三菱 gtoの魅力とは

GTO

三菱GTOは、三菱自動車工業が1990年に発売したスーパースポーツ。1990年代に起こったハイパワーターボ車の筆頭に挙げられる一台だ。

ここでは三菱GTOにスポットを当てて少し掘り下げていこう。

三菱のハイパフォーマンスカーGTOの魅力

発売から30年以上が経過した今でも根強い支持者がいる三菱GTO。その魅力を大きく括ると以下の要素になるだろう。

スーパーカーに引けを取らないスタイリング

三菱GTOのエクステリアは、北米のマッスルカーにも引けを取らないグラマラスなスタイリングを持っている。中央が絞られたコークボトルのようなシェイプを形作るブリスター状のフェンダーは、筋肉質な印象を添えるとともに全体のフォルムに迫力を与えている。

前期モデルは当時のスーパースポーツとして象徴的なリトラクタブルヘッドライトを備え、フロントセクションのくさび形フォルムを形成している。リヤセクションにはコークボトルシェイプの後端に相応しいボリュームが与えられ、シャープな横一文字のテールランプユニットがアクセントになっている。

また、V6ツインターボの存在を匂わせる2本出しのエキゾーストもリアビューに迫力を添えている。デザインは当時賛否はあったが、確実に一定層のコアなファンを獲得していた印象だ。

当時、最高クラスの動力性能

V型6気筒 2972ccツインターボエンジンが発生する出力は、もちろん当時の国産車最高クラス。当時は自主規制の280psの上限値で各社の出力は横並びだったが、排気量で勝るGTOは余裕があり、実際に輸出仕様(北米など)では320psを発揮していた。

最大トルクも、後期では直接のライバルであるトヨタ・スープラに抜かれたが、発売当初は国内トップであり、パワー至上主義のユーザーにも強くアピールしていた。

4輪駆動のアドバンテージ

当時はスポーツカーの駆動方式はFRという固定概念が根強く残っていたが、ラリーの人気の高まりなどの要因から、速さを求めるなら4輪駆動という考えが純スポーツの世界にも入り始めていた。GTOはその要素を早い段階で採り入れて実装した。

280psものパワーは、当時最大幅のハイグリップラジアルでも2輪では受け止めきれないレベルであり、じきに4輪駆動化は必須のものとして受け入れられた。実際に工場出荷状態でのゼロヨンでも大きなアドバンテージとなっていた。

GTOのラインナップと変遷

三菱GTOはその長い歴史の中で数回のモデルチェンジを経て、性能やデザインに大きな進化を遂げてきた。ここでは、GTOのラインナップの変遷と共に、主な変更点を紹介し、どのように進化していったのかを掘り下げていく。

モデルの履歴と主な変更点

三菱GTOは、1990年の発売から2度のマイナーチェンジを経て3代目のモデルを構成する。主な変更点は以下の通り。

前期 1990〜1993年

外観の特徴はリトラクタブルヘッドライトを採用した点。当初ホイールは16インチスタートだったが、途中で17インチに変更される。国内では初のゲトラグ社製MT(5速)を採用。

中期 1993〜1998年

ヘッドライトが固定式の4灯プロジェクタータイプに変更され、バンパーのデザインが一新される。フロントバンパーの意匠変更に合わせてリアのタイヤハウス前のエアスクープも開口部のデザインに変更される。

エンジンは細部の見直しにより、最大トルクが向上。トランスミッションは6速化されている。1996年に18インチのクロームメッキホイールを採用。軽量化された「MR」グレードを追加。

後期 1998〜2001年

ヘッドライトがウインカーを組み入れたダッジ風の横長なタイプに変更され、バンパーのデザインも刷新。

リヤスポイラーがウイング部が高く持ち上がったタイプになる。テールランプは中央で分割されたデザインに変更。細部の見直しにより車重を5%軽量化。

グレード展開

グレードの展開は以下のようになっている。

  • NA(SR):自然吸気V型6気筒2972cc(225ps)のエンジンを搭載するスタンダードグレード
  • ツインターボ:NAのエンジンをベースにツインターボ化し、280psを発揮するトップグレード
  • ツインターボMR:ツインターボをベースに100kg以上の軽量化を行ったモデル

国内モデルは全グレードが4輪駆動となっている。後輪を速度や状況に応じて操舵させる4WS機構を備えたモデルも設定されており、型式が異なる。

エンジンの性能

三菱GTOの心臓部であり、魅力の最大要素でもあるエンジンのスペックを見ていこう。

エンジンのスペック(ツインターボ・前期型)

  • 型式:6G72型 
  • タイプ:V型6気筒 DOHC 24バルブ インタークーラー式ツインターボ
  • 排気量:2972cc 
  • 内径×行程:91.1mm×76.0mm
  • 圧縮比:8.0
  • 最高出力:280ps(206kW)/6000rpm
  • 最大トルク:42.5kgm(416.8Nm)/2500rpm

3.0リットルのツインターボエンジンは、当時の国内市場では最大排気量の過給エンジンであり、出力とトルクともにトップレベルを誇っていた。特にトルクの高さがポイントで、無改造車では間違いなく最速の1台であった。

ライバル車との比較

当時のライバル車としては、日産・スカイラインGT-R、トヨタ・スープラ、マツダ・RX-7、ホンダ・NSXがハイパワー競争を繰り広げていた。

しかし、NSXはNAで、RX-7は1.3リットルのロータリーのため戦力が足りず、GT-Rも当時最速の1台だったが、排気量が2.6リットルと小さく、トルクの面でやや不足していたため、直接のライバルは同じ3.0リットルターボのスープラだった。

発売当初はトルクで上回っていたが、マイナーチェンジごとに性能を向上させてくるスープラに抜かれ、最終的には2番手に甘んじることとなる。ただし、スープラは後輪駆動のため、直線での競争では4輪駆動のGTOに軍配が上がる局面も多かったようだ。

国産車初となる装備

三菱GTOは、三菱らしい先進装備が盛り込まれた車両に仕立てられている。その代表的な要素を挙げていこう。

ブレーキ

ブレーキは異径ピストンの対抗4ポッドタイプを、国産の4輪車としては初めて採用している。これはブレーキパッドを押し付ける圧力を最適化する技術。

1994年にMRグレードが追加された時期には、APロッキード製の対抗6ポッドキャリパー・ブレーキがオプションとして選べるようになった。

トランスミッション

3.0リットルのツインターボエンジンが発する大トルクに耐えるよう、ゲトラグ社製のトランスミッションを採用。当初は5速タイプだったが、中期から6速化された(6速化はスープラが先となる)。

可変マフラー

「アクティブエキゾーストシステム」と名付けられた可変式のマフラーを装備していた。これはスイッチの操作によって排気音をノーマル/サイレントと切り替えられる機構。

普段は迫力のあるノーマルで走行し、住宅地や深夜などはサイレントで静かに走行できる。

可変リヤスポイラー

「アクティブエアロ」と名付けられた前後スポイラーを速度に応じて可変させる機構が備わっていた。

フロントバンパー下端からフラップがせり出す機構はそれ以前からあったが、リアのウイングの角度を変えられる機構はGTOが初採用となる。

GTOの欠点

GTOは素晴らしい性能を誇るスーパースポーツカーであるが、その魅力の一方で欠点もいくつか存在する。ここでは、GTOが抱えるいくつかの課題や弱点について触れ、車両の特性をよく理解してもらうために重要なポイントを紹介する。

車重が重い

当時のスーパースポーツのライバル車たちの車重が1400kg台だったのに対して、GTOの車重は1600〜1710kgと、最大で300kgも重くなっている。スポーツカーは運動性能もその評価において重要なファクターになるため、直線だけ速い「直線番長」という、マイナス要素を含んだニックネームで呼ばれることもあった。

ちなみに後期モデルでは軽量化が施され、最も重いツインターボの4輪駆動+4WSモデルで1680kgとなっている。

FFベースのプラットフォーム

先述の重量にも大きく関わるのがこのプラットフォームの問題だ。GTOは、高級セダンであるディアマンテと同じプラットフォームを使用して作られている。

他のライバルたちと事情が大きく異なるのがこの部分で、大きくて重い高級セダン用の、しかもFFベースのプラットフォームを使ったため、走行性能を高めるには、4輪駆動の採用が必然だった。

また、キャビンの居住スペースを最大に取る設計によりエンジンがフロントオーバーハングの外に位置しているため、重心の点で見るとフロントヘビーとなり、コーナリング性能にとっては大きなマイナスとなる。

それらの理由から、ガチの走り重視派やサーキットエンジョイ勢からは敬遠される傾向が強く、直線や高速道路での快適さを求める向きに支持されていた。ただし、ホイールベースが短いため、乗ってみると案外クイックに曲がるという声もある。

インテーク類がダミー

細かい点を挙げると、前期型のボンネットのダクトやサイド後部のインテークが実用的ではなく、ダミーだという点も挙げられる。デザイン的にボンネットを低く見せたいがストラットの頭が収まらないのを解消するための苦肉の策であるというのは、その界隈では有名な話。

日常の使い勝手は?

GTOはスーパースポーツカーとして優れた性能を持つ一方で、日常使いにおいてはそのサイズや燃費などで使い勝手に課題が生じることがある。ここでは、GTOの日常の使い勝手について、特に市街地走行や維持費、メンテナンス性に焦点を当てて考えていく。

GTOの使い勝手

GTOを市街地で走らせると、細い道幅や駐車場の制限などの点で、その車幅の広さがネックになる場面が多々ある。

クーペなので積載性や後席の居住性に期待をしてはいけないが、後席の背もたれ部を倒すとトランクスルーになり、長い荷物を積むこともできるという意外な使い勝手の良さもある。

燃費やメンテナンス性

燃費はその当時のハイパワーなライバルたちと比較しても悪い部類に入るだろう。カタログ上では7.2〜9.2km/lとなっており、後期型NAの5MTが最も良く、前期型ツインターボのATフル装備が最も悪い。

実燃費はおおよその平均は7〜8km/lで、最低ラインは5km/lを割るケースもあるようだ。ハイパワーターボなので、アクセルを一定開度でおとなしく走れば10km/lも範囲内だが、ガンガン開ける場合は5km/lもじゅうぶんあり得る。

メンテナンス性についても、あまり良いとは言えないだろう。純正パーツの供給もかなり厳しくなっているという声も多いし、中古で探すにしてもタマ数が少ない車種であるため、これも厳しいと思われる。

故障についてもそれなりに多いようで、前期の5MTミッションは修理に苦戦するという声もある。

GTOを勧められる人

ずばりGTOを勧めたい人は、このスタイリングに魅力を感じる人だろう。様々なデザインの車種が各メーカーから多く生み出されていたバブル最盛期でも、これだけ大胆でスタイリッシュなデザインのクルマは多くないだろう。

前期・中期・後期でキャラクターが異なるので好みは分かれるが、アメリカンなテイストが好きな人には刺さる傾向が強いと感じる。そして、強力なトルクをイージーに楽しみたいという人にもオススメだ。

現役だった時期は動力性能の高さでスーパースポーツのライバル車たちと比較されていたが、本当のライバルはアメリカのマッスルカーではないだろうか。そのため、高速道路を気持ちよく飛ばしたい人や、街中で注目されることを求める人には持って来いの車種と言えるだろう。

こうしたキャラクターの車種がかなり少なくなってしまった現在、やや高騰気味のGTOの中古車を買わずに、気軽にその魅力と乗り味を堪能できる「おもしろレンタカー」の利用をおすすめしたい。あるいは、本気でGTOの購入を考えている人も、実際の乗り味や使い勝手を試乗する機会として活用してみてはいかがだろうか。