「人馬一体」をコンセプトに後輪駆動、自然吸気、オープンカーと走る楽しさを追求し続け1989年から現在まで34年もの間、販売されており、二人乗り小型オープンカーとしての生産累計台数世界一を誇る、マツダ ロードスター。
NA型から始まり現在ではND型まで販売されており、長い間販売しているだけあってモデルは様々。
他社も小型オープンカーを販売するも、利便性の低さもあり他社が販売を中止していく中、今も根強い人気を誇る。
そんなロードスターについて、歴史とモデル別の特徴について解説する。
株式会社Carkichi 代表取締役 。慶應義塾大学卒業後メガベンチャーに就職、新規事業の立ち上げを行う。車好きがこうじて「クルマ好きを増やしたい」という思いで独立、その後自動車業界に特化した映像制作やマーケティング支援を行うCarkichiを2020年9月法人化。 自動車メディア「旧車王ちゃんねる」「外車王SOKEN」などへ出演、寄稿中。趣味はカート、愛車はE55AMG。
小型オープンカー氷河期に現れた初代ロードスター
1989年のバブル真っ只中、スポーツカーは絶大な人気を誇っていました。しかし、小型で二人乗りのオープンカー市場は冷え切っており、スカイラインGT-RやNSXと言った、高性能でハイパワーな車が市場に多く出回っていた。
そんなところに現れたのが初代ロードスター。
1.6L、120馬力と他の車に比べ圧倒的に小さな排気量ではあるものの、1トンを切る軽量ボディ、前後重量は50:50、と走る楽しさを追求し要らないものを削ぎ落とした物となっている。 また、ロードスターから「パワープラントフレーム」通称”PPF”が採用された。
これは、ミッションからリアデフまでをアルミ製のフレームで繋げることで駆動部の捩れを抑え、ダイレクトな操作感を実現している。PPFは改良されつつ現行のロードスターにも搭載されており、他にもFD型のRX-7、RX-8にも採用されていた。
1993年7月頃、マイナーチェンジが行われて、1.6Lから1.8Lへ、パワーは120馬力から130馬力へアップした。
フルモデルチェンジと遂げた2代目
1998年にフルモデルチェンジを遂げ、NB型に進化したロードスター。
車格、重量共に大きな変化は無く、デザインはNA型ロードスターのデザインを踏襲しつつ、リトラクタブルヘッドライトから固定式へと変化した。フレームはNA型のロードスターのフレームを改良したものとなっており、エンジンは1.6Lと1.8Lの2グレード存在し、1.8Lモデルは6MT装備となっていた。
フレームは改良型、エンジンも同じものを使っていたこともあり、カスタムパーツもNA型用の部品が一部使用可能でチューニングショップとしても喜ぶ点が多かった。
他にもクーペモデルやターボモデル、ロードスターのみのワンメイクレース「ロードスター・パーティーレース」なども始まったこともありパーティーレース専用モデルNR-Aなども発売されたこともあり、人気は増えていった。
私が感じたNBロードスターの1番の魅力はハンドリングだ。NAのマイナーチェンジと思われがちなNBだが、運転してみるとハンドリングがとても良くNAから大幅な進化を果たしていることが分かる。なんとNBロードスターは2003年にイギリスのAUTOCAR誌でベストハンドリングカーに選ばれているのだ。しかも、最後まで選考を争った相手は、Porscheのフラグシップモデルの中でも最上位グレードに該当する911GT3(996型)である。
日本のライトウェイトスポーツカーのハンドリングが、ロータスやケータハムを始めとするライトウェイトスポーツカーを沢山産んできたイギリスの地で評価されたのだ。
NBは車の基本設計自体はNAから踏襲されているのだが、ボディ補強と足回りの補強が素晴らしい。ライトウェイトスポーツカーの軽快なフィーリングを残しながらも、タイヤからのインフォメーションがステアリングを通して手をとるように分かる扱いやすさと安心感があるドライビングフィールを獲得している。まさにMAZDAがドライバーに知ってほしかった人馬一体の感覚はNAとNBの二世代かけて完成したといっても過言ではない。
大きくなった3代目ロードスター
3代目NC型が発売され始めたのは、2005年のこと。NC型では同時期に発売されていたRX-8と同じプラットフォームを使用している。先代に比べてホイールベース、全幅が大きく変更されており、全幅に関しては1700mmを超えた為、ロードスター初の3ナンバーとなっている。
エンジンは2Lと大きなものに変更されており、アテンザやアクセラのエンジンをベースにロードスターに搭載できるよう変更されたエンジンとなっている。
2005年〜2006年頃のNC型はNA型から使っているソフトトップを使用しているが欧州各社が電動のハードトップを採用していたため、流れに乗るべく2006年8月頃、電動のハードトップモデルが発売された。
この電動ハードトップ、約12秒で開閉を実現しており、なんと、世界最速の開閉速度を実現している。
NCロードスターの1番の魅力はパワーだ。歴代モデルで唯一の2Lエンジン(ハードトップのRFや海外モデルを除く)は170馬力を発生させる。これはNDに比べて40馬力も高い。その引き換えに大型化したかわりに増えてしまった約100キロの車重増を大きく上回るパワーだ。(パワーウェイトレシオは、NC:6.47kg/PS、ND:7.62kg/PS)NCロードスターは歴代ロードスターより頭一つ出た加速性能を持っているのが特徴だ。実際にサーキットのタイムなどを比較しても、NCは歴代モデルで1番速い。
そのため、ライバルとなる相手は同じライトウェイトなボディに2Lエンジンを積むトヨタ86(ZN6)などの一つ上のクラスとなる。
原点回帰、新型ロードスター。
4代目、ND型になったのは2014年。
2010年ごろからマツダは魂動 – soul of motion というデザイン哲学を掲げ車両デザインしており、そのうちの一台となっている。エンジンは1.5Lと今までで一番小さい排気量でありながら、軽量化を重ね、NA、NB型と遜色ない重量を叩き出すことでパワー不足を感じさせない仕上がりになっている。
以前同様、PPFや自然吸気といったNAの頃から続く伝統を引き継いでおり、見た目から走りまで一貫した設計となっている。
また、2016年12月頃からNC型同様、電動ハードトップモデルも発売され、こちらは2Lのエンジンを搭載している。
私がNDロードスターの1番の魅力に感じる点はトータルバランスの高さだ。
具体的には安全性、メンテナンス性、デザイン性を兼ね備えながら、ロードスターの最も大きな魅力である軽さを守り抜いているのだ。NAやNBロードスターも1トン切りをしているが、NDロードスターは現在の安全基準をクリアしながら平成初期のような軽い車重をキープしているのだ。これはとてもスゴいである。
また、NBであっても約20年が経ちメンテナンスの必要性が増えてきている。もちろんMAZDAは部品の再販などもおこなってくれているが、NDに比べるとメンテナンスが大変だ。車に長く乗ろうとすると維持メンテナンスのしやすさは重要な観点だ。この点は最新モデルであるNDロードスターに大きく軍配が上がる。
もちろんロードスターを名乗る以上ハンドリングも文句なしだ。ドライバーのアクセル操作、ハンドル操作に対して車が素直に応答する気持ちよさは歴代ロードスターからしっかりと受け継がれている。
総括
これが世界一売れた小型オープンカー、ロードスターである。FR、自然吸気、軽量、PPFの採用、などスポーツカーの流行り廃りをもろともせず、走る楽しさ、初代で掲げた「人馬一体」を一貫して伝えようとしている車はどこを探してもそう多くないだろう。
おしゃれな車で街中を優雅に流したい、モータースポーツを始めたい、イカすカスタムをしたい。そんなオールマイティな一台。
自分好みの正式、自分好みの楽しみ方を探して色々なロードスターに触れてみたいものだ。