R34型スカイラインは、スカイラインの歴史の中では10代目にあたるモデルだ。
日産が1980年代後期に推し進めていた「901運動」の中で開発された世界水準のシャーシ、エンジンなどのメカニズムを、R32、R33と熟成させてきた末の最終版と言える性能を秘めていると言っていいだろう。
ここではそのR34型スカイラインの、標準モデルの特徴と、GT-Rグレードとの比較を解説していこう。
R34型スカイラインの販売期間
1998年の4月に先代のR33型が生産終了となり、翌月の5月にR34型スカイラインが発売開始された。
生産終了は2001年で、GT-Rは8月まで生産されたが、それ以外のグレードのモデルは5月までとなっている。
R34型スカイライン全体の販売台数は6万5千台弱で、そのうちGT-Rは1万1千台強と全体の16%程を占めている。
R34型スカイラインの特徴
R34型スカイラインの特徴をザッと紹介していこう。まずエンジンは全てのグレードで直列6気筒を搭載。主軸は高回転・高出力型のRBターボとなっている。
ボディタイプは4ドアセダンと2ドアクーペ、そしてGT-Rの3タイプとなっている。
シャーシ&ボディは前述のように世界基準を上回る目標で開発された高剛性のもの。
それを3代にわたって熟成させ、剛性を増しながらハンドリング性の向上も図っている。
ちなみにR35の代からGT-Rは別の車種となったので、GT-Rをグレードの一部に含むスカイラインはこのR34型が最後となる。駆動方式は伝統のFR方式を基本として、ラリーで培われたアテーサE-TS制御による4WDもラインナップされている。
足まわりは前後ともマルチリンク式を採用。ターボモデルにはR32型で初投入された4WS機構のスーパーHICASを搭載している。また、R33でいちど伸ばされたホイールベースを短縮してコーナーリング重視のディメンションとなっている。
日産を代表するスポーツカーとして現在でも高い人気を誇るR34スカイラインGT-R。クルマ好きを虜にするR34 GT-Rには、どのような魅力があるのだろうか。本記事では、R34 GT-Rの概要、スペック、バリエーション、ドライビングフィール[…]
R34型スカイラインのラインナップ(GT-R、25GT-X、25GT-V、25GT-FOUR、25GT-t)
グレードと搭載エンジン、駆動方式は以下のようになっている。
グレード | 搭載エンジン | 駆動方式 |
GT | RB20DE | FR |
25GT | RB25DE | FR |
25GT-FOUR | RB25DE | 4WD |
25GT-t | RB25DET | FR |
GT-R | RB26DETT | 4WD |
新車販売価格は、最も安いGTグレードで約220万円、最高額は25GT-Xターボの320万円となっている。GT-Rの場合は標準タイプが約500万円。最高額は最終モデルのMスペックニュルで630万円となっている。
ER34型スカイラインの特徴
続いてはR34型スカイラインの特徴に焦点を当てていこう。まずはGT-R以外のRB20DEとRB25DE(T)搭載モデルから。
コンセプト
先代のR33型では、R32型で不満が出ていた居住空間の狭さを改善するためボディを大型化し、ホイールベースも伸ばされたが、今度はコーナーリングフィーリングに不満が出たため、再度短めのホイールベースに戻された。
それに伴い、その当時のベンチマークとされていたドイツのGTカーを上回るボディ剛性と衝突安全性能が与えられた。
足まわりに関しても熟成が進み、マルチリンクの剛性アップやHICASとLSDの制御特性向上などを合わせて、コーナーリング性能の向上を図っている。
エンジン(RB20DE、RB25DE、RB25DET)
エンジンはすべて「NEOストレート6」と呼ばれる直列6気筒DOHCのRB型で統一されている。
排気量は2ℓと2.5ℓの2種類で、2.5ℓにはターボ仕様も用意される。2ℓのRB20DEは燃費性能を高めた希薄燃焼方式を採用。10・15モードで12km/ℓと、2.5ℓのRB25DEよりわずかに優れる。
そのRB25DEは性能と出力重視の仕様で、排気量の拡大と合わせてRB20DEより45ps出力が向上。車格に相応しい性能を発揮する。
RB25DEにターボを加えたRB25DETはGT-Rと同じ280psを発揮。4WD仕様でも胸のすくような力強い加速が味わえる。
また、
駆動方式(FR、4WD)
駆動方式はFRがベースで、R32型から続いて4WDモデルもラインナップされる。4WDモデルはGT-RゆずりのアテーサE-TS制御で、フロント駆動を0〜50%に切り替える方式。ミッションはグレードごとに4ATと5MTが用意される。
ボディ
ボディタイプは4ドアセダンと2ドアクーペの2種。ホイールベースはセダン、クーペ共に2665㎜となっているので、セダンの後席の居住性はけっして良いとは言えないだろう。ボディ剛性、安全性については前述のようにR32型から大幅に向上している。
主なグレード(GT、25GT-X、25GT-V、25GT-FOUR、25GT-t)
グレードと搭載エンジン、駆動方式は前述の通り。GT-Rと区別するためか、ターボモデルの4WD仕様はラインナップされていない。
また、吸気側のバルブタイミングを可変するNVCSを装備し、低中速トルクを補っている。発進加速などに余裕があるので日常使いに有利な特性となっている。
R34型GT-Rの特徴
次に、R34型のGT-Rの特徴を見ていこう。
コンセプト
R34型GT-Rは、3代続く第2世代GT-Rの決定版となるスペックに仕上げられたモデルだ。R32型GT-Rのデビュー以来追われる側となり、ライバル車も躍起になって性能向上がおこなわれたため、あらためて性能差を突き放すためにシャーシ&ボディには大幅な変更が加えられた。
基本骨格のバージョンアップに伴い、高速バトルでの安定性に効く空力効果も見直され、最新のトレンドであるアンダーパネルやディフューザーが新たに装備された(V-spec)。
エンジンや足まわりについては数字上の大きな変化はみられないが、あらゆる点で熟成と見直しがおこなわれ、信頼性やドライバビリティは確実に向上している。
エンジン(RB26DETT)
強力な動力性能を生む心臓部であり、GT-Rとしてのキャラクターの中心的な存在となっているRB26DETTエンジン。
基本スペックは、2568ccの直列6気筒DOHCツインターボで、出力280psとR32型と同じだが、様々な部分に手が加えられ、扱いやすさや耐久性が向上している。
その違いが数字に現れているのがトルクの値だ。R32型が36kg/m、R33型が37.5kg/m、そしてR34型では40kg/mへとモデルチェンジごとに向上している。
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駆動方式(ATTESA E-TS PRO)
そのRB26DETTの強大なパワーとトルクを路面に伝えるための駆動系も、第2世代GT-Rの特徴の一つに挙げられる。
世界のレースで勝つために、それまではロードレースでは敬遠されていた4WDという駆動方式を採用。ラリー仕様とは異なり、制御方式をFRを主体としたものに変更している。
その中心になる制御技術がアテーサE-TSで、ABSや各Gセンサーなどの情報を統合処理する高機能なものに進化している。
Vスペックグレードには、後輪のトルク配分を電子制御で細かく制御する機能を加えたアテーサE-TS PROが搭載されている。また、強大な動力性能を伝えるミッションにはゲトラグ製の6MTを採用している。
ボディ
「究極のドライビングボディ」というキャッチコピーを掲げ、まず基本骨格となるシャーシとボディの設計を徹底的に見直した。
剛性はもちろんのこと、その剛性配分も解析により最適化させ、固いだけでなくコーナーリングに効くボディ特性に仕立てられている。
また、コーナーリングに重要とされる前後重量配分を55:45とほぼ理想の値に近づけている(ちなみにR32型GT-Rは6:4)。
外観のデザインは、ベースモデルにブリスターフェンダーでワイド化するというR32型からの方程式を踏襲しつつ、それまでの曲面基調から直線基調にシフト。カチッとしつつ力強さを感じる印象になっている。
主なグレード(V-spec、V-spec II、M-spec、N1)
R34型GT-Rのグレードは(特別仕様を除き)下記のバリエーションがある。
- 標準仕様
- V-spec(アドバンスドエアロシステムや専用ダンパーなど)
- V-specⅡ(カーボン製ボンネット、大径リヤブレーキローターなど)
- M-spec(V-specをベースにリップルコントロール・ダンパーを装着)
- V-spec(Ⅱ) N1(快適装備廃止、専用高剛性ブロック、メタルブレードタービンなど)
- V-specⅡ Nür/M-spec Nür(N1仕様手組みエンジンや専用パーツを装備)
R34型GT-Rで話題となった装備はほとんどがV-specのものなので、人気の推移もそれに従っているようだ。
特に 、レースのためのグレードであるV-spec(Ⅱ) N1と、第2世代GT-R最後の記念モデル的な V-specⅡ NürとM-spec Nürは、その特別感と販売数の少なさからプレミアが付き価格が高騰している。
R34型GT-RとER34型の性能の違い
ここからは、R34型のGT-R(BNR34)と25GT-t(ER34)を比較してどんな違いがあるかを見ていこう。
エンジン出力(GT-R:280PS vs 25GT-t:280PS)
GT-Rのエンジンは第2世代GT-Rを象徴する高性能ユニットRB26DETT。直列6気筒2568ccのツインターボで、最高出力280ps/6800rpm、最大トルク40kgm/4400pmを発揮する。
25GT-tのエンジンは、NEOストレート6と呼ばれるRB25DET。直列6気筒2498ccターボで、最高出力280ps6400rpm、最大トルク40kgm/3200pmを発揮する。
どちらも同じRB系統の直列6気筒DOHCエンジンで排気量も近く、スペックの数値は大差無い。しかしその性格は大きく異なっている。最大の違いはポテンシャルだ。
RB25DETは市販車として当時の最高水準の性能を発揮するように設計されたもの。
一方でRB26DETTの方は、世界のレースで勝つことを命題に開発されたエンジンだ。
そのため、カタログ上の数値は280psとなっているが、実戦では600psでの使用が前提とされている。エンジン本体ではブロックからヘッドからほぼすべてがRB26DETTのための専用設計となる。
そしてタービン、インタークーラー、などの周辺パーツも600psでの運用を前提に設計されている。そうは言っても、公道に限っては600psのポテンシャルは過剰な品質とも言えるだろう。
特性的にはRB26DETTの方が高回転高出力型で、NVCSを装備するRB25DETの方は街乗りに適した低速トルクに有利な特性になっている。
ボディサイズ
ボディサイズは以下の通りだ。
25GT-t | GT-R(標準仕様) | |
全長×全幅×全高 | 4580×1725×1340mm | 4600×1785×1360mm |
ホイールベース | 2665mm | 2665mm |
トレッド前/後 | 1480/1470mm | 1480/1490mm |
車両重量 | 1430kg | 1540kg |
単純に数字で比較すると、GT-Rの方が25GT-tに比べて大きくて重い。パワーウエイトレシオの数字は25GT-tのほうが良いくらいだ。
車幅が数字上では片側30㎜ちょいと、見た目よりも差が少なかったのは意外だった。
駆動方式(GT-R:4WD vs ER34:FR/4WD)
25GT-tがターボ+2WD(FR)に対して、GT-Rはターボ+4WDとなっている。
ちなみに25GT-FOURは4WDだがターボは無い。駆動方式についてもカタログの表記だけでは性能の差が図れない。実際の構成では大きな差がある。
GT-Rはゲトラグ製の6MTが採用されているという点も、走りには差が出る部分だろう。
サスペンション(GT-R:専用チューン vs 標準)
サスペンションの型式はどちらも同じ前後マルチリンクとなっている。これについてはタイヤの違いで見てみるとその差が分かるだろう。
GT-Rは245/40-18で25GT-tは225/45-17というサイズのタイヤが標準となっている。
トレッド幅の違いだけでもそれだけ高い荷重が想定されているという証になるし、径と扁平率の違いはサスペンションの減衰特性や車体の剛性に大いに関連している。
ブレーキ(GT-R:ブレンボ製 vs 標準)
ブレーキに関してはあからさまな差がある。GT-Rは18インチの大径ホイールの中に大径のディスクローターと、耐久レースでの使用にも耐えられる容量のブレンボ製キャリパーが装着されている。
一方の25GT-tは、GT-Rに比べると2まわり小径のディスクローターと、国産車としては高性能というレベルのキャリパーの組み合わせだ。
GT-Rはそのままでサーキット走行に耐えうるが、25GT-tは途中でフェードを起こしてしまうだろう。
それぞれどんな人におすすめか?
さて、性能面でいろいろ比較をしてみたが、それぞれどんなユーザー、用途に適しているだろうか。
まず25GT-t(とGT-R以外の)グレードについて。こちらは、まずサーキットには行かない、あるいはたまに走行会に行く程度という人。
25GT-tもサーキットをじゅうぶん楽しく走れると思うが、頻繁に行って本気で走る場合はノーマルでは不安が出るので対策が必要になる。
ハイパワーなエンジン、しっかりしたシャーシと足まわり&ブレーキは、高速でよく遠乗りするという人にはもってこいの選択だろう。
低速トルクの扱いやすさは街乗りに活かされるので、その点もメリットだ。GT-Rは前述のようにそのままの状態でサーキット走行に耐える性能があるので、サーキットを楽しみたいという人にはうってつけだ。
しかしサーキット走行を楽しむというのはだいぶ限られた用途というのも事実だろう。
25GT-tで高速での移動に向くと言ったが、GT-Rはさらに快適に移動できるだろう。
それも、速度が上がれば上がるほど安定感の差が顕著になってくる。
日本の公道ではそのように高い速度で走るシチュエーションはほぼ無いが、GT-Rのポテンシャルが真に活かされるのは超高速ステージだというのもまた事実だと思う。
R34型GT-RとER34型の価格の違い
最後に、R34型スカイラインの新車販売価格と中古相場について触れておこう。
新車価格(GT-R vs ER34各グレード)
新車の販売価格は下記のようになっている。
25GT-t
バリエーション | 価格 |
クーペ(5MT) | 299.8万円 |
クーペ(4AT) | 310.0万円 |
セダン(5MT) | 299.3万円 |
セダン(4AT) | 309.5万円 |
GT-R
バリエーション | 価格 |
標準車 | 499.8万円 |
V-spec | 559.8万円 |
V-spec N1 | 599.8万円 |
V-specⅡ | 574.8万円 |
V-specⅡ N1 | 609.8万円 |
M-spec | 595.0万円 |
V-specⅡ Nür | 610.0万円 |
M-spec Nür | 630.0万円 |
同じクーペのターボ+MTとして比較すると、GT-Rの方が200万円高い価格となっている。おそらく使われている技術や各部の製造コストで見ると、価格以上の差があると思われる。
つまりそれは性能のポテンシャルの差だと言うことも出来るだろう。
中古車相場(GT-R vs ER34各グレード)
現在収集できる範囲での中古車の相場は下記のような傾向にある。
バリエーション | 価格範囲 |
クーペ(5MT) | 290〜700万円 |
クーペ(4AT) | 280〜400万円 |
セダン(5MT) | 320〜450万円 |
セダン(4AT) | 310〜450万円 |
GT-R
バリエーション | 価格範囲 |
標準車 | 1200〜6000万円 |
V-spec | 1700〜3000万円 |
V-spec N1 | —–万円 |
V-specⅡ | 2000〜3500万円 |
V-specⅡ N1 | —–万円 |
M-spec | 2500〜3500万円 |
V-specⅡ Nür | 5000〜7500万円 |
M-spec Nür | 5100〜7700万円 |
スカイラインは基本的に日本のドメスティックな車種のため、そういう車種を好む層を中心に、海外での相場価格が上がっている傾向にある。
世界的なハイパフォーマンスカーとして高い評価を得ているGT-Rのプレミア価格を見てしまうと基準がおかしくなる感覚になってしまうが、R34型スカイライン全体の人気も持ち上がっているようだ。
GT-RのN1については出品がなく、データが得られなかった。
年式による価格変動の傾向
現在のR34型スカイラインの中古相場を見る限り、年式や色、装備などの違いで価格が異なる傾向は見付けられなかった。
セダンとクーペなどのボディタイプや、5MTと4ATなどミッションの差についても、ほとんど無いように思える。
強いて挙げれば、車両の程度や事故歴などの状態面と、カスタムの度合いが価格の差になっているように感じられた。
今では海外の人気の高まりや円安などの影響によってどんどん海外にタマが流出していく傾向にあるR34型スカイライン。
海外の相場に引っ張られて国内の相場も10年前に比べると数倍になってしまっているので、今現在ですでに手が届きにくくなってしまっているが、今後はもっと値上がりする可能性も否定できない。
まだR34型スカイラインやGT-Rに未練が残っている人は、最終確認の意味も込めて、いちど実際の乗り味を確認してみてはどうだろうか。
試乗にはおもしろレンタカーがオススメだ。