トミマキの魅力とは?他のエボ6とはどのように違うのかについて解説

「トミマキ」とは「ランサー・エボリューションⅥ トミ・マキネン・エディション」の略称である。頭文字を取って「TME」や、エボⅥの派生モデルということで「6.5」と呼ばれることがある。

1999年にWRCのドライバーズタイトル4連覇を記録したことを記念して「ランサー・エボリューションⅥ」をベースにさらなるモディファイが加えられた特別仕様車。

Ⅰ〜Ⅹまで10代にわたる「ランエボ」の歴史の中でも、ラリードライバーの名が付いた特別仕様車はこの「トミマキ」のみである。

余談だが、WRCでは「ランエボⅣ」による4冠で頂点を極めた翌年、この「トミマキ」ベースのマシン+「トミ・マキネン」の組み合わせで参戦したが、FIAのオトナの事情などの圧もあって、5連覇は叶わなかった。

ここでは、その「ランサー・エボリューションⅥ トミ・マキネン・エディション」について、ベースの「ランエボⅥ」や他の車種とどう違うのかにスポットを当てて掘り下げてみよう。

トミマキの概要

「トミマキ」の発売は2000年。前年に「トミ・マキネン」が駆る「ランサー・エボリューションⅥ」ベースのWRCクループAマシンで1996年からのドライバーズタイトルを4年連続で獲得。

その偉業を記念して、「ランエボⅥ」をベースとした特別仕様車を製作・販売した。

発売されたモデルのグレードは公道仕様の「GSR」と競技向け仕様の「RS」の2タイプが設定されていた。

特に「RS」ではラリーでの戦いを意識したオプションパーツの設定があり、当時他メーカーがWRカーの投入で戦闘力を高めていた状況に対する本気の対策という側面が垣間見える。

トミマキの具体的な変更点

走行性能に関わる変更点(エクステリア除く)

普通は特別仕様車でエンジン関係にまで変更を加えることはしないが、この「トミマキ」ではターボチャージャーにまでモディファイが加えられている。

「ランエボⅥ」のターボチャージャーに対して、コンプレッサー側のホイールを小径化&翼断面改良で充填効率が変更されている。これにより、トラクションのコントロールに効く中低速トルクの増強が果たされた。

この新型“ハイレスポンス・チタン/アルミ”ターボチャージャーは「GSR」では標準搭載。標準でチタンホイール仕様のターボチャージャーが設定される「RS」ではオプションで設定された。

エンジンスペックにはほぼ変化は無いものの、ターボチャージャーを変更すればエンジンのマネジメントプログラムにまで変更範囲が及ぶため、この変更を市販車に盛り込むには多くの部署を動かさなくてはならず、かなりのコストが掛かる。

この1点だけ見ても三菱の本気度が窺える。

他に動力性能に関わる部分としてはマフラーが少し大径化され、出口形状も真円タイプに変更された。

足まわりは、ターマック(舗装路)での走りを得意とする「トミ・マキネン」に合わせてセッティングが変更された。

グリップの強いターマック路面に照準を寄せ、車高を10mm下げて挙動安定を図っている(これも「RS」ではオプション設定。標準は足の長いグラベル仕様)。

また、前サスペンション周りの剛性アップに効くストラットタワーバーを装備。

ステアリングは「RS」のみの設定だったクイック・レシオ仕様が「GSR」にも採用された。

厚みが増した低中速トルクや安定感の増した足まわりを活かして、ラリーはもちろんのこと、ジムカーナやショートサーキットなどでも各部の変更点の恩恵が発揮されたことだろう。

エクステリアの変更点

外観では、下部が大きく張り出した印象のフロントバンパーが最もイメージを変えている。

「Ⅵ」の段階では開口部の考えを冷却性能の向上に振って作られていたが、この「トミマキ」ではフォグランプを廃してカナード形状を意識したデザインを採用。中高速度域での空力安定性を改善する形状に仕上がっている。

個人的には社外のエアロバンパーが装着されているかのような雰囲気に感じられた。

またホイールは、WRCのターマック・ステージで使われている競技専用ホイールのレプリカとなる10本スポークのモデルを装着している。競技用、市販版ともにENKEI社製で、色はホワイトのみ。

ボディカラーは、ワークスマシンのイメージであるパッションレッドのほか、スコーティアホワイト/サテライトシルバー/ピレネーブラック/カナルブルーという6色展開。

パッションレッドの車両にのみ、WRCストライブ/RALLIARTステッカー/スリーダイヤMITSUBISHIステッカー/リアスポイラーアッパーウィング部のホワイトカラー化などがセットになった「スペシャルカラーリングパッケージ」が用意されていた。

インテリアの変更点

内装に関する変更点でメインとなるのは、この「トミマキ」専用に誂えられたレカロ社製フルパケットシートだろう。

シートの顔となる背が当たる面の中央上部には「T.MAKINEN EDITION」の専用ロゴが刺繍され、レッドファブリック&エクセーヌの2生地が使われた豪華な構成となっている。

もちろんこの生地使いは後席にも採用されている。

また、「ランエボⅣ」ではブルー基調の色使いだったメーター周りも、ブラック盤面に赤文字&目盛りという専用カラーが採用されている。

ステアリング自体は「ランエボⅣ」と同じMOMO社製の本革巻きステアリングだが、レッドステッチがあしらわれて、全体の赤基調の統一感が図られている。

このレッドのステッチは、シフトノブ&シフトブーツにも施されている。

トミマキといわゆる普通のランエボ6との中古車相場の差

2024年2月現在の中古車相場を見てみると、「トミマキ」の価格は400万円〜1000万円となっている。価格帯の幅が広いように思えるが、これはパッションレッドの「スペシャルカラーリングパッケージ」の車両にプレミアムが付加しているため。

おそらくは純正オプションのカラーリングパッケージが施工された車両のタマ数が少ないことと、ステッカー類が廃盤のため、今から新たにこの仕様を再現できないという希少性がその要因ではないかと思われる。

他のカラーリングについては300万円〜600万円の間で値付けがされていて、ものによっては素の「ランエボⅣ」とそう大差は無い価格に落ち着いていると言えるだろう。

変更内容を考えるとお買い得なように感じるが、スペック上に現れる違いではないせいだろうか?

現段階ではサンプルが少ないのでハッキリと断言はできないが、「トミマキ」は特別仕様車ということで比較的丁寧に乗られた個体が多いように感じる。

一方で「ランエボⅥ」の方は、(もちろんバリモノの個体もそれなりにあるが)足まわりや外装が改造された個体がそれなりに多い印象だ。そのなかの何割かはサーキットや山道などで激しく使われた可能性があるので、しっかりと吟味することが必要だと思われる。

まとめ

この後の「ランエボⅦ」以降のワークスマシンはWRカーとなっていくので、純粋にWRCのイメージのワークスマシンの性能を公道で味わえるという楽しみは、このモデルで極まり、そして最後となってしまった。

また、R34型GT-Rを筆頭に、国産のハイパフォーマンス車の中古車価格が軒並み上がっている今の状況の中では、「ランエボⅣ」と「トミマキ」の価格は比較的お求めやすい水準で留まっているように思える(「スペシャルカラーリングパッケージ」は除く)。

そう考えると、今の相場が低いうちに入手しておいた方が得策だと考えられる。購入を決める前に「その性能をちゃんと確認しておきたい」というなら、6時間〜のレンタル時間でじっくりその走りを堪能できる「おもしろレンタカー」を利用してみてはどうだろうか。

※現在のラインナップには「トミマキ」は無いが、ベースとなった「ランエボⅥ」に乗ることができるので、参考にするには充分かと思われる。