RX-8の魅力を引き出すカスタムとは

マツダ・RX-8は、2003年に発売された、スポーツカーの外観をまとった4ドアのクーペだ。北米の販売チャンネルの要望に合わせて、大人4人が問題無く長距離移動できる利便性を備えながら、マツダのスポーツモデルのカテゴリーに入れても遜色ない走行性能を備えている。

スポーツカーに見劣りしない精悍な外観、自然吸気となり高回転・高出力のロータリーエンジン、スポーツモデルと変わらない構造を持つ足まわりなど、カスタムベースとしても高いポテンシャルを有しており、実際に全盛期はカスタムパーツメーカーから多くの製品がリリースされていた。

ここではRX-8のカスタムについて少し掘り下げていこう。 

RX-8のカスタムの楽しさとは

RX-8のカスタムをおこなう楽しさは、なんと言ってもその潜在能力を自分の構想で引き出せるという、カスタム本来の醍醐味を実感できる余地が大きいところではないだろうか。

外観、エンジン、足まわりの構造と、スポーツカーを名乗っても異論は出ないであろう要素を持ちながら、最終的なセットアップは4人乗りの実用車として不満が出ないコンフォート寄りなものに仕立てられている。

そのため、スポーツ性能を引き上げたり、ルックスをスパルタンな方向に振ったりと、そのポテンシャルを引き出すモディファイを加えて愛車が“化ける”のを楽しめる幅が多く残されているとも言える。

そして、そのカスタムをおこなえる箇所は車両全体で多岐に渡るので、ツルシの社外パーツを使っても、オーナーの個性が反映され、他と被らない唯一無二の存在に仕立てることができる。

外装のカスタム

まずは、ノーマルの状態でもパッと見でRX-8と分かるくらい特徴的で、かつスポーツカー的な精悍さを備えた外観のカスタムから見ていこう。

フロントリップスポイラー

装着方法が手軽で、装着による変化が見込めることから、カスタムの入り口として人気の高いリップスポイラー。RX-8は、基本デザインがヘッドライトの下端ラインをピークにして、そこから下に向かって内に絞り込まれるシルエットになっている。

そのため、バンパーの下端に装着してアゴをせり出させるリップスポイラーの装着による印象の変化が大きく、装着の満足度が高い傾向がある。種類も色々あり、元のデザインの延長で少し迫力を増す控えめなものから、ブレーキを冷やすためのインテークを備えていたり、下面を後方に長く取ってエアロ効果を高める効果を備えた本格的なものもある。

サイドスカート

リップスポイラーの装着やフロントバンパーの変更でフロント下部にボリュームを加えた場合は、サイドの下部にもサイドスカートを加えて全体のボリュームのバランスを取るのが常套手段となる。

統一感を高めるためにフロントと同じメーカーのパーツを選ぶケースが多いが、ボリュームの調整や印象を強調する目的で、あえて違うメーカーのものを組み合わせるのも効果的だ。

リアディフューザー

RX-8のリヤデザインは、丸みを帯びた全体のフォルムに合わせて下部を内側に向けて収める形状になっている。

カスタムエアロパーツの多くは、フロントとサイドの下端を張り出させることで機能性と迫力を増す傾向のものが多いため、リヤだけ何もしないというのは少々物足りないと感じるだろう。ただ、リヤの場合は同じ手法で下端を張り出させるのは逆にバランスがチグハグになる。

RX-8は左右2本出しマフラーという構造に加えて、ちょうどこの時期にレースで流行りだしたディフューザーの影響で、それを意識したリヤバンパー、またはディフューザー状の追加パーツが多くリリースされていた。中には、リヤバンパー下部の風の巻き込みを軽減させるものもあるので、実効性も期待できる。

リアスポイラーなど

高速走行が多いケースや、速度が乗るサーキットでの走行が多い場合は、安定性を高めるために、リヤのトランク後部にスポイラーやウイングを追加するのが効果的だ。

空力性能の改善はもちろんだが、外観の機能性や迫力が大幅に向上できるのでモディファイの満足感は高い。

ただ、下部に装着するスポイラー類と比べると、目線に近い目立つ部分ということもあり、「いかにもカスタムしています」的なアピール過多に見られる可能性もある。ウイングタイプはその傾向が強いのでしっかりと意識をしておきたい。

足回りのカスタム

前述のように、イメージよりもかなりコンフォート寄りのセットアップがされている足まわりは、多くのカスタム嗜好のユーザーが手を加えたくなるポイントとなっている。

そのため多くの製品がリリースされているので、目的に合わせて選択が可能だ。

サスペンション

乗り味を変えたい場合は、まずスプリングの変更を行うのがセオリー。柔らかい乗り味の車両には、少しの荷重でも多めに動くソフトなスプリングがセットされていることがほとんどだ。

そのため、スポーツカーらしくしっかりとした乗り味にする場合は、荷重による変化の少ない高レートのスプリングに交換することになる。ここで注意したいのは、純正のダンパーユニットの構造では同型状のスプリングしか対応していないという点。

メーカー系のマツダスピードなどからリリースされているが、レートの変化は控えめに設定されているので、大きく変化させたい場合は選択肢がほぼ無い。その場合は、ダンパーユニットごと置き換える“車高調”タイプを選ぶことになる。

コストは大きく増えるが、バネレートの変更に合わせたセットアップが行え、車高も変更できるので、走行性能だけでなく外観のカスタムにも大きく貢献する。 

ブレーキ

RX-8は、4名乗車をしっかり踏まえた設計で車重もやや大きめのため、制動力についてはスポーツカーに引けを取らない容量のものが装備されている。そのため、高速走行や山道を少し攻めたい場合でも受け止めるポテンシャルを持っているが、山道を激しく攻める場合やサーキットを本格的に走行するような場合は流石に不足が出てくる。

その場合は、まずブレーキパッドが音を上げるので、競技用の高温対応タイプに交換する。もっと本格的な走りを視野に入れる場合は、大径ディスクや大容量キャリパーへ交換するなど、コントロール性を高めるために制動力の容量を増すメニューが必要になってくる。

エンジンのカスタム

RX-8は、ノーマルで250psを8,500rpmで発生させる自然吸気の高回転型「13B-MSP型」2ローター・エンジンを搭載している。スペックを見る限り、スポーツカーと見劣りしない動力性能を備えているので、街乗り主体では大きな不満は出ないだろう。

とは言え、一度カスタム魂に火が入ってしまうと、エンジンにも手を入れたくなってしまうのは自然な心理だ。RX-8用としては、実用性を損なわない範囲の軽めのものからフルチューンまで多くのメニューが用意されていた。

吸気系

エンジンの特性をモディファイするときに、気軽にできる入門編としてまず行うであろうメニューが吸気系の変更だろう。純正形状で手軽に交換できるタイプは、ボックスをそのまま使うので、純正と同じ感覚でイージーに使えるのが魅力だが、性能の変化はほぼ望めない。

キノコ型と呼ばれるパワーフィルター・タイプは、吸入抵抗が大幅に軽減される事に加えて吸気音が増すので雰囲気が向上し、エンジンルームの印象もガラッと変えられるので交換の効果は高い。しかし、フィルターがむき出しになるので、扱いはシビアになる点は考慮に入れておきたい。

排気系

排気系のカスタム=マフラーの交換は、排気の音質と音量を変えられるため、運転しているときの雰囲気を向上させることに効果が大きく、人気の高いメニューだ。

その雰囲気の向上に加えて、周囲へのカスタムアピールも無視できないポイントになるだろう。その場合は、アピールに意識を向けるあまり音量を大きくし過ぎないように注意したい。

単体の変更では性能向上に繋がらないケースも少なくないが、吸気、排気、ECUのリセッティングとトータルでカスタムすることで、体感できるレベルの性能向上が見込めるだろう。

点火系

レシプロエンジンとは構造と作動方式が全く異なるロータリーエンジンだが、混合気への着火の考えは変わらない。適切なタイミングで充分な火花を飛ばせば良い。ただし、ロータリーの場合はその構造上、燃焼室形状が細長いという特徴があり、レシプロエンジンと同じ一点の点火では火炎の伝播が均一になりにくい。

そのためにツインプラグ仕様としたり、点火時間の長いCDI方式を採用するなど、純正の状態でかなり高性能な点火システムを備えている。なので、点火システムについては強化というより、チューニング内容に合わせて点火時期の調整を行うことがメインとなるだろう。

ライトチューンの場合は、その必要は無いと言っていいだろう。ただし、本来の点火をしっかり確保することは重要なので、プラグの状態をしっかりチェックして、定期的に交換をおこなうことを意識して欲しい。

カスタムする際の注意点

ざっとカスタムの内容を紹介してみたが、ここでは、カスタムに伴う注意点をまとめてみよう。

予算設定

カスタムパーツの価格は、数万円から数十万円とかなりの幅がある。お小遣いの範囲で購入するには、それなりに決意が必要なケースになることも多いだろう。

例えば外装パーツの例で見ると、バンパーが社外品のFRP製で12万円〜、サイドステップが7万円〜、リヤバンパーが10万円〜、リヤウイングが8万円〜といったところ。フルで装着するとパーツ代だけで40万円弱となり、そこに塗装代と取付工賃が加わるので、60万円〜という感じだろう。

中古で入手すれば半値以下で揃えることが可能だが、塗装代は別途必要になる。とは言え、全て一度に揃える必要は無いので、予算に応じて分割すれば負担を少なくできる。

法規制への対応

クルマをカスタムする際は、保安基準に沿っているかどうかという点も重要になる。もし、保安基準に適合していないと車検を通すことができないので、始めから装着してあったパーツについても車検前には適合かどうかの確認はしておくべきだろう。

マフラーやホイール、外装パーツに関する保安基準は不定期に変更されているので、昔は適合だったものも今はNGという場合、逆に昔はダメだった項目が今は大丈夫、というケースもあるので注意してほしい。

メンテナンス性の変化

純正以外のパーツを装着する場合、メンテナンス性に対する影響が多少なりとも発生する。極端な例を挙げると、車高調ダンパーで車高を大幅に下げて、純正より大径のホイールを装着している場合、組み合わせによってはホイールの脱着が困難になるケースもある。

マフラーの脱着も、場合によっては一人では難しくなる製品もあったりする。そこまでのレベルではなくても、不意のトラブルでディーラーなどに持ち込んだ際に、パーツの脱着に責任が持てないと、作業を断られるケースもある。

カスタムをする時は、それらの点を覚悟する必要があるということを頭に入れて行って欲しい。