フェアレディZ(RZ34)の魅力を徹底解説

現行のフェアレディZ(RZ34)は、初代S30系から数えて7代目となるモデルで、日産のスポーツカーとして長い歴史を誇る。今回は、RZ34の魅力を徹底解説し、その特徴やスペック、ライバル車との比較、そして購入のポイントについて詳しく紹介しよう。

フェアレディZ(RZ34)はどんなクルマ?

このモデルは、フェアレディZとしては13年ぶりのモデルチェンジとなる。

型式はZ34系からモデルチェンジをしたのだからZ35になると考えた人が大半だろう。

しかし実際は頭にR(Refineの略)が付いてRZ34となっている。これについては日産の商品戦略によるもののようだ。

RZ34を開発するにあたって掲げられたコンセプトは、スポーツカーらしさを追求しつつ低価格化を進めるというもの。そのコンセプトの実現に際して、最も大きな開発リソースを占めるプラットフォームを先代から流用し、運輸省への届け出をマイナーチェンジとして申請することで、開発コストの大幅削減を実行しているそうだ。

実際はほとんどの部品を新規に起こしているためフルモデルチェンジだが、そういう事情によりビッグマイナーチェンジとしての扱いとなり、形式名もZ34を継ぐものとなっている。結果その戦略が功を奏して、近いパフォーマンスを発揮する車両たちの間に紛れてしまわずに、高性能でスタイリッシュかつ低価格という商品力を持たせることに成功している。

エクステリアデザインは、歴代のZへのリスペクトを込めてそのアイコンとなる要素をいくつか採り入れ、うまくまとめられている。

ヘッドライトを含めたノーズ部からボンネットバルジの形状を思わせる造形は初代のS30系Zからのもの。

スラントしたノーズに丸いヘッドライトを奥まらせて埋め込むことで作られる変則的な楕円をうまくデフォルメし、新しいZのアイコンとして活用している。

そのヘッドライトに挟まれた長方形のグリルも、S30系を連想させるバランスでうまく収めている。

一方のテールランプは、直接の関連で言うとZ32系のオマージュだが、単純化することでS30系の匂いも感じさせるものとなっている。

この意匠は3代に用いられたことで、今後のZの後部のアイコンとなるかもしれない。

そしてサイドウインドウの形状もS30系のそれを継承したものだが、新たにAピラーから上部を伝いテールへと抜けるモールを装着。「刀」をモチーフとしたものだそうで、サイドセクションのデザインのアクセントとしている。

全体のシルエットは先代より低く構え伸びやかさを感じるものとなり、雰囲気が少しクラシカルさを帯びた感がある。

歴代Zからのオマージュ手法と合わせて、ネオクラシックとしてうまくバランスさせている。

エンジンはV37型スカイラインの特別モデルである400Rに搭載されたVR30DDTT型を採用。

実質的にはハイパースポーツのGT-Rに次いで日産では最上位クラスのユニットである。

405psという大パワーにより、充分以上のパフォーマンスを提供する。

足回りはカタログ上はRZ34系のものと同じ方式だが、単筒式ダンパーの採用などで走行性能を底上げし、最新のスポーツカーに相応しい洗練された脚に仕上げられている。

内装のデザインは先代のZ34から刷新されたが、基本的なレイアウトは変えておらず、操作系の部品など共通のものも見られるので、マイナーチェンジの範疇でうまくコストを抑えているようだ。

フェアレディZ(RZ34)のスペック

RZ34系フェアレディZのスペックを見ていこう。

車体関係の寸法は以下の通り。

項目数値
ホイールベース2,550 mm
全長4,380 mm(4,410 mm)
全幅1,845 mm
全高1,315 mm
車両重量1,570 – 1,620 kg(1,680 kg)

※()内はNISMO

数字を見ると、ホイールベースは共通のプラットフォームを採用していることから先代のZ34と同じ。

全幅と全高も同じで、全長は異なるが、これはバンパーのデザインの違いのよるものと言っていいだろう。重量はざっと大人一人分くらいの増加となっている。

続いてパワートレインを見てみる。

  • エンジン:VR30DDTT型(2997cc V型6気筒 直噴ツインターボ)
  • 最高出力:298 kW (405 PS) /6,400 rpm
  • 最大トルク:475 N·m (48.4 kgf·m) /1,600〜5,600 rpm
  • トランスミッション:9速AT(9M-ATx)/6速MT

先代のZ34は自然吸気の3.7Lで336psだったが、排気量をダウンサイジングしてターボ化&直噴化することで、パワーと燃費の大幅な向上を実現している。

6速MTはZ33型やZ34型と同じ愛知機械工業製のFS6R31型を継続して搭載。9速ATはトラックなどに搭載されるジヤトコ製のJR913E型をスポーツ系の走りにマッチさせるチューニングを施して搭載する。ローンチコントロール機能も装備している。

足まわりは、先代よりもタイヤ(POTENZA S007 18/19インチ)をワイド化し、大径モノチューブショックの採用、ボディ剛性の向上によりコーナリング性、操縦安定性を向上させている。

フェアレディZ(RZ34)が人気な理由とは

このRZ34系フェアレディZは、日産を代表する歴史の長いスポーツモデルの約13年ぶりとなるモデルチェンジということで注目を集めた。

往年の名モデルのエッセンスを採り入れたデザインは若い層からベテランドライバーへと幅広くファンを獲得することに成功している。

性能面でも高いアピール性を見せる。

エンジンはスカイライン史上最高パワーとなる400Rの心臓VR30DDTTを受け継ぎ、動力性能としては充分以上のパフォーマンスを発揮。

それでいて荒々しさを抑えた扱いやすさと乗り心地を備え、幅広いユーザーに訴求する懐の深さを持っている。

そのうえで価格を抑えたコストパフォーマンスの良さが加わり、ライトなユーザーから本格派まで、多くの支持を集めている。

  • 競合車種との比較(90スープラ、GR86、Z34)
車種ホイールベース全長全幅全高重量(kg)エンジン最高出力価格
RZ34 フェアレディZ25504380184513151570〜16203.0LV型6気筒ターボ405ps539.8〜665.7万円
Z34 フェアレディZ25504250184513151480〜15503.7LV型6気筒NA336ps345〜510万円
A90 スープラ24704380186512951410〜15302.0L直列4気筒ターボ
3.0L直列6気筒ターボ
197〜258ps
340〜387ps
499.5〜731.3万円
ZN8 GR86257542651775131012702.4L水平対向4気筒NA235ps279.9〜343.2万円

RZ34のライバルとなる、国産のFRスポーツモデルと比較してみたのが上の表となる。

ブランド的にも実質的に真っ向勝負となるのはトヨタのA90系スープラだろう。

車体のディメンション的には、スポーツ車として2シーターに専用設計されたスープラがホイールベース・トレッド比が理想値に近く、素性が優れていると言える。

しかしRZ34も4シーターとしてはかなり健闘していて、FRらしいポジションで運転できる良さを備えている。

パワー的にはRZ34に軍配が上がるが、車重はスープラが軽く、パワーウエイトレシオは大きく違わない。

運転支援などの快適&安全装備や、内装のクオリティ、足まわりやブレーキのグレードについてはスープラがッ価格相応に充実している。

選択の基準は価格とデザインになりそうだ。

フェアレディZ(RZ34)の乗り心地

エンジンの出力特性

3Lのツインターボで405psと聞くと、ひと昔前ならハイプレッシャーで尖った特性を想像するが、実際に乗ってアクセルを踏んでみると、そういった荒々しい感覚はほとんど感じられない。

と言ってマイルドというわけではなく、踏めばその分だけ太いトルクで車体をグイグイ前に押し出してくれる。

シンプルに言えば扱いやすい大パワーという感じだ。

排気音もかなり抑えられているので、横に誰かを乗せていても不満が出ることはないと思われる。

乗り心地、足まわりの特性

乗り心地についてもエンジン特性と同様に抑えが効いた感触にまとめられている。

18/19インチという大径ホイール&タイヤの重量でもバタ付かせずダンピングが効いていて、やや重くなった車重もしっかり支えつつ、確実な接地性を確保している。

これは大径化された単筒式ダンパーの効果によるものだろう。

操縦支援機能

運転支援システムは、この価格帯の現行モデルとしては意外と最低限の装備に留まっている。アダプティブクルーズコントロールはあるものの、操舵支援をしてくれるレーンキープアシストやハンズフリー運転支援機能などは装備していない。

ESCなど足まわり&駆動系の制御も最低限の装備で、クルマ任せにしていれば安定で安心という今の風潮からはやや外れるが、それがかえってスポーツ走行の楽しさを味わう一助となっている面もあり、ある意味では伝統のZらしい走りが味わえると言っても過言ではないだろう。

フェアレディZがなかなか買えない理由は?

発売当初はコロナ禍による半導体不足などの影響を受け供給が少なく、13年ぶりのモデルチェンジという注目度の高さと相まってバックオーダーが嵩み、抽選販売のプロトスペックは中古車の価格が販売価格の倍近くで取引されるなどフィーバーの相を見せた。

その流れに拍車を掛けたのが2022年7月の受注停止だ。

栃木工場のトラブルや、メイン市場の北米を優先させたせいなどいろいろな憶測が飛んでいたが、実際のところ原因は不明。

2023年の末頃から徐々に供給体制の復活が見られ、今でも新規の受注は停止状態のようだが、納車の目安は7ヶ月と表示されている。

フェアレディZ(RZ34)の新車価格、中古車価格

新車の価格

RZ34フェアレディZの新車価格は以下の通り。

グレードトランスミッション価格
ベースグレード6MT539.88万円
ベースグレード9M-ATx539.88万円
バージョンS6MT624.58万円
バージョンT9M-ATx585.86万円
バージョンST6MT665.72万円
バージョンST9M-ATx665.72万円
NISMO9M-ATx920.04万円

RZ34フェアレディZではミッションが6速MTと9速AT(9M-ATx)の2つから選べるが、価格差はなく同価格で統一されている。

最安のベースグレードと性能と装備が充実したバージョンSTの価格差は約125万円。

内装の充実を求めるならバージョンT、走りの装備優先ならバージョンS、どちらも欠かせないという場合はフル装備のバージョンSTという選択になる。

中古車の価格

一時期は抽選販売のプロトスペックが新車価格の倍で取引されるなど、過熱を見せていたが、現在では供給が進んだおかげか中古車の相場も落ち着きを見せている

相場をグレードごとに見てみよう。

プロトスペックの価格高騰が落ち着いて800万円台に下がってきた今、1000万円を上回っているのはNISMOのみという状況。

最安はベースグレードかと思いきや、ベースグレードの出品はほとんど無く、市場の中心を占めるのはバージョンSTとなっている。

価格は650〜750万円といったところ。まだまだ供給が足りていない実状を受けて新車価格を上回る個体も少なくないという状況で、お買い得にRZ34を入手できるようになるのはまだ先になりそうだ。

新車の受注がまだ完全に戻りきっていない今、中古車のかかくもまだまだ高い水準を維持していて、RZ34フェアレディZはけっして買いやすいという状況ではない。

そんな状況のなかで、購入の前にいちど実車に乗ってその魅力を確認しておきたいという人も少なくないだろう。

そんな人はぜひおもしろレンタカーを訪れて、RZ34フェアレディZを思うさま乗り回し、実際の走りを堪能してみて欲しい。