EK9、すなわちシビックタイプRシビックは、シビックの名が付くタイプRの中で初めてのモデルである。このEK9は、販売から20年以上経った現在でも、クルマ好きにとっては伝説的な1台と言えるほどの熱狂的なファンを持つ名車である。この記事では、そのEK9がどうして熱狂的なファンを生み出すのか、その理由や速さの秘密に迫る。
EK9の概要
EK9は、1999年にホンダから発表されたシビックタイプRである。初代シビックタイプRとなるこのEK9の最大の特徴は「安くて速い」ということである。
手が届きやすい価格設定でありながら、先に1.8LのDC2型インテグラタイプRと同等か、それに近い性能を目指して作られた。
具体的には筑波サーキットのタイムを基準に設定し、EK9がどうすればDC2の1秒以内のタイムを狙えるのか。その目標を達成できるかを念頭に置いて開発された。
このEK9には、ホンダの代名詞ともいえるVTECが搭載されており、究極ともいえるB16Bエンジンが積まれている。
このエンジンの特徴は、とても気持ちの良いレスポンスで超高回転の8400回転までスムーズに回ることであり、そんな現代のターボエンジンでは実現できない特別なNAエンジンを持つEK9の魅力をこの記事で語りたい。
EK9のスペック
EK9のスペックは以下の通りである。ライバルであったDC2との対比をしながら見ると、EK9はエンジンが1600CCであり、DC2よりも全長が短いにも関わらず、ホイールベースが長いことが特徴的である。このような特徴を持つEK9だが、なぜ速いのかについて、この後詳述する。
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速さの秘訣 1:HONDAらしさ全開のエンジン
この車の一番の特長は何と言ってもエンジンである。この車に搭載されている心臓部は、B16BというホンダのNAエンジンの中でも特に評価の高い名機である。このエンジンは非常にハイパワーであり、リッターあたりの馬力が100馬力を超えている。
HONDAの専売特許であるVTECが搭載されているため、ピークのパワーが高いだけでなく、トルクバンドが広い。このトルクバンドの広さは、EK9の速さの重要な要因である。
通常、リッターあたり100馬力を出すようなエンジンは高級車ブランドの最上位モデルなどに搭載されることが多いが、EK9は手頃な価格でこれを実現している。F1で活躍したHONDAの技術というのが市販車にも反映されている。HONDAの熱い想いが込められたのがこのエンジンの魅力だ。
技術的にはDC2に搭載されていたB18Cをベースにしながら開発されており、通常モデルに搭載されていたB16Aとは内部の設計がことなるのだ。
B16Aは最高出力:170PS/7,800rpm、最大トルク:16.0kgf·m/7,300rpm対して、B16Bは最高出力:185PS/8,200rpm、最大トルク:16.3kgf·m/7,500rpmだ。このようにスペックもアップしている事がわかる。
具体的には、カムシャフト(バルブタイミング&リフト量)、バルブスプリング
、ピストン、コンロッド、スパークプラグ、クランクシャフト材質などこの記事では書ききれないぐらい変更点は多岐に渡るのだ。
見た目だけでいえば、ヘッドカバーの色が黒か赤かという違いだが、実際には全く素性の異なるエンジンということがわかるだろう。
逆にいえばB16Aエンジンの時点でとても完成度が高く、ここまで沢山の改良をしなければ馬力を15馬力アップすることができなかったのだ。
HONDAは一般人が利用する大衆車であっても一切妥協せずに、ハイクオリティなエンジンを作っていたことがよく分かる。
シビックタイプRと言えば、その中でも特に人気を誇るのがEK9とFD2である。これらは同じNAエンジンを搭載しているものの、性質にはかなりの違いがある。この記事では、それらの違いについて詳細に解説する。 EK9の概要とカタログ[…]
速さの秘訣 その2:軽さ
理由は、軽さにもある。EK9の車重は非常に軽量で、現代のスポーツカーと比べても非常に軽い。モータースポーツ用のベース車両では市販状態で1040キロと非常に軽い。また快適装備が装着されたモデルでも1070キロとボディサイズを考えると極めて軽いことがわかる。現代の車では小さくて軽そうなイメージがあるミニクーパーであっても1200キロを超えていることを考えると驚異的な軽さであることが分かるだろう。
この軽さがEK9の大きな武器となっている。車重が軽いため、加速が速くなり、ブレーキの制動能力も上がる。さらにタイヤへの負担が少ないため、タイヤの磨耗も遅く、ブレーキのフェードも少ない。カタログスペックではわからないだろうが、この軽さというのは実際の走りにおいては最も重要な要素だ。特にサーキットでタイムを争う場面では、この軽さが大きな強みとなっている。
なぜなら、先程加えた要素に加えて、コーナーを曲がるときにはタイヤに大きく負担が掛かる。車はタイヤのグリップ力の限界を大きく超えて曲がることができないが、タイヤに掛かる負担は車重に比例して大きくなっていくのだ。つまり車は軽ければ軽いほどタイヤに対する負担が少なく速く走るのに有利になるのだ。
もちろん、サスペンションや空力、ボディ剛性などコーナリングの速さの要因は多岐に渡るが、コーナリーングスピードを決めるうえで車重が大きなウェイトを占めていることに変わりはない。
速さの秘訣 その3:サスペンション
EK9の三つ目の魅力は、サスペンションの性能だ。EK9に搭載されているのは、前後ダブルウィッシュボーン式の足回りである。部品や製造時にコストが掛かるために量産車ではあまり採用されない足回り形式を採用しているのが特徴だ。
ダブルウイッシュボーンサスペンションは設計の自由度が高いために設計をしっかりと煮詰めることで、ロールやピッチングといった車の走行中におきる複雑な動きにたいして、高いコーナリングスピードを実現する事ができる。
サスペンションが正確に動くことで、コーナリング中にタイヤが地面と常に平行に近い形をキープできる。結果として、タイヤが路面をしっかりと捉え続けることができ、コーナリングのスピードが速くなる。コーナリング性能の高さは、サーキットで速いクルマを作る上で非常に重要である。
EK9のサスペンションは、排気量で勝るDC2に近づくために、コーナリング性能をしっかりと煮詰められたものである。これは、サーキットでの走り込みによって生まれた、本当に速く走るためのセッティングである。
まとめ
ホンダの開発者は、EK9をただのハッチバックではなく、本当に速く走るための車として真摯に開発した。その結果、シビックタイプRは特別な1台として、ホンダのプライドを守り続けてきた。この歴史を作り上げた1台がEK9である。この記事を通して、EK9の速さの理由やその本当の魅力が伝わったことを願う。車は実際に乗ってみないとわからない魅力がたくさんある。興味のある方は、ぜひ一度試してみてほしい。