三菱の高性能車の頂点を担うランサー・エボリューション・シリーズの6代目モデル「ランサー・エボリューションⅥ」。WRCとランエボ6の関係やランエボ5から何が進化したのか気になる方も多いはず。
この記事では、WRCの頂点を目指してつくられたランエボ6のスゴい所を掘り下げて紹介したい。
WRCとランエボ6
ランエボシリーズの紹介と歴史
「ランサー・エボリューションⅥ」はその名の通り、三菱の高性能車の頂点を担うランサー・エボリューション・シリーズの6代目モデルだ。
ランサー・エボリューション、通称「ランエボ」は、当時の市販車ベースのモータースポーツ・カテゴリーで最もアピール度の高かった「WRC(世界ラリー選手権)」での勝利を得るために開発された車種。
小型車のランサーをベースとして、ラリーの最高峰「WRC」で勝てるクルマに仕立てるため、ハイパワーなターボエンジンと、速さのために鍛えられた4駆を搭載したハイパフォーマンス車が「ランエボ」だ。
ランエボⅥの登場背景
1999年に発売されたこの「ランエボⅥ」はその6代目となるモデルで、ベースのランサーが1995年にフルモデルチェンジしたことに伴い、1996年発売の「Ⅳ」からこの「Ⅵ」までが第2世代となる(正確には6.5とも称される「トミー・マキネン・エディション」まで)。
ただでさえ高出力な「4G63型」エンジンは、2リッタークラスながら自主規制いっぱいの280馬力を発生させるに至っている。
実質的に「Ⅵ」は、初めて3ナンバーサイズに拡幅された「Ⅴ」の熟成版と言える内容となっている。
ちなみにランエボは見分けるのが難しいという声も聞くが、この「Ⅵ」の外観上でいちばんのポイントは、中心から車体の左側に移されたナンバー位置と、フロントバンパー両脇に備えられた、盛り上がる造形のフォグランプである。
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WRCとランエボ6の関係
WRCがグループAに加えてWRカーのカテゴリを加えた
WRCでは1997年から、改造範囲が広くて年間生産台数のハードルも低い「WRカー」というカテゴリーを新設した。
これはWRCのトップカテゴリーで三菱とスバルの2強状態が長く続き、FIA(国際自動車連盟)のお膝元である欧州メーカーが太刀打ちできないという状況があった。
その打開策として、ベースとなる市販車モデルへターボの追加や四輪駆動化もOKで、ホモロゲーション取得に必要な市販車の生産台数が年間2500台以上でOKという、グループAに比べて、大幅に制約を緩めたカテゴリーを新たに設定したのである。(グループAは、市販車モデルの生産台数が5000台以上で、エンジンや駆動方式、空力パーツの変更は不可)
これによりベース車両に求められる性能ハードルが下がり、欧州メーカーが参戦しやすくなった。(ベース車両となる市販車の性能が低くてもレースでは勝てる可能性が高くなったのである。)
ランエボ+トミー・マキネンの強さに煮え湯を飲まされていたスバルはいち早くWRカー・カテゴリーの車両開発に着手したが、一方の三菱は、あえて従来通りの「グループA」での参戦意志を固めていたのだった。
ランエボ6は敢えて、グループAカテゴリーをつくった
三菱のWRCの参戦テーマは、世界最高峰の競技を勝つために培った様々な技術を、自社の市販車にフィードバックするというもの。
表向きにはその崇高なテーマを貫いたと見えるが、実際は先代の「Ⅴ」の投入初年ですでにドライバーズ・タイトルを始め、三菱としては初のマニュファクチャラーズ・タイトルを獲得していたことで確かな手応えを感じており、
このまま「グループA」マシンでもWRカー相手に充分戦えると判断したようだ。
グループAで優勝した
正直なことを言うと、カタログモデルに連なる車種にチューニングカーさながらの動力性能を与え、ウオータースプレーのような「これ、いつ使うんだ?」という装備まで設定されたこのランエボⅥを見たときには、「さすがにやり過ぎではないか?」と感じた。
しかし、三菱がこの参戦の姿勢を貫いた結果、見事にエースドライバーのトミーマキネンが4年連続のドライバーズタイトルを獲得。
この勝利により、市販車と最高峰の競技とが直結したかのようなイメージを確立。ランエボを中心に販売台数が増加したことに加えて、三菱の技術力の高さを世界に知らしめることとなった。
2005年~2007年に販売されたランエボⅨ(ランエボⅨMRを含む)、そのあと2007年10月にランエボXが販売され第四世代へと引き継がれる。しかしながら、初代ランエボからランエボⅨ(ランエボⅨ MRを含む)まで14年間搭載され歴代エボの[…]
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ランエボ6はランエボ5から何が進化したのか
ランエボIVの基本骨格と性能向上
第2世代となった「ランエボⅣ」では、ベース車のランサーの進化によってすべての走行性能を支える基本骨格の剛性向上を果たし、1段上のポテンシャルを獲得。エンジンやサスペンションなども改良され、明確な性能向上を果たす。
ランエボVの拡幅と走行性能の向上
2年後にはその「Ⅳ」を元にしてランエボ初となる3ナンバー枠まで車幅を広げた「Ⅴ」へと進化。拡幅によるメリットは大きく、サスペンション設計の自由度が増したり、幅広のタイヤが使用できたりと走行性能はまた1段と高まった。
エンジンの耐久性の向上
その「Ⅴ」をさらに熟成させて、戦闘力の向上を図ったのがこの「Ⅵ」である。「Ⅴ」からの変更点を挙げていくと、まずエンジンの耐久性が向上。スペックでは変化は無いが、水温の制御をより確実な出口制御式に、ピストンを裏から冷やすクーリングチャンネルの追加、オイルクーラーの大型化、オイルパン形状の見直しなどなど、冷却性能を中心に強化がおこなわれている。
出力的にはインテークパイプの径とターボのコンプレッサー入り口径を拡大して高回転での性能とレスポンス向上を試みている。
足まわりの改良と強化
足まわりでは、アームなど各構成部品を鋳造から鍛造に変更して強度アップを図り、ジョイントの要所をゴム入りのピロボール式に変更。ダンパーのリバウンドストロークを増やすなどして、実践で効く変更がおこなわれている。
興味深い点はフロントロアアームの変更で、外側の支持部をアーム側からナックル側に移すことでロールセンターを下げているそうだ。このようにランエボⅥはカタログスペック上の進化は少ないものの、実際のラリー競技で勝つためのチューニングが施された。まさにグループAという規制が厳しい規格で、事実上の格上クラスであるWRカーに勝つためのマシンとして進化したのだ。
ランエボ6の走行レビュー
「おもしろレンタカー」のストック車両に試乗をおこなったので、そのときに感じたインプレッションをお伝えしよう。
エンジン性能の実感
走り出す前に空ぶかしをしてみると、エンジンのレスポンスは想像より鋭い。大径の社外マフラーから響いてくる低い排気音を伴ってその気にさせてくれる。
4G63の特色である厚い低速トルクのおかげで発進はイージーだが、クラッチの踏み込みにはやや下腹に力を入れる意識が必要だと感じた。
渋滞など長時間の繊細な操作は少し厳しいかもしれない。走り出すと3000回転以下で周囲の流れに乗るにはじゅうぶんなトルクを感じる。
加速と乗り心地の魅力
しかしせっかくのランエボである。ランエボ史上最高クラスの280馬力を体感すべく、巡航の3速からシフトダウンしてアクセルをガバッと開けてみる。
3000を跨ぐまではややタルいと感じたものの、そこを超えるとグイグイとトルクが溢れてくる。
4気筒ハイプレッシャーターボらしいどう猛な顔を見せながら、回転は一気に7000手前まで上がっていく。加速とともに迫力を増す排気音とともに、気持ちの良い加速が堪能できる。
軽い車体による加速応答性もあるのだろう、排気量の大きいGT-R等とは異なる、軽快感を伴った加速が持ち味だと感じた。
その一方で急激な加速に対する恐怖感が少ないのもこのランエボの特色ではないだろうか。
4駆とAYCの制御による安定性が貢献しているのだろう、他の車両をあっという間に置き去りにする加速をおこなっている最中にも、周囲に気を配れる余裕を感じて少し驚かされた。
総評
足まわりでは、試乗した車両には社外の車高調が装着されていたので純正の乗り心地とは異なるとは思うが、路面のギャップを乗り越える際の突き上げが少なく、車体の動きにシビアな感触が少なくて乗り心地は評判ほど悪いと感じなかった。
ステアリング面では、回頭性は良い方だと感じたが、Uターンなどで小回りが利かない点はマイナスポイントだ。
しかし安定性とのトレードオフというなら受け入れるしかないかもしれない。
余談だが、試乗車には今では少なくなったサンルーフが装着されているので、レンタルされるときはぜひ開け放って開放感を味わってみてほしい。
まとめ
リッター130馬力を発生する動力性能とラリーで鍛え上げられたシャーシと足まわりによる走行性能は、発売から軽く20年以上経った今でも一線級のポテンシャルを秘めている。
しかし一方で、インテリアの質感やデザインを見ると、さすがに古いなという印象はぬぐえない。
しかしそれでもこの「ランエボⅣ」のような尖り方をしたモデルはこの先現れることはないだろう。
もしこのランエボが気になっているというなら、購入の前に一度レンタルをして、その走りのほどを体感してみて欲しい。