ターボとスーパーチャージャーの違いとは?メリット・デメリットも解説

クルマのパワーアップパーツとしても知られる過給機には、主に「ターボ」と「スーパーチャージャー」がある。これらの違いとは何なのだろうか。

この記事では、クルマの過給機であるターボチャージャーとスーパーチャージャーの違い、近年のターボチャージャーの進化について解説する。

ターボチャージャーとは?

クルマの過給機と聞いてまず思い浮かぶのが「ターボチャージャー」だろう。ターボチャージャーは、一般的に「ターボ」と呼ばれる過給機で、エンジンの排ガスでタービンを回して過給するシステムだ。

エンジンの排ガスを利用してタービンを回すため、エンジンが動いていれば過給が行われる。ただし、タービンの大きさや形状などによって少ない排ガスで動くか、排ガスの量が多くなってから動くかが変わる。そのため、低中回転域での過給に優れたターボチャージャーや、中高回転域での過給に優れたターボチャージャーなど、さまざまなタイプがある。

例えば、低中回転域での過給に優れたターボチャージャーのみを取り付けた場合、低いエンジン回転数から太いトルクを得られるが、中高回転域ではターボチャージャーの恩恵を受けにくくなり、高回転域でのパワーが不足しやすくなる。

一方、中高回転域での過給に優れたターボチャージャーのみを取り付けた場合、低中回転域でのトルクやパワーは弱めだが、中高回転域になると力強いパワーが湧き出す特性となる。いわゆるドッカンターボというやつだ。

このように、低中回転域で過給するターボチャージャーと、中高回転域で過給するターボチャージャーには、それぞれメリットとデメリットがある。よって、どちらか一方を取り付ける場合は特性を理解したうえで取り付ける必要がある。

低中回転域と中高回転域の両方でターボチャージャーの恩恵を受けたいのであれば、二系統のターボチャージャーを取り付ける方法もある。実際に市販されているクルマの中には、低中回転域で過給するターボチャージャーと中高回転域で過給するターボチャージャーを取り付けているモデルも存在している。

エンジン排気量を変えずにパワーアップさせたいのであれば、ターボチャージャーは有効な手段である。ただし、ターボチャージャー未搭載のクルマとターボチャージャー搭載車を比べると、一般的に燃費性能が悪化しやすいというデメリットがある。

スーパーチャージャーとは?

ターボチャージャーと並んで広く知られている過給機に、スーパーチャージャーがある。スーパーチャージャーは、エンジンの回転運動の一部を利用して空気を圧縮し、エンジンに送り込む過給機だ。

エンジンの回転数に合わせて過給されるため、ターボチャージャーよりもタイムラグが少ないというメリットがある。また、ターボチャージャーより少ないパーツ数で構成されているため、後付けしやすいのもスーパーチャージャーの特徴だ。

過給時のタイムラグや取り付けのしやすさの面では、ターボチャージャーよりスーパーチャージャーの方が優れていると思われるかもしれない。しかし、スーパーチャージャーは、エンジンの回転動力を利用するため、エネルギーロスが生じるというデメリットがある。

また、スーパーチャージャーは、低中回転域での過給に優れているものの、中高回転域での過給が得意ではない。そのため、中高回転域での過給にこだわりたいのであれば、ターボチャージャーの方が良いといえるだろう。

このスーパーチャージャーの弱点を補うために、スーパーチャージャーとターボチャージャーを組み合わせたエンジンもある。ツインチャージャーエンジンとして知られるフォルクスワーゲンのエンジンでは、エンジン回転数が低い領域ではスーパーチャージャーで過給し、高回転域ではターボチャージャーで過給するシステムを採用している。

過給機の特性に応じて過給方法を切り替えるのが、フォルクスワーゲンのツインチャージャーエンジンである。

ターボとスーパーチャージャーの共通点と相違点

ターボチャージャーとスーパーチャージャーは、どちらも過給機と呼ばれる装置である。それぞれの共通点と相違点を簡単にまとめると次のようになる。

【共通点】

  • 過給機
  • エンジン排気量をそのままにパワーアップさせる
  • 圧縮した空気を送り込む

など

【相違点】

  • 過給方法
  • ターボチャージャーは排ガスを利用してタービンを回す
  • スーパーチャージャーはエンジンが発生させた動力(回転運動)の一部で過給させる

など

上記の共通点と相違点は代表的なものである。一言でまとめると、どちらも圧縮した空気を送り込む過給機だが、過給方法に違いがある。

近年ではターボチャージャーが進化している

ターボチャージャーとスーパーチャージャーについて調べると、どちらの過給機が優れているのか疑問に思う人もいるかもしれない。

これまで解説してきたとおり、ターボチャージャーとスーパーチャージャーには、それぞれメリットとデメリットがある。そのため、どちらのほうが優れていると優劣をつけることはできない。ただ、確かなのは、近年ターボチャージャーが大幅に進化していることだ。

例えば、欧州車を中心に広がっているダウンサイジングエンジンの多くは、ターボチャージャーで過給している。低中回転域でのトルクと中高回転域でのパワーを両立するターボチャージャーを装着することで、従来の大排気量自然吸気エンジンと同等以上のトルクとパワーを出している。

ターボチャージャーを搭載したダウンサイジングターボエンジンは、エンジン排気量を下げつつ過給機を取り付け、燃費性能(環境性能)を向上させながらトルクとパワーも高めている。

また、ダウンサイジングターボエンジンでは、低中回転域でのトルクおよびレスポンスに優れるターボチャージャーが採用されているケースが多い。そのため、従来のパワーアップ目的のターボチャージャーのような中高回転域で急にターボが効き始めるということもほとんどない。

このようなターボチャージャーそのものの進化により、環境性能・燃費性能とトルク・パワーを両立したターボチャージャーが誕生している。

パワーを得るための過給機はチューニングパーツとしても人気

ここまで、ターボチャージャーとスーパーチャージャーの特徴やメリット・デメリット、ターボチャージャーの進化などを解説してきたが、ターボチャージャーとスーパーチャージャーのどちらも過給機であり、エンジン排気量を変えずに、大排気量エンジンと同等の効果を得られるパワーアップパーツである。

そのため、ターボチャージャーやスーパーチャージャーはチューニングパーツとしても人気がある。

現状のエンジンパワーで十分でも、さらなるパワーアップを求めるなら、ターボチャージャーやスーパーチャージャーの導入を検討するのもよい。

もし、ターボチャージャーやスーパーチャージャーのチューニングをする際は、それぞれの特徴や特性などをしっかりと理解したうえでカスタムすることをおすすめする。

これまで解説してきたように、ターボチャージャーには、タイムラグがあったり、タービンの大きさなどによって得意とする領域が異なるため、求めるパワー特性に応じてチューニング方法が変わる。

一方、スーパーチャージャーは、ターボチャージャーと比べると後付けしやすいものの、エンジンのエネルギーロスがあることや、低中回転域での過給に特化していることなどを理解しておく必要がある。

カスタムする際は、それぞれの特徴や長所・短所を把握し、理想の走りを明確にしたうえで過給機のチューニングを行うことが重要である。

ターボとスーパーチャージャー、それぞれの特性を理解すれば、クルマ選びやカスタムの方向性も明確になる。しかし、過給機の特性はスペックだけでは語り尽くせないもの。実際に乗ってみなければ、本当のフィーリングは分からない。「おもしろレンタカー」では、ターボやスーパーチャージャー搭載車もレンタル可能。ぜひ実際にドライブして、それぞれの過給機が生み出す加速感を体感してみてほしい。