フェアレディZ 33の魅力を徹底解説

日産・フェアレディZは、1969年から始まる日産を代表するスポーツカーのブランド。

初代のS30系より代々受け継がれる、前端がスラントして絞り込まれたファストバック・スタイルが特徴のクーペボディを外観のアイデンティティとしている。

北米をメインの市場としており、流麗なスタイリングと共に、広々とした土地を貫くハイウエイを快適に走れる動力性能が魅力のモデルだ。

ここでは、歴代のフェアレディZのモデルの中から、5代目にあたるZ33系にスポットを当てて紹介していこう。

フェアレディZ 33はどんなクルマ?

Z33系フェアレディZは2002年に発売開始された、フェアレディZとして5代目にあたるモデル。

先代のZ32型が1989年から2000年まで発売されていて、2002年に発売のZ33系へのモデルチェンジはほぼ間を置かずにおこなわれたかに思える。

しかし実際は1990年代の後半に被った日産の経営危機のあおりを受けて、いちど開発がストップしている。

そのままだと長らく続いたフェアレディZの歴史が途切れることになりかねなかったが、その歴史の流れを繋いだのは、アメリカ日産が1999年にデトロイトショーに出展した「240Zコンセプト」への大きな反響と、同年にルノーとの資本提携でCOOに就任したカルロス・ゴーンがプロジェクトの再開に尽力したことによる。

再開後、2年というかなり短い時間で発売となったが、それは日産開発部の雄志が密かにベース・コンセプト車両の製作を続けていたため、それを元に開発期間が短縮できたおかげとの話もある。

フェアレディZ 33のスペック

開発が再開したというものの、経営危機はまだ解消されていない時期の開発とあって、けっして充分な予算が充てられたいたわけではなかった。

そのため、先行して開発が進められていたスカイライン(V35系)とプラットフォームを共用することでコストを削減した。

ボディはクーペとロードスターの2タイプ。

兄弟車としての色の濃いスカイラインクーペ(CPV35系)が4シーターの役を担ったことで、Z33は2シーター専用モデルとなった。

ホイールベースはスカイライン・セダン(&クーペ)より200mm短縮されて2650mmとなる。

ボディサイズは、前期のクーペで全長が4310mm、全幅が1815mm、全高が1315mmとなっている。

サスペンションもスカイラインと同じ前後マルチリンク式を採用。

アルミ合金製アーム採用などの軽量化が施されたことで、発売当時は世界トップレベルのバネ下重量の軽さを誇っていた。

エンジンは当初スカイラインセダンと同じ3498cc V型6気筒NAの「VQ35DE型」を搭載。

出力は当初の280psから始まり、2007年モデルでは294psまで向上された。

2005年モデルから後期モデルとなり、2007年にはエンジンが新開発の3498cc V型6気筒NAの「VQ35HR型」が追加され、出力は313PSとなった。

ちなみに特別仕様の「Version NISMO Type 380RS-Competition」では、この「VQ35HR型」エンジンの排気量を3798ccまで拡大した3.8L仕様が搭載されている。

トランスミッションはグレードにより6速MTと5速ATの2タイプが用意されている。

フェアレディZ 33が人気な理由とは

Z33系フェアレディZの魅力は、なんと言ってもまずそのスタイリングだろう。

FMプラットフォームの採用によるショートオーバーハングの4隅にタイヤが配された踏ん張り感の強いフォルムと、そこに躍動感を加えるフェンダーの張り出しが強調されたボディシェイプ。

そしてこのクルマのアイコンともなっている前後方向に切れ込むようなデザインのヘッドライトとテールランプなどによって、フェアレディZ独特の雰囲気を形作っている。

そしてそのボディを軽々と走らせる高い動力性能も外せないポイントだろう。

3498cc V型6気筒NAエンジンは低速域から充分以上のトルクが発生、街乗りからワインディングまでストレスのない加速が味わえる。

そこに加えて高回転まで気持ちよく吹け上がるフィーリングと、回転が高まるほどに官能的なエクゾーストノートを堪能できる。

そしてその動力性能を活かせるシャーシとサスペンションの仕上がりも高いレベルにある。

サーキットでの走行会レベルでは余裕を持って走りを堪能できるだろう。

同価格帯車種との比較(トヨタ 86、MR-S、NCロードスター)

中古市場で同価格帯にあり、車両の性格も近い3台をピックアップして、スペックでの比較をしてみよう。

車種サイズ(全長/全幅/全高)mmホイールベース mm車両重量 kgエンジン出力 PS
Z33系フェアレディZ4310/1825/131526501430~15503.5L V型6気筒280~313
トヨタ864240/1775/130025701190~12702.0L 水平対向4気筒200~207
トヨタMR-S3895/1695/12352450960~10201.8L 直列4気筒140
NC系ロードスター3995/1720/124523301090~11402.0L 直列4気筒162~170

こうして表で比較してみると、Z33系フェアレディZだけ排気量が大きく、ホイールベースや車両サイズも大きいため、違ったジャンルの車両という印象が強い。

どの車両もFRレイアウトでスポーツ性能を重視しているという点では共通なので、ワインディングやサーキットに持ち込めば、きっと気持ちよく走らせられることだろう。

しかしそれぞれ車両の特性が異なるので、得意なコースや合う走り方はそれぞれ異なってくる。

最もパワーのあるZ33系フェアレディZは高速道路の移動や高速サーキット、ワインディングの登りで本領を発揮。

軽量さが身上のMR-Sとロードスターはミニサーキットやタイトコーナーの多いワインディングで気持ちよく走れるだろう。

トヨタ86はその中間的な特性で、オールマイティにどんな場面でもそつなくハイレベルな走りができる特性を持っている。

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フェアレディ Z33と先代Z32、後継Z34の違いは?

先代Z32との違い

先代のZ32系の代でもそれ以前のZ31代までの流れからシャーシのコンセプトやデザインの方向性を大きく変えたが、Z33系ではシャーシの設計やサスペンション形式も変更され、まったく異なるディメンションを持つ別の系統のクルマに生まれ変わったと言っていいだろう。

V35型スカイラインセダンから採用されたFM(フロントミッドシップ)プラットフォームを採用したことで、前後重量配分がFR車の理想値に近い53:47となっている。

2シーターのみに割り切ったことでFMプラットフォームでは最短の2650mmとなっているが、エンジンをフロントミッドシップ配置にしたことでZ32系の2シーターより200mm長くなっている。

エンジンはNAの「VG30DE」とツインターボのVG30DETTという二本立てから新開発NAのVQ35DE型へと進化している。

VGとVQは60度V型6気筒という点では同じだが、排気量の違い以上にほぼ同じ部品が使われていないレベルで違うエンジンとなっている。

VGではツインターボで280psを発生させていたのに対して、VQでは排気量の拡大と燃焼効率の向上によりNAで同等かそれ以上のパワーを発生させるに至った。

後継z34との違い

後継のZ34系とはデザインの面で大きな変更がされていないために、バージョンアップ的なビッグマイナーチェンジと見ていた人も少なくなかった印象がある。

しかし実際は、Z33系と同様に兄弟車のCV36系スカイラインと共通のFR-Lプラットフォームを採用していながらも、ほとんどの部分がZ専用に設計し直されており、れっきとしたフルモデルチェンジである。

シャーシはZ33系からホイールベースが100mm短縮されたことで前後重量配分は55:45となり、より理想の数値に近くなった。

サスペンション形式には変更は無いが、各部の設計見直しと素材の見直しにより剛性強化と共に軽量化も実現し、エンジンや安全面強化による重量増を相殺してZ33とほぼ同じ数値に落ち着いている。

エンジンはZ33系後期に搭載の「VQ35HR」をベースに排気量を200cc拡大し3696ccとなった「VQ37VHR」エンジンが搭載されている。

トランスミッションはマニュアルモード付き7速ATと6速MTが組み合わされる。

パワーウエイトレシオが向上されたことで加速性能がアップ。そして足まわりの設計見直しで走りの総合力も底上げされている。

フェアレディZ 33の新車価格、中古車価格

Z33系フェアレディZの購入を意識している人に向けて、新車時の価格を踏まえて現在の中古車相場について見ていこう。

新車の価格

Z33フェアレディZの新車時の価格は以下の通り。

グレード名型式シフト価格
クーペベースグレードUA-Z336MT3,000,000円
クーペベースグレードUA-Z335AT3,100,000円
クーペバージョンSUA-Z336MT3,300,000円
クーペバージョンTUA-Z335AT3,400,000円
クーペバージョンSTUA-Z336MT3,600,000円
クーペバージョンSTUA-Z335AT3,700,000円
クーペバージョンSTUA-Z335AT3,700,000円
ロードスターベースグレードUA-HZ336MT3,500,000円
ロードスターベースグレードUA-HZ335AT3,600,000円
ロードスターバージョンTUA-HZ336MT3,800,000円
ロードスターバージョンTUA-HZ335AT3,900,000円

バリエーションはクーペとロードスターの両ボディに、ベースモデルと、本革パワーシートなどの豪華装備を持つ「バージョンT」の2種の設定があり、クーペには、brembo社製4輪ベンチレーテッドディスク&アルミキャリパー対向ピストンブレーキを装着した「バージョンS」、そして豪華装備と高性能ブレーキを装備した「バージョンST」をラインアップする。

後期からはロードスターにも「バージョンST」がラインナップされた。

中古車の価格

2024年6月現在、Z33フェアレディZの中古車価格は70万円〜400万円の間に分布されているようだ。

傾向としては、年式が古い2002年〜2004年の前期モデルで走行距離が多い個体は100万円以下の値が付く個体が多い。

2005年からの後期モデルも走行距離によっては100万円台の個体も多く、

グレードの違いについては、6MTの「バージョンS」、「バージョンST」の価格がやや高い傾向が見られるが、数十万円の違いでしかないので、程度や走行距離の方が価格への影響が大きいように感じられる。

これはロードスターに関しても同様な傾向が見られるが、クーペとロードスターの差についてもそれほど大きくはないようだ。

ただしロードスターの台数は限られるため、選択肢は少ない。

FRで大排気量NAのピュアスポーツカーが200万円以下で多くの選択肢から選べるのだから、スポーツカー好きにとっては嬉しい状況と言えるだろう。

購入を検討している方はおもしろレンタカーまで

今ではすっかり選択肢が少なくなってしまったFRのスポーツモデルだが、中古車に目を向ければ、今回取り上げたZ33系フェアレディZのような魅力溢れる車種が多く存在している。

ただ、このZ33系フェアレディZでもう販売開始から20年以上が経過しているので、中古車選びの際には状態などをしっかり見極める必要がある。

中古車の場合は試乗できないケースもあり、その乗り味や動力性能が確認できない可能性もある。

そんなときは、思う存分じっくりと試乗ができるおもしろレンタカーで、Z33系フェアレディZの魅力な部分や性能を直接確認、堪能してみて欲しい。