ホンダS2000は、その優れた走行性能とスポーティなデザインにより、多くのカーユーザーに愛されてきた。発売から20年以上が経過しても、その人気は衰えを知らず、多くのファンがS2000のポテンシャルをさらに引き出すべく、カスタムを楽しんでいる。
この記事では、S2000のおすすめカスタムについて詳しく紹介し、さらに魅力を引き出す方法を提案していく。
S2000をカスタムすることで引き出せる魅力とは
S2000をカスタムすることで、自分だけの特別な走りやデザインを楽しむことができる。ハンドリングの改善、エンジンのパワーアップ、外観の変更など、カスタムによって得られる効果は多岐にわたる。
さらに、S2000のためのカスタムパーツは今でも手に入りやすく、自分好みに仕立てる楽しみが続いている。
S2000をカスタムすることの魅力
ホンダのS2000は、ホンダの50周年を記念して発売されたFRレイアウトのオープン本格スポーツカーである。シャーシやエンジン、足まわりなど、車両を構成する大部分がこのクルマだけのために新たに設計されたものという、まさに記念車両にふさわしい贅沢な成り立ちを持っている。それだけにその走りは一級品との評判が高い。
1960年代のS600/800以来30年以上ぶりに復活したFRスポーツとしてかなりのこだわりが込められたことで、唯一無二のパッケージとパフォーマンスを実現した。しかし、一方ではピーキーなハンドリングがマイナス点として受け取られることもあり、評価には賛否両論がある。
世界を見渡しても一線級の走りを見せるS2000だけに、本来持っているポテンシャルは今でもかなりの水準にあるが、自分好みにハンドリングや足まわりの味付けを変えたり、エンジンのパフォーマンスを上げたり、あるいは外観の印象を変えるカスタムを施せば、自分だけの唯一無二のS2000に仕立てることができるので、その効果は決して小さくないだろう。
初期モデルの発売からもう20年以上が経過しているが、今でも根強い人気があるため、カスタムパーツはそれなりに流通しているようだ。ここからは各パートに分けて、おススメしたいカスタムの方向性や注意点などを照会していこう。
外装のカスタム
極限まで抑えられたボンネット高により、見事なくさび形のウエッジシェイプのサイドシルエットを実現したスマートな印象のオープンボディは、カスタムによってさらにその特徴を際立たせることができる。
外装はカスタムによる変化を最も周囲へアピールできる部分なので、アイテム選びは時間をかけてじっくりおこなって欲しい。
フロントバンパー
外装の中でも、フェイスマスクの一部を構成するフロントバンパーは、カスタムによる変化が大きく見込める部分だ。純正のバンパーは、前期のAP1型が抑制の効いたシンプル路線なので、リップスポイラーを追加するだけでも機能感を強調しつつ迫力アップができた。そのためバンパーを丸ごと交換すれば、顔つきのイメージチェンジができる。
一方の後期AP2型は純正で両サイドに大ぶりのカナード状の造形が施され、AP1型に比べるとかなり迫力がアップして、いわゆる「厳つい」顔つきになっている。そのため、これ以上迫力を増したい場合は、ゴテゴテ感が出ないようにまとめることがポイントになるだろう。
機能的にはダウンフォースを増す造形のものを選べば、高速域でフロントの安定性が向上する効果が見込めるが、それが良い方向に効くかどうかは他の部分とのバランスに因るので注意が必要だ。
サイドスカート
サイドスカートは車体下面を通る空気の流れを整えるという機能があるパーツなので、高速域での空力を改善したいという場合は装着を検討してみても良いだろう。
しかしそれよりも外観のイメージ変更の意味合いで装着するケースが多いと思われる。
特にフロントバンパー下部にボリュームを持たせる変更をおこなった場合、デザイン的にバランスをとるためにサイドにボリューム調整としてエアロを追加するのが効果的だ。
注意点としては、サイドの地上高が下がるため、歩道への乗り上げや踏切で下面を擦って破損する可能性がある。使用環境によってしっかり高さを確認しておきたい。
リヤバンパー
リヤバンパーは後方からの印象を変えるのに効果的なパーツ。S2000が現役だった当時は、ボディ下面の空気を積極的に抜き、ダウンフォースを高めるディフューザー構造が流行ったので、左右2本出しマフラーのS2000には相性の良いデザインということもあり、アフターパーツの多くがそれを意識したデザインとなっていた。
その何割かは外観だけディフューザーの造形に仕上げたもので、実際のダウンフォース効果はほとんど見込めないが、機能感の向上には効果的。
リヤスポイラー
S2000の純正では、後期AP2のタイプSにのみウイングタイプのリヤスポイラーが装着されたが、Modulo(ホンダアクセス)からトランクに一体化するスポイラーがリリースされていた。
社外品では、トランクから翼端板が伸びる形状のウイングタイプや、支柱を持つ大型のGTウイングタイプまでいろいろ販売されていたので、用途に応じて選ぶと良いだろう。どのタイプも基本的にボンネットに穴開けが必要になるのでその点には注意。
ボンネット
S2000は純正でアルミ製のボンネットを備えているので、社外品に替えても大幅な軽量化の効果は見込めない。あえて社外品に交換する目的は、冷却効率の向上と機能感の向上だろう。
ボンネットにエアアウトレットが設けられたタイプはエンジンルームに籠もる熱気を逃してくれる効果があるので、サーキット走行や、チューニングでエンジンの発熱量が上がった場合に効果的。
また、ルックス的にもアウトレットの機能感が加わり、レーシーな印象になり、見た目の変化を楽しむことができる。雨の日にも乗る場合はエンジンルームに水が入らないようにする対策が必要になる。
ハードトップ
S2000は純正オプションでハードトップが用意されていたので、中古車の中には最初から装着されているものもあるだろう。幌のソフトトップは高速域で風切り音が発生することや、ビニールスクリーンの曇りなどのデメリットがあるため、ハードトップにすることでそれが解消できる。
ただし、後から入手しようとする場合、かなり価格が高騰しているので注意が必要だ。
足回りのカスタム
走りの良さが魅力のS2000の足まわりは、純正の状態でもかなりのポテンシャルを持っているので、軽いサーキット走行程度なら、そのままで充分楽しめてしまう。
しかし、さすがに本気でタイムを縮める走りをするとなると、純正ではどうしても不足する部分が出てくるだろう。その場合は足まわりのカスタムで対応していくことになる。
サスペンション
サーキットなどの激しい走りになると、ノーマルのバネレートでは車体の動きを抑えきれなくなってくるので、まずは高レートのスプリングに変更することになる。レート選びはタイヤのグリップ性能やコースのスピード域に応じて異なるため、経験者やショップに聞くのが早いだろう。
そしてバネレートを上げたらダンパーの交換も必須になってくる。
多くの場合はロール調整のために車高も下げるので、車高調整機構の付いたダンパーが主流になってくる。ダンパーの価格は性能と比例しているため、走りのレベルに合わせて選ぶのが良いだろう。
ブレーキ
サーキットを本気で走る場合や、チューニングで動力性能が向上した場合、ブレーキの強化も必須になる。
まずは連続する激しい減速で上昇する温度に対応したブレーキパッドへの交換から始め、必要に応じて大容量のブレーキキャリパーや大径のローターに交換していく。
エンジンのカスタム
S2000に搭載されているF20C(後期AP2はF22C)は純正の状態で、最高出力の250ps(242ps)を8300rpm(7800rpm)という超高回転で発揮する高性能ユニット。リッターあたりの馬力も125ps/L(112ps/L)と、今でも量産車の水準ではトップレベルの高い性能を備えているので、安易なチューニングでは逆に性能をスポイルする恐れがあるほど。
ここでは耐久性を犠牲にしない範疇でのエンジンチューニングメニューを考えてみよう。
吸気系
吸気系のチューニングで最初に行うことが多いのが、エアクリーナーのモディファイだ。
純正のエアクリーナーはエンジンの保護を最優先としているため、吸気効率をある程度犠牲にしている面がある。そのため、通過抵抗の低いフィルターに交換するという方法が最もイージーで一般的。
ただ、体感できるほどの向上が得られるかというと難しいだろう。吸気サウンドが少し勇ましくなり、気分がアガる効果の方が魅力かもしれない。無限製のエアクリーナー&ボックスキットのように、吸気のレイアウトを変更してフレッシュなエアを採り込む製品もある。
排気系
排気系のパーツ類も、吸気系と同様に大幅なパワーアップが主目的ではないと考えたほうがいいだろう。こちらもアクセルを開けたときの排気サウンドの質感向上が最大のメリットだ。
そのため、購入時にはなるべく実際の排気音を確認して決めた方がいい。また、マフラーはエンド部のデザインも重要な要素になるので、その点もしっかり確認しておきたい。
流通しているほとんどの製品は保安基準に適合しているものだが、中古品の場合は経年劣化で音量が変化したり、元からレース用に作られたものもあるので注意が必要だ。
ピストン
F20CもF22Cも、純正で11以上という高圧縮仕様のエンジンなので、ハイコンプピストンを導入するのはかなりピーキーなハイカムとの組み合わせになる。普段使いならそのレベルの製品は不要だと思うので、実際のところはオーバーホール用途としての需要がメインかと思われる。
S2000も発売から20年以上が経過している個体が多いので、そろそろオーバーホールの時期を迎えているエンジンも多いだろう。製廃になっている部品が多い今、オーバーホール用ピストンの存在はありがたい。
カスタムする際の注意点
ざっとカスタムの内容を紹介してみたが、ここではカスタムに伴う注意点をまとめてみよう。
予算設定
カスタムパーツの価格は数万円から数十万円と、お小遣いの範囲で購入するにはそれなりに決意が必要なケースが多いだろう。例えば外装パーツの例で見ると、バンパーが社外品のFRP製で12万円〜、サイドステップが7万円〜、リヤバンパーが10万円〜、リヤウイングが8万円〜といったところ。
フルで装着するとパーツ代だけで40万円弱となり、そこに塗装代と取付工賃が加わるので、60万円〜という感じだろう。中古で入手すれば半値以下で揃えるのは可能だが、塗装代は別途必要になる。とは言えすべていっぺんに揃える必要は無いので、予算に応じて分割すれば負担は少ないだろう。
法規制への対応
車をカスタムする際は保安基準に沿っていることが重要になる。もし保安基準に適合していないと車検を通すことができないので、始めから装着してあったパーツについても車検前には適合かどうかの確認はしておくべきだろう。
マフラーやホイール、外装パーツに関する保安基準は不定期に変更されているので、昔は適合だったものも今はNGという場合もあるので注意。
メンテナンス性の変化
純正以外のパーツを装着する場合、メンテナンス性に対する影響が多少なりとも発生する。極端な例を挙げると、車高調ダンパーで車高を大幅に下げて、純正より大径のホイールを装着している場合、組み合わせによってはホイールの脱着が困難になるケースもある。
そこまでのレベルではなくても、不意のトラブルでディーラーなどに持ち込んだ際に、パーツの脱着に責任が持てないと、作業を断られるケースもある。カスタムをおこなうときは、それを覚悟する必要があることを頭に入れておこう。
S2000のカスタムを考えている方は、実際に走行性能や外観の変化を体感することが重要である。しかし、購入前にその感触を確かめたいという方も多いのではないだろうか。
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購入前の試乗やカスタム検討の参考に、ぜひ「おもしろレンタカー」をご利用してみて欲しい。