RX-7 FD3Sについて徹底解説

マツダを代表する戦闘機を挙げよというお題に対し、人により意見は分かれると思うが、その選択肢の中に必ず入るのは3代目RX-7のFD3S型だろう。
メーカー自主規制280psの範囲内で熾烈な競争がおこなわれていた時代のマツダの切り札的存在のモデルだ。
今でも根強い人気を誇るこのモデルの魅力を掘り下げてみよう。

RX-7はどんなクルマ?

マツダ・RX-7といえば、国産車で唯一のロータリーエンジンを搭載したスポーツモデルで、マツダのスポーツ系のフラッグシップであり、イメージリーダーでもある。

FD3S型RX-7は、ロータリーエンジンを搭載するスポーツモデルRX-7シリーズの3代目にあたるモデルだ。

モーターのように回ると評判の、コンパクトながらハイパワーな2ローターのターボエンジンを搭載。

そのコンパクトさを活かして車体の中心寄りに搭載することで、スポーツモデルとして理想的な前後重量配分50:50を実現。

1400㎏未満の軽量な車重と、マツダ独自のサスペンション設計によって仕上げられたハンドリングは、その当時のライバル車の中でも群を抜いて切れ味が良く軽快だと評された。
また、その流麗でスピード感を印象づけるデザインも、高い人気の要因だろう。
当時は美術品という表現をするメディアもあったほどだった。

RX-7の歴史(別で歴代の記事を作成するので簡単に説明)

マツダ・RX-7は、初代のSA22C型(1978年発売)を初代とするシリーズ。
先代はマツダのスポーツ系ラインナップのサバンナ・シリーズとして開発されたサバンナで、輸出名のRX-3と呼ばれることが多いモデル。
初代のSA22Cは「サバンナRX-7」という名称で発売されていた。
エンジンはFD3S型にも続く2ローターで、後期型ではターボ化された。
外観もリトラクタブルヘッドライトを備えた先鋭的なもので、インパクトを持って市場に受け入れられた。
2代目のFC3S型(1985年発売)は先代のイメージを受け継ぎながら、性能、機能、装備のあらゆる面で向上が図られ、マツダを代表するスポーツモデルとして相応しい格を備えた。
また、伝統の軽量・ハイパワーな特性を活かしたハンドリングは日本の山道にマッチしており、当時盛んだった走り屋に支持されたほか、レースでも活躍を見せた。
その後1991年にFD3S型にバトンタッチ。
当初はアンフィニブランドから発売され、車名も「アンフィニRX-7」となっていたが、1996年以降はマツダに戻された。
実質RX-7の名を冠したモデルはこの代で最後となっている。

FD3Sの詳細

エンジン、外観、乗り味とすべての面で独特の個性を主張するFD3S型RX-7の各部について、詳しく見ていこう。

エクステリア

FD3S型RX-7のエクステリアデザインは、当時のスポーツ系ライバル車の中ではひときわ優美なフォルムを持っていた。
デザイナーのインタビューでは、「後年になっても賞賛を受けるジャガーEタイプのように、発売後50年経っても讃えられるデザインを目指した」と語られていた。
初代から続くリトラクタブルヘッドライトや、ドアハンドルをボディ面から除くなどの手法には、理想的なフォルムに対するこだわりが強く感じられる。
当時、「ロータリーは好きじゃないけどデザインはダントツに好き」という意見もよく聞かれた。

インテリア

FD3S型RX-7のコクピットは、フォーミュラマシンを連想させる包まれ感が特徴。
全体を俯瞰すると前側2座のオーソドックスな構成にも見えるが、ドライバーに向けてほとんどの計器やスイッチなどの構成物を集中させるレイアウトにより、運転席に座るとまるで1座のレーシングカーに乗っているかのような印象を受ける。
また、意図してタイト感を強調させたこともその印象を強調している。
限定版として2シーターモデルもラインナップされていた。

エンジンとパワートレイン

RX-7シリーズの魂と言えるエンジンは、初代から続く2ローターのユニットを搭載する。
エンジン形式は「13B-REW型」で、排気量は654ccを2枚重ねた1308cc。これは初代の後期に加えられた13B型から変わっていない。
13B-REW型エンジンは圧縮比9:1の2ローターユニットに、マツダ独自のシーケンシャルツインターボを装着したもの。
初期型は255 PS / 6,500 rpmだったが、最終的には馬力規制いっぱいの280 PS / 6,500 rpmを発揮するに至っている。
パワーもさることながら、スムーズに、かつ高回転域に向けて吸い込まれるように回っていく回転フィーリングが最大の魅力。
この時期は各社によるパワー競争の真っ只中で、マツダとしても市販エンジン自体の技術レベルが向上したのに加え、ル・マン24時間レースで優勝を果たしたことや、在野のチューニングメーカーの開発力向上も加わり、ロータリーエンジンの技術的にはひとつのピークを迎えていたと言って過言ではないだろう。

走行性能

ロータリーエンジンの軽量コンパクトさを活かして設計された、独自理論による軽量性と高剛性を両立したスペースフレームを基軸に、理想的な前後重量配分に仕立てられたバランスの良いシャーシにより、ハンドリングはライバル車たちに頭ひとつ抜きん出ているとの評価が高かった。
車重は1240〜1330 kgと当時のハイパワースポーツ車の中でも抜きん出て軽量で、同じ軽量性を売りにしていたホンダ・NSXよりもさらに数十㎏上回っていた。
足まわりの構成にも抜かりなく、素性の良い前後ダブルウイッシュボーン式を採用。アーム類はアルミを採用するなど軽量化にもこだわっている。

RX-7の中古車市場動向

今でもマツダのハイパフォーマンス車代表として名前が挙がり、根強い人気を誇るFD3S型RX-7の中古車相場についても見ていこう。

中古車相場の推移

FD3S型RX-7の中古車相場価格は現在も高い値を維持しているようだ。
10年前時点で徐々に上昇傾向にあり、2020年に入ってから急激な上昇カーブを描いている。
現在の価格レンジは320万〜1500万円と広いが、1000万円オーバーは2シーターモデルなどの限定車のプレミア付加のようなので、中心的なレンジは600万円台までと考えて良いだろう。
その中でも多いのは400〜500万円となっているようだ。

人気の型

グレードや年式で見てみると、グレードではタイプRSやRB、年式では4型や5型が多い印象を受けるが、他もほぼ同一線上にあると言って良いような状況。
グレードや年式よりも、車両本体の状態が価格に大きく作用しているように感じる。
最終モデルの限定車「タイプRバサーストR」、「タイプRバサースト」「スピリットR(3種)」は特に注目度が高く、程度の良い1オーナー車などは1千万を超える価格が付く物もあるようだ。

RX-7のライバル車との比較

当時は雑誌などでも他社のライバル車との比較記事も多く見られた。
主な車種をいくつかピックアップして比較してみよう。

日産・スカイラインGT-R(R32型)

R32型GT-Rは、当時のハイパワースポーツ車の代表と言える車種なので、多くのライバル車との比較がおこなわれていた。
RX-7とは同じクラスの最高出力ではあったが、エンジンはまったく異なるロータリーエンジンで、駆動方式も異なり、車重も100㎏以上軽量なため、正直同じステージでの比較は難しいと感じる。
例えば峠道では、ゆるいカーブの登りではGT-R、タイトなカーブの下りではRX-7が優位という表現はできる。
中古車価格はGT-Rが圧倒的に高い。

トヨタ・スープラ(JZA80型)

同じFR方式で流麗なボディを持つハイパワースポーツ車同士ということで、こちらもよく比較されていた。
スープラもハンドリングにこだわって設計されたということで、テクニカルなサーキットでの比較がおこなわれていたが、まず重量が100㎏近く異なるので、ボクシングでいえば階級が異なるくらいの違いがある。
スープラはドラッグレース、RX-7は周回サーキットといった感じだろうか。
こちらも中古車価格はスープラが上回る。

マツダ・ロードスター(NA型)

ハンドリングマシンとして同じメーカーながら比較に挙がることもあったNA型のユーノス(マツダ)・ロードスター。
こちらはボディサイズからして大きく異なり、ボディタイプもオープンで、車重もエンジンの出力もまるで同じステージにはいないので、比較するのはナンセンスに感じるレベル。
フルサイズのサーキットはRX-7で、ミニサーキットやジムカーナではロードスターという分類が妥当だろうか。
価格は圧倒的にロードスターが低い。

RX-7はどんな人におすすめか?

さて、そんな独特の個性と魅力を持つFD3S型RX-7だが、どんな人にオススメできるだろうか?
まずはデザインを優位に感じている人だろう。
FD3S型RX-7は、今の時点でもすでに国産車で上位に入る良いデザインとして認められているので、今後もこの評価は変わらないと思われる。
実際にミーティングなどでも注目度は高い。
そしてロータリーエンジンに魅力を感じる人。
その中でも動力性能の高さに重きを置く人は、RX-7シリーズではこのFD3S型でほぼ決まりだろう。
エンジンのチューニングに興味がある人もFD3S型を勧めたい。
あとは、維持が大変でも大丈夫だという人。
FD3S型RX-7は維持をするのがそれなりに大変なクルマだ。
まず燃費はワーストレベルを覚悟しないとならないので燃料代はかなりかさむ。
オイルを含む消耗品のコストも高めだし、修理の際の部品の調達も難しくなってきている。
頼れる専門店の確保が重要な車種のひとつかもしれない。
しかしそれを差し置いてでも魅力を感じ、思うさま乗り回したいというならば、ぜひ一度、その独特の乗り味を体験して欲しい。

購入の前には、手軽にレンタルして乗り味などを確認できる「おもしろレンタカー」がオススメだ。