ルノーのCセグメントを担当する大衆車クラスの「メガーヌ」をベースに、最も高性能なフラッグシップの位置づけを担うべく、ルノーのモータースポーツ部門である「ルノー・スポール」が開発したモデルがこの「メガーヌR.S.」だ。
今回紹介する「メガーヌR.S. トロフィー」は、メガーヌとしては4代目、「メガーヌR.S.」としては3代目にあたり、歴代最高の出力と運動性能を誇る。
世の中の電動化の波に従い、2023年にリリースされた「メガーヌR.S. ウルティマ」がレシプロエンジン搭載モデルとしては最後となってしまう。
ルノーが誇るホットハッチの頂点と言える「メガーヌR.S. トロフィー」のカスタマイズにフォーカスして掘り下げてみよう。
カスタムパーツがすくないフランス車・メガーヌR.S.
メガーヌR.S.に限らず、フランス車のカスタムパーツの国内流通はけっして多くないほうだ。特に車種専用のラインナップとなる、エアロパーツのリリースは、それなりにしっかり探さないと見つからないという傾向にある。
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フランス車のなかではカスタムパーツが多いほう
それでも、「シビックTypeR」や「ゴルフGTI」とニュルでクラス最速の座を争っているハイパフォーマンス車だけに、日本国内のアフターパーツメーカーや、チューニングショップなどからパーツやカスタムメニューのリリースはそこそこ見付けられる。
「R.S.」に関しては、日本国内で売れ筋でルノーも力を入れているグレードということもあり、販売台数もそこそこ多いので、現行の「メガーヌ4」なら少し期待できるかもしれない。
Porsche、BMW、MINIからの乗り換えだと不満が出る可能性も
同じヨーロッパの車との比較では差が大きく現れてしまう。
特に日本国内で多く見掛ける「ポルシェ・ボクスター」や「BMWの2or3シリーズ」、「MINI」などのドイツ車は専門ショップも多くあることからパーツのラインナップ数も豊富だ。「R.S.」はフランス車の中では多いとは言うものの、それらと比較すると寂しいと言わざるを得ないだろう。
たとえばサーキットでよく見かけるライバルのドイツ車に対しては、カスタム範囲が少ないので戦闘力の増強で悩むことも少なくないだろう。
メガーヌRSのカスタムパーツはフランス車のなかでは多い方
では、具体的にどんなカスタムパーツが販売されているのかを見てみよう。
tezzoで販売されている外装パーツ
外装では、まずエアロパーツ系の定番であるフロントリップスポイラーをいくつか見付けることができる。
国産車やドイツ車用の製品ではそこそこ大型の派手なデザインのものも見られるが、そこはおフランスのテイストのせいか、純正オプション+αという雰囲気のものが多い印象だ。
また、空力特性を改善できるリヤのルーフスポイラーも、フロントと同じところからリリースされているようだ。競技志向のウイングタイプから、ボディとのマッチングを重視したスポイラー形状のものまであり、用途や雰囲気で選択できるのは有り難い。
動力性能の強化はどうするべき?
カスタムのひとつの方向として、出力やフィーリングの向上を求めるオーナーも一定数いるだろう。
「メガーヌ4」で調べてみた限りでは、スリップオンタイプのマフラーが数種類見付けられた。中でも注目は、レースシーンでも採用例の多い「アクラポヴィッチ」からリリースされている。
テールパイプから先のサイレンサー部メインという構成だが、フルチタン製で軽量化と音質の向上が見込める。ただし価格は70万円オーバーと、かなりの出費を強いられる。
また、競技車両を製作しているショップからは、エンジンのECUチューニングをメニューに出しているショップもあった。「メガーヌR.S.」はターボエンジンなので、ブーストアップで10馬力上乗せくらいなら耐久性の低下をそれほど心配しなくても大丈夫かと思われる。
ホイールサイズが珍しい。ホイールサイズ選びのポイント
「メガーヌ4 R.S.」のホイールサイズは8.5Jx19でインセット54mm、PCDは国産のスポーツ系車種にも採用例が多い114.3mmの5穴ということで、選択肢は少なくないだろう。競技系なら軽量高剛性で評判の「RAYS TE37V」でもラインナップはある。
ただ、ホイールを社外品に換える場合はホイールナットをホイール側の形状に合ったものを装着しないと、ホイールの破損や脱輪の恐れもあり得るので注意したい。
メガーヌR.S.のスペック「カスタムできなくても運転が楽しい車」
メガーヌR.S.は「カスタムできなくても運転が楽しい車」とも言える。以下では、「メガーヌR.S.」のスペックを見てみよう。
1.8リッター直4 DOHC 16バルブ ターボエンジンは、最高出力:300PS(221kW)/6000rpm 、最大トルク:420N・m(42.8kgf・m)/3200rpm。このクラスのライバル車が300psを軽くオーバーしていることからするとやや非力に思えるが、245サイズのミシュラン・パイロットスポーツを空転させるには充分すぎるパワーとトルクを実感できるだろう。
シャーシ関係では、独自の「4コントロール」という後輪躁舵機構を備えているのがポイントだろう。街中では車両サイズのわりに小回りが利き、タイトコーナーでは回頭性の良さを発揮。高速コーナーではスタビリティの高さを見せるという、不自然のない絶妙な味付けがされている。
後述するが、接地感が高く安心して攻めていけるサスペンションとの組み合わせは、ライバル車にはな無い特性が与えられていて、サーキットのレイアウトによっては充分なアドバンテージを発揮する場面はそれなりにあるだろう。
個人的にはインテリアの質感の高さも触れておきたいポイントだと感じられた。
実際に運転したインプレッション
動力性能に目が向きがちだが、
- 実はシャーシと足まわりの性能がメガーヌR.S.の真骨頂
- 足は筋肉質な感触で収束が早い
- ハネないのは伸び側のトレース性が優れている
と感じた。
街乗りでは硬さを感じるという人がいるかもしれないが、硬さというより締まった印象。
小回り性能と安定性
助手先の人の頭が小刻みに揺れるということは無いだろう4コントロールのおかげで、この車体サイズのFFのわりに小回りが効いて路地の左折やUターンも楽におこなえる
街中でレースモードにしてパワーバンドの加速を試すのはやめたほうがいい。わだちに幅広タイヤが取られてトルクステアのような意図せぬレーンチェンジをしそうになる。ESCが効くスポーツモードで抑えておくべきだが、それでも急激なトルクの上昇にはしっかり備えておきたい
ちなみにレースモードではリヤステア機構の4コントロールの位相切り替えが60㎞/hから100㎞/hに引き上がるので、街中の速度域でのフル加速は、逆位相との相乗効果で巻き込み気味になるのかもしれない。
コーナリング性能
逆にステアリングを切ってコーナーリングしているときのアクセルONではほど良い切れ込み感があって、早めに頭をコーナー出口に向けられるので、タイトコーナーでは意外なほど速く抜けられることに驚かされる
それでいてスピンしそうな気配は顔を出さないのが不思議なくらいだし、コーナー中に不意にギャップを踏んだときも安定感が崩れないのは特筆点だ。ルノー独自の「HCC(ダンパーinダンパー機構)」の効果だろうか 、ギャップで「ダン!」と一瞬浮かされる感触があっても、タイヤが浮く前に足が伸びて路面を離さないので、安心してアクセルを踏んで抜けられる。FF最速というのも納得の足まわりで、そのポテンシャルが実感できた
ロールが少なく感じたことも付け加えておきたい。トロフィーの足は前23%後ろ35%バネが強められ、スタビも7%強くなっているというが、そのせいだろうか、高速のジャンクションのループも安定した姿勢ですんなり抜けられた
ブレーキ性能
ブレーキのタッチはごく自然なもの。ドイツ車のような踏み始めに強く制動が立ち上がる感じでもなく、日本車のように奥でグッと効く感じでもない。踏めば踏んだだけ効く感じで安心感が高い。
エンジン性能
もちろんエンジンの性能もすばらしい。エコモードで走り始めると、「ん?想像よりモッサリしているな」という印象で、アクセル操作に対する反応がかなり遅れて来る。
しかし、ノーマルモードで1段、さらにスポーツモードでもう1段、ハッキリと違いが分かるほどの差が感じられる変化が味わえる。
何ならスポーツモードで充分以上にハイパフォーマンス車のレベルを味わえると思うが、このメガーヌR.S.はさらにもう1段上にレースモードが用意されている。
スポーツモードに切り替えた時点でアイドリングの回転が上がったかのような錯覚を感じるくらいに排気音が勇ましくなる。と同時にレスポンスが本来の鋭さを発揮し、見違えるようにトルクの立ち上がりが鋭くなる。
4千回転からのベタ踏み加速は300psとは思えないトルクでグイグイと車体を前に押し出していく。慣れないうちは様子を見ながら開けていくことをオススメしたい
そして回転を上げてからのアクセルオフでは「ババンババン……」とバブリング音が後ろから聞こえ、気分がアガってくる。
レースモード
そこからレースモードに切り替えると、エンジン特性はそのままだが、4コントロールの位相切り替えが100㎞/hに引き上がり、横滑り防止のESCがオフになる。
一般公道でその恩恵を受ける場面はほとんど無いと思うが、いったんサーキットに持ち込めば、ほど良い車格のこのメガーヌR.S.を振り回してタイヤの限界を探りながらの走りを楽しむのに、レースモードは最適だ
良識を重んじるオトナなら、まあこんなモードの搭載は容認しないだろう。しかし、むしろレースモードで振り回して欲しいという開発陣の情熱の高さに共感できる人なら、これほど楽しいクルマは他に無いと言えるだろう
「私ならこうカスタムする。」カスタムのポイント
サスペンションのしっとり感を増やす
走りが好きな人が運転席にいる場合なら、トロフィーの足は硬すぎるという印象はあまり無いと思う。しかし、街乗りがほとんどという人や、助手席や後席にいる場合には、ちょっと会話がしづらいと感じてしまうかもしれない。
その場合はトロフィーではなく無印のR.S.にするという選択がベストだと思われるバネレートが20%以上下げられるので乗り味はマイルドになるし、適度なロールもあるので、乗り心地は優しくなるだろう
その一方で、さらに戦闘力を上げる場合はどうだろうまずおこなうのは軽量化だと思われる。車体を軽量化した場合、バネレートのアンマッチが生じて乗り心地はさらに硬くなるので、バネレートの変更が必要になってくる。
このとき安易にレートの低いバネに換えるだけでは、この完成度の高いダンパーとのバランスが一気に崩れてしまうことになる。せっかくの優れた接地感も失われてしまうかもしれないので、手を付けるならトータルで面倒をみてくれる実績の高い店に任せるのがオススメだ
エンジンの給排気を効率化
カスタムというと、やはりエンジンの性能向上を図りたいという欲求は退け難い。まず着手するのはマフラー交換とエアクリーナー交換の吸排気効率向上だろう。
しかし、マフラーはエンジンマネージメントやモード切替にも連動しているので、交換する場合は何かの機能を諦めるか、燃費や低速域の安定性など性能の一部低下を覚悟しなくてはならないかもしれない。
軽量化したい場合や、よりレーシーなサウンドが欲しい、あるいは他と差別化したいという目的なら問題無いが、安易なパーツ交換はデメリットの方が多くなる可能性を考慮しておこなってほしい。
また、大幅な性能向上を求めるなら、ECUの書き換えチューニングでターボのブーストアップという手段もある。
これならかなりの変化が得られるが、出力向上と発熱問題はセットなので、冷却性能にも目を向けておこなって欲しい。
空力性能の向上
エンジンの動力性能、足まわりともにサーキットレベルでもかなりの高いポテンシャルを秘め、高いバランスで完成されたパッケージのメガーヌR.S.なので、その面での性能向上は難しいと思われる。
そのうえで走りの向上に効くパーツというと空力パーツだろう。
鋭い回頭性と高い動力性能に裏付けられた高機動力を持つメガーヌR.S.でサーキットを走るなら、リヤの安定性を高めるウイングの装着は必須だと思われる。
探せばいくつかの商品がヒットするので、好みや用途に合わせて選んでみよう。
まとめ
この「メガーヌR.S. トロフィー」に乗ってまず目を見張るのは、スペック以上に力強く感じるエンジンのパンチ力だが、じっくりと走らせてみた後で印象に残っているのは、
切れ味の良いコーナーワークが味わえるハンドリングや、軽快感がありながら高い接地感で路面を離さないサスペンションなど、他のライバル車とはアプローチの違う足まわりのセッティング。
この点は数値では表せない部分なので、実際に乗って体感してみて欲しい部分。
そしてこの絶妙なスポーティさと高い質感が融合したインテリアに包まれ、その充分すぎるパワーと、独特のハンドリングを味わうと、思わずニヤリとしてしまうだろう。
ただし、ハイパワーのFFに慣れないうちは、くれぐれも街中でのアクセル開度は慎重におこなって欲しい。