ランエボⅨとランエボⅨ MR その違いは何なのか。バージョンやグレードが沢山あり、その差を理解することはマニアであっても難しい。そこでこの記事では、ランエボⅨとⅨ MRは何が異なるのか。ランエボⅨのドライビングフィールの魅力はどこにあるのか。その点をなるべくわかりやすく説明していきたいと思う。
ランエボ9 MRとは
“MR”とはMitsubishi Racing”の略。
長年進化を続けたランサーエボリューションの第3世代の最終版でもあるのが、ランエボⅨ MRである。
ランエボⅩには長年搭載されてきた4G63エンジンは搭載されていないため、長年ランエボの心臓部として君臨し、進化を続けてきた4G63が搭載されたラストモデルなのである。
ランエボ9 と”MR”の違いとは
MIVECの進化
4G63の最終進化型が搭載されるのが、このランエボⅨである。4G63とランエボのパートナーとしての歴史は古く、1992年9月に登場した初代ランエボから14年もパートナーを続けてきたのだ。
ランエボⅨからは、MIVECという可変バルブタイミングリフト機構が搭載された。
HONDAや日産、トヨタなど各国産メーカーが燃費と高出力化を両立するために、数々のシステムを開発してきたが、そのうちの一つがこのMIVECなのだ。
可変バルブタイミングシステムとは、エンジンの回転数にあわせて給排気の空気量を最適化し燃焼効率を最適化するシステムだ。低回転の時はバルブの開く間隔を短くし、高回転の時はバルブの開く間隔を長くすることで、あらゆる回転数において効率よくパワーを発揮できる。
MRではⅨから4G63に搭載された技術の制御を最適化したのだ。
レスポンス重視のタービン進化
また、ターボにも手が加えられている。ランエボのタービンはモデルごとに様々な改良を加えられてきた。各世代ごとに翼の素材や、翼断面形状などが改良されている。
MITSUBISHIの探求はとどまるところを知らない。このⅨ MRにも改良を加えたのだから。
具体的な変更点はタービンホイールをチタンアルミ合金化したのだ。
チタンアルミ合金タービンホイールとアルミ合金コンプレッサーホイールの組み合わせを採用し、この変更にともないコンプレッサーホイール入口径もわずかに縮小された。
経が細くなることでターボの翼を回すのに必要な排気が減り低中速のレスポンスアップが狙いだ。
意のままに操れるハイパワー
このレスポンスアップによりリニアなパワーコントロールが可能となっている。最高出力、最大トルクこそランエボⅨと変更はないが(280ps/40.8kgm)、このコントローラブルなエンジン特性というのは、実際にサーキットやワインディングを走ると、車とドライバーの一体感を高め、ドライビングプレジャーへと繋がる部分だ。
またアクセルオフ時のエンジン回転数の下がり方のレスポンスもいいので、アクセルオフによる荷重移動のコントロールがし易いのも良い。
フィーリングが進化したAYC
ドライバーの運転を楽しくさせてくれる要素は、エンジンだけではない。
それはスーパーAYCの進化だ。ランエボⅨMRの開発目標は「オンロードでのスポーツドライビングの進化にあります」と言われている。
熟成の領域に達したMITSUBISHIの四駆システムであるAYCは駆動力最大移動量が約10%もアップした。
さらにACDの仕様変更も行っているので、いままでのランエボにはなかったナチュラルな旋回運動がおこなるのだ。
これは”運転”が好きなドライバーにとって、大きな魅力だと思う。
いままでのランエボのスーパーAYCといえばどうしても、「機械に曲げていただいてる」「自分のドライビングテクニック以上に車が曲がってくれる」という有り難さがあるが、自分が操っているという感覚が足りなかった。
そういった車とドライバーのコミュニケーションがしっかりととれるようになったのが、タイムには現れない大きな魅力なのではないかとおもう。
このようにランエボⅨMRは最終熟成形に相応しい、スペックには現れないフィーリングまでも追求したモデルなのだ。
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ランエボ9のフィーリング
ランエボ9にのって驚くことは2つある。1つ目は圧倒的なトルク感、2つ目はトラクション、3つ目は軽量高剛性ボディ。
圧倒的なトルク感
まず1つ目のランエボのトルク感はシリーズ共通でとても高い。その理由はいくつかある。
2リッターでありながらトルク40キロを超えるパワーだ。歴代モデルから2リッターモデルとは思えないトルクがあったのだが、このランエボ9ではピークトルクが2キロ以上向上していることと、タービンが改良されたことにより、低回転域や中回転域から高回転域にかけてのピックアップが良いのだ。
これにより、低回転域から高回転域までとガンガンと加速をしていく、このピックアップよく高回転までまわり、尚且つ低回転域からパワーがでているというのがこのエボのエンジンの魅力だ。
次はギア比だ。ランエボ9のおギア比はとてもクロスに設定されている。基本的にはクロスに設定するとトルクバンドを維持しやすくなる一方で燃費は悪くなる。しかし、ランエボはWRCやグループAでの勝利を目的に生まれてきたモデル。
特にランエボ9はギア比が煮詰められており、先程述べたエンジンのトルクをしっかり余すところ無く使えるようになっている。
トラクションの良さ
2つ目はトラクションの良さだ。スーパーAYCなど曲がる部分に着目されがちなランエボであるが、この車は加速時やコーナー立ち上がりのトラクションがとても良い。
MITSUBISHI独自の四駆システムによってコントロールされたデフにより、エンジンが生み出す強烈なトルクを余すところなく路面に伝えてスピードに変換できるのがランエボの速さに影響を与えている。
軽量高剛性ボディ
3つ目は、軽量高剛性なボディだ。剛性を上げることはコーナリング性能やトラクションの向上に繋がるが、一方で車重増加にも繋がってしまう。
レースでのタイム短縮において重量は大きなデメリットとなる。ランエボはボディー本体へのボディ補強箇所は重量増を嫌いトライアンドエラーを踏まえて、効率的な箇所にのみボディ補強を実施している。
特にこの車に乗って感じるのは、足回りの剛性を重点的に強化していることだ。
サブフレームの剛性を上げ、足回りを構成するアームなどのパーツを鍛造化するなどして、軽量でありながら、地面からの入力によってサスペンションのジオメトリー変化が起きないようにしてある。
そのためサーキットのような足回りへの入力が少ない環境だけではなく、ラリーのような環境でも、安定して速くはしれるように出来ているのだ。
峠最速はランエボという声をよく聞くが、実際にハイパワー、軽量、高剛性に四駆システムが加わっているのだから、ストリートのような環境においてランエボが速いのは納得だ。
ランエボ9はMITSUBISHIが自社の技術を惜しげもなく注ぎ込み、絶対的な速さを得るためにあらゆる手段を講じた車だろう。
現代においてはトルクベクタリングやスタビリティコントロールなどが当たり前になってきたが、いまより20年以上前からこれらの技術を開発し、レースで実績を残していたMITSUBISHIの先見性が光る車だ。
平成時代には数々の国産スポーツカーの名車が誕生したが、このランエボは異色ながらも極めて合理的なアプローチで速さを求めた車だろう。
まとめ
4G63を搭載したランエボの集大成ともいえるモデルが、ランエボⅨである。このモデルには速さという絶対的なゴールを追求してMITSUBISHIが追求してきた答えが詰まっている。
数々のモデルをとおして年次改良を繰り返していった。これほどまで短いスパンで沢山のネーミングを与えられたスポーツカーというのも極めて珍しい。
実際にランエボに乗ると、このモデル名の差は決してブランディングや売るための道具ではなく、愚直に速さを求めた結果ということがわかる。
現在は値段が高騰してしまいなかなか乗るのが難しいが、おもしろレンタカーではランエボの数々のモデルを貸し出している。
2世代目と3世代目の乗り比べなど、既にランエボオーナーの方でも様々な楽しみ方が可能だ。
「一度は憧れのエボに乗ってみたい」、そういった方は是非おもしろレンタカーのサイトを覗いてみて欲しい。そして夢を夢で終わらせるのではなく、実際にステアリングを握って全力で運転を楽しんで欲しい。