「ホンダ車はエンジンは最高なんだけど、FFレイアウトがネックで……」と、コンサバなスポーツカー好きからは一歩引いて見られていた部分がある。そんな中、ホンダの50周年を記念して企画されたのが「S2000」だ。
スポーツカー好きには待望の良いエンジンとFRレイアウトの組み合わせの車種が出るとあって、期待値は非常に高かった。
ホンダS2000は、その優れた走行性能とスポーティなデザインにより、多くのカーユーザーに愛されてきた。発売から20年以上が経過しても、その人気は衰えを知らず、多くのファンがS2000のポテンシャルをさらに引き出すべく、カスタムを楽しんでい[…]
ホンダS2000が楽しくない理由とは?
S2000はスポーツカーとして高い評価を得ている一方で、日常使いにおいては不満の声も少なくない。特に、普段乗りの快適さや扱いやすさを重視するユーザーにとっては、S2000の特性が「楽しくない」と感じさせる原因となっている部分がある。
ここでは、S2000がどのような点で日常的な使用に適していないとされるのか、具体的な理由について掘り下げて解説する。
ピーキーなハンドリング
不満の声の一つ目は、ハンドリングがややシビアだという点。
満を持してホンダの本気のスポーツ車を味わって欲しいという心意気の表れか、ハンドリングの設定が、初めて乗った際にも分かるくらいにピーキーな味付けが成されている。
山道やサーキットを攻めるには歓迎される部分だが、一般道をリラックスして移動する際には緊張が強いられ、重たい印象も重なることから不満につながっているようだ。
低速トルクが少なく、街乗りでは扱いづらい
S2000の最大の魅力である「F20C」型エンジンは、最高出力の250馬力を8500回転という超高回転で発生させる。スポーツカーらしい運転を楽しむならこれ以上の特性は無いが、普段使いの回転域では扱いづらいという声が出ている。
国産の市販車に搭載されるエンジンの中で最高レベルに高回転高出力の特性に設計されたエンジンのため、どうしても低回転のトルクが犠牲になってしまうのは避けられない。同じ2Lクラスの実用エンジンに比べたら、音だけ大きく発していて加速が頼りないという印象になるだろう。
硬めのサスペンションと収納スペースの不足による日常使いでの不満
ハンドリングと同じ観点で、車体の動きを安定させるサスペンションのセッティングも、国産車の中ではかなりハード寄りになっている。
そのため、ゆったり流したいときには、路面の凹凸が気になるダンピング特性となっている。それが助手席の乗員にとっては、さらに不満が募るだろう。
そして、リヤのトランク容積は2シーターのオープンとしてはそこそこのレベルが確保されているようだが、セダンとは比べるまでも無い。室内に至ってはちょっとした買い物の際の袋を置くスペースにも困るレベルだ。この点は地味だが、普段使いする人にとっては大きな不満点になるだろう。
それでも楽しいS2000の魅力
以上のように、主に日常使いの点で不満が多く挙げられているS2000だが、ことスポーツカーらしい走りをする際にはそのマイナス面は反転する。その点において、このクルマ以上の魅力を備えた車種は現在までを見渡してもそう多くない。
ここからは魅力のポイントを挙げていこう。
2.0Lの高回転エンジン
やはりなんと言ってもS2000の最大の魅力は専用に設計された「F20C」型の直列4気筒2000ccVTECエンジンの特性だろう。そのパフォーマンスを顕著に表すのが、250馬力を8500回転という超高回転で発生する点だ。
実用エンジンのレブリミットをはるかに上回る回転域でピークパワーを発生するということからも、規格外の特性かがわかる。レブリミットに至ってはオートバイ並みの9000回転に設定されている。ちなみにリッターあたりの出力は125ps/Lで、現在に至る国産のエンジンの中でも1、2を争うレベル。「さすがホンダ!」と賞賛したくなる性能である。
洗練された美しいデザイン
S2000の魅力を語る上でその流麗なエクステリアデザインは外せない。往年のホンダ車はボンネット高が低くて伸びやかさを魅せるデザインが好評価だったが、S2000のボンネットは、DOHCエンジンの存在を疑うレベルに低い。
そして、その低さを活かした見事なウエッジシェイプ型のサイドシルエットは、パッと見ただけでS2000と分かる印象を与える。全体的にロングノーズショートデッキのバランスに仕立てられている点も、典型的なFRスポーツらしい印象で、熟年のエンスーな人にも刺さる雰囲気を纏っている。
操縦性の高さ
S2000のクイックなハンドリングや、高い荷重の領域でもしっかり減衰特性を発揮するハードな足まわりのセッティングは、先述のように普段使いにおいては最も敬遠される要素だ。しかしそれはあくまでもスポーツ性能を追求した結果であり、走りを楽しむという点においては、これ以上無い特性を秘めているクルマと言えるだろう。
「クローズドボディの設計であと100kg軽ければ、日本を代表するライトウエイトスポーツになれたのに……」という声も聞こえてきたが、それは逆にS2000のスポーツとしてのポテンシャルの高さを証明していると言える。
S2000はどんな人に向いている?
S2000は日常使いに向かない部分も多く、そのため、どのようなスタイルの人に適しているかが重要である。
この車は単なる移動手段としてではなく、運転そのものを楽しむために作られているため、運転の楽しさやスポーツカーらしさに魅力を感じる人に向いている。
運転自体を楽しみたい人
以上のように、S2000を所有するなら日常の使い勝手は期待できない。あくまで、スポーツカーとしての魅力を存分に堪能するために作られたクルマなので、そこに大きな魅力を感じられる人でないと、どこかに不満を抱えたまま乗ることになるだろう。
実用的なセダンを普段の足に持ちながら、週末などにドライブやサーキット遊びを楽しみたいという乗り方が最もしっくり来る。
オープンカーを好んで乗る人
S2000は極上のスポーツカーでありながら、往年のS600/800の遺伝子を汲むオープンカーとしての存在感も大きい。ホンダは、重量面と剛性面で不利なオープンボディをあえて選択したことに大きな意義を込めている。
超高回転の加速とサウンドを、屋根を開けた開放的な状態で存分に堪能して欲しい。
S2000に関心がある方は、購入前に実際の走りを体感するのが最善である。しかし、手軽に試乗する機会が少ないのが現状だ。そんな時におすすめなのが「おもしろレンタカー」である。
S2000をはじめとする数々のスポーツカーをレンタルでき、日常の使い勝手やスポーツ性能を実際に確かめることができる。特に、購入前やカスタムの参考にするために、まずは「おもしろレンタカー」でS2000の魅力を存分に体感してみてはいかがだろうか。