「インナーフレーム構造」や、変形を抑える「構造用接着剤」などを採用し、高い剛性を実現。

2012年の発売から逐次熟成が重ねられ、スポーツ性能とコンフォート性が両立したバランスの良い乗り味になっている。

また、ターボや4輪駆動などの複雑で重量がかさむ機構を廃し、フロントフード、フェンダー、ルーフなどのボディパネルやサスペンションの構成部品にアルミを使用することで軽量化と低重心化を実現している。

これにより、アクセルやステアリングなどドライバーの操作に対するレスポンスが高められ、操る楽しさに貢献している。

BRZのエンジン性能を徹底解剖

BRZのエンジンは、スバルのアイデンティティである水平対向エンジンを搭載しており、その性能と特性はスポーツカーとしての走行性能を支えている。

「FA22型」という新型エンジンは、発進トルクの向上と高回転フィーリングの気持ち良さを両立したバランスの良い設計が魅力である。

FA24エンジンの特徴と性能

BRZに搭載されている「FA22型」エンジンの特色は、なんと言ってもその水平対向レイアウトだろう。クランク軸を中心に左右に2気筒ずつ振り分けられた水平対向4気筒エンジンは、そのレイアウトによる振動が少ないなめらかな回転フィールと低い重心が最大のメリット。

初代に搭載の「FA20型」はその低振動性に自然吸気タイプの高回転型の設計を加え、水平対向のメリットを最大限に発揮出来るエンジンに仕立てられている。「FA22型」ではボアが86mmから93mmへとアップされ、排気量アップと共にショートストローク化が図られた。

その変更によって「FA20型」の弱点とされていた発進トルク不足を完全に払拭することに成功。その他細かい見直しによって最大トルクの発生回転を6400rpmから3700rpmへと大幅に低回転側に移行させ、低回転からのフラットなトルク特性と高回転の伸びを両立。

全域での扱いやすさを向上させると共に、持ち味の高回転が気持ち良い回転フィールに磨きが掛けられている。 

ECUチューニングについて

「FA22型」はノーマルでリッター100ps近くを発揮する高性能エンジンである事に加えて、自然吸気タイプなので、ターボタイプのようにECU書き換えによるブーストアップのような顕著なパワーアップはほぼ見込めない。

しかし、エアクリーナーやマフラーなどの吸排気系を交換した際には、その特性に合わせてECUの現車セッティングをおこなうことで、吸排気効率向上によるポテンシャルアップが期待できる。

この際にパワーだけでなく、電スロのセッティングでアクセルレスポンスの調整など細かいセッティングの変更も可能だ。

加速性能から見るBRZの実力

BRZの加速性能は、他のライバル車と比較してどのような実力を持っているのだろうか。スポーツカーとしての魅力は加速性能にも大きく影響するが、新旧モデル間の性能差も含めて、BRZの真価を探ってみたい。

新旧BRZの0-100km/h加速タイム比較

ここでは初代(ZC6)と2代目(ZD8)BRZの新旧モデルでの加速タイムを比較してみよう。

新旧BRZの0-100㎞/h加速タイム(6MT車)は以下の通り。

  • 初代BRZ:7.4秒
  • 2代目BRZ:6.3秒

新旧の比較では、新型が1.1秒速い結果となっている。これは主にエンジンの排気量が拡大され、パワーとトルクが向上したことが要因と考えられる。

さらに、サスペンションのセッティングなどの変更でトラクション性能が向上したことも、ロスの少ない加速に寄与していると考えられる。

競合車種との加速性能比較

では、他のライバル関係にある車種との加速比較ではどうだろう。後輪駆動のスポーツ車で車重とパワーを添えて比較してみよう。

車種0-100タイム車重出力
マツダ・ロードスターRF(ND型)7.4秒1100kg184ps
日産・フェアレディZ(RZ34型)4.5秒1570kg405ps
ポルシェ・718ケイマンGTS4.7秒1360kg300ps


直接のライバルはマツダ・ロードスターRFで、タイムは偶然にも同じ数値となっている。BRZは車重1260kgで出力が235psなのでPWR(パワーウエイトレシオ)は5.361。ロードスターは車重が軽く1100kgしかないが、出力が184psと低いため、PWRは5.945とBRZに劣る数値となっている。

にもかかわらずタイムが同じな理由は、おそらくトルク特性の違いやタイヤの負担が鍵になっているのではないかと推測できる。フェアレディZとケイマンについては、どちらもBRZより排気量が大きく、さらにターボ仕様のエンジンを搭載しているため、車重の差を加速性能の差が大きく上回った結果といえる。

総じて言えることは、BRZはスポーツタイプのクルマとしては加速性能に関して特筆して優れているとは言えないということ。 

加速性能に影響を与える要因(トルク、車重など)

BRZの車重は1300kg未満と、このクラスの車種としては軽量な部類に入る。そしてパワーについても2.4リットルで235psと、リッター100ps近く絞り出しており、特筆すべき数値ではないものの、けっして低いわけではない。

トルクは250N⋅mで、2.4リットルのNAエンジンとしては平均か、やや下回る数値といえる。加速性能が思ったほど優れていない理由はこのトルク特性にあると言っていいだろう。

高回転のフィーリングを重視したことにより、低回転からトルクが発生しているとはいうものの、その数値自体が高いとは言えず、結果として加速性能に影響が出ているようだ。

この点については、上まで回してその気持ちよさを味わうのが本筋のエンジンと割り切るのが吉だろう。と、主にスペックからBRZの特性を紹介してみたが、その乗り味や持ち味である高回転型の加速フィーリングについては、言葉を尽くしても伝え切ることは難しい。

気になる人は、そのBRZの実車が思いっ切り乗り回せる「おもしろレンタカー」で、実際のフィーリングを体感してみていただきたい。