トヨタ、ホンダ、日産、それぞれのハイブリッドの違い

「ハイブリッド」という言葉が自動車業界で使われ始めたのは約30年前。トヨタの「プリウス」発売がきっかけである。

現在、ハイブリッドシステムは環境負荷低減に不可欠な技術のひとつとなっている。ここではそのハイブリッドシステムについて少し掘り下げてみよう。

ハイブリッドシステムとは

「ハイブリッド」という言葉は、異なる2つの要素を組み合わせ、それぞれの特性を併せ持つものを指す。自動車では内燃機関(エンジン)と電気モーターを組み合わせたパワートレインを持つ車輌を指す。

自動車のパワートレイン

ガソリンエンジンをパワートレインとする自動車は、動力源となるエンジンと、その回転トルクを速度や負荷に応じて調整するトランスミッションを持つ。そしてその調整された回転力が駆動輪へと分配され、車体を進ませる。

動力源は長らくガソリンまたは軽油を燃料とする内燃機関が主体だったが、2000年頃から環境問題への対応の観点から環境への負荷が少ない電気モーターが注目され始めた。現在は、従来の内燃機関、電気モーター、そしてその両方を組み合わせたハイブリッドの3種類が共存している。

ハイブリッドシステムの仕組み

ハイブリッドシステムは、ガソリンエンジンと電気モーターを組み合わせ、状況に応じて各パワーソースを切り替えて運用するシステムである。

実用化当初のハイブリッドシステムは、大きなトルクが必要な発進・加速・上り坂ではエンジンを使用し、それ以外の巡航時などでは電気モーターを用いることで、利便性と燃費性能を両立していた。

自動車における電気モーターの実用化において最大の課題はバッテリーであり、必要なトルクを生む高電圧を安定して供給し、急速充電にも対応する必要があった。この課題はリチウムイオン電池の実用化によって解決の目処が立った。

一方、ハイブリッドシステムを成立させるための最大の課題はソース切り替えの制御だった。これまで量産車で2つのパワーソースを持つ車両は珍しく、それらを状況に応じて切り替えるシステムの実現には、多くの試行錯誤が必要だった。

トヨタがプリウスで実用化したシステムは高度な制御技術を実現しており、発表後しばらくの間、ライバルメーカーは追随すらできなかった。

ハイブリッドシステムとEVの種類

現在では各社の企業努力により、独自の強みを持つハイブリッドシステムが開発・実用化されている。

そのため、駆動の担当範囲や制御方法の違いにより、いくつかの種類に分類される。

EVのシステム

電気モーターのみで稼働するEV(BEV)は、モーターを回し、実用的な航続距離を保つために大きなバッテリーを必要とする。多くの車両では、床下に複数のセルを備えたバッテリーユニットが搭載されている。

そのバッテリーから供給される電力は、昇圧器とコントローラーを兼ねるインバーターユニットによって高電圧に変換され、モーターで大きな回転力を発生させる。その後はガソリンエンジンと同様で、トランスミッションによって減速をおこない、駆動輪へと配分される。

排気ガスを出さないので環境負荷が少なくできるという目的に加えて、減速時にそのエネルギーの一部を回収してバッテリーに蓄えることで、トータルの電費を向上させられるという点も大きなメリットになる。

ストロングハイブリッドシステム

複数あるハイブリッドシステムの中で、モーターのみでも走行が可能なシステムを“ストロング・ハイブリッド”と呼ぶ。ストロングハイブリッドも、方式の違いにより3種に分類される。

シリーズ式

このシリーズ式と呼ばれるシステムは、パワーソースがモーターのみで、ガソリンエンジンはバッテリーへ電力を充電するための発電機として働く。

言い換えれば、BEVに大きな発電機を加えたのがこのシステムだ。

パラレル式

パラレル式はシリーズ式とは逆にエンジンを主体に据えて、大きなトルクが必要な発進・加速時にモーターでアシストする方式。

エンジンが主体のため、既存のエンジンをベースに展開できるのが強み。

スプリット式

このスプリット式は、エンジンとモーターの両方を、状況に合わせて適宜使い分けるシステム。両方の得意とする部分を効果的に使い分けるので、シリーズ・パラレル式と呼ばれることもある。

刻々と変化する状況を判断し、それに適したパワーソースを振り分ける必要があるため、制御系と切り替え機構には高度な技術が不可欠となる。しかしその分、走りの総合性能は高くできる。

マイルドハイブリッドシステム

マイルドハイブリッドシステムは、パラレル式に似た構成だが、モーターの役割がより限定的なシステムを指す。

乱暴な言い方をすれば、発電もできるセルモーターを大きくして、駆動をアシストできるくらいの出力に仕上げたユニットを後付けしたパワーソースといったところ。

既存のエンジンをベースにできるうえ、本格的なモーターほどのスペースを取らず、バッテリーも小型化できるため、実用化のハードルが低い。軽自動車などのコンパクトな車種にも適用しやすい点が強みである。

プラグインハイブリッド(PHEV)とは

“プラグイン”とは“差し込み口”のほかに“機能拡張”の意味もある言葉であり、ハイブリッドシステムでは外部接続端子から充電可能なタイプを指す。

スプリット式に組み込むことで、走行コストを抑えつつ環境負荷の少ないモーター走行を最大限活用できる。また、充電が切れた際にはエンジンで走行を維持できるため、より柔軟な運用が可能となる。

主要3社のハイブリッドシステムの違い

実際に国産の主要メーカーが採用しているハイブリッドシステムを見ていこう。

トヨタのハイブリッドシステム

ハイブリッドシステムのパイオニアであるトヨタが採用しているのはスプリット式。ハイブリッド車の元祖「プリウス」では、当初から開発ハードルの高いシリーズ式を採用。

それを基に進化を重ね、PHEVの追加や信頼性・燃費性能・動力性能の向上を図り、現在もこの方式を主流として採用している。

ホンダのハイブリッドシステム

ホンダは、導入初期に「IMA」というパラレルハイブリッドを採用していたが、現在は3種類のハイブリッドシステムを車両特性に応じて使い分けている。

  • e:HEV:モーター主体のシリーズ式
  • i-DCD:パラレル式で、DCTミッションと組み合わせたシステム
  • SH-AWD:FFのスプリット式に加え、後輪用に2基のモーターを搭載するAWDシステム

日産のハイブリッドシステム

ハイブリッド分野で出遅れていた日産は、2010年に満を持してBEVの「リーフ」を発売した。

その6年後に発売された日産初のハイブリッド車「ノートe-POWER」は、リーフの技術を活用しシリーズ式を採用。現在は複数の車種で「e-POWER」を展開している。

軽自動車のハイブリッドシステム

車体全体の大部分を居住スペースが占める軽自動車では、スペースの制約によりハイブリッド化が遅れていた。

初めてハイブリッドが採用されたのは「スズキ・ツイン」で、従来のガソリンエンジンにモーターを追加し、小型の鉛バッテリーを複数搭載して高電圧を供給していた。

この時点ではまだ試験的な採用の色が濃かったが、軽バン初の「ダイハツ・ハイゼット」でマイルドハイブリッドが採用されて以降、さまざまな車種に広がっている。

まとめ

国産初のハイブリッド車「トヨタ・プリウス」が登場してから約30年が経過した現在、主要メーカー各社が独自のハイブリッドシステムを開発・採用している。

各社のハイブリッドシステムにはそれぞれ強みがあるが、総合的な技術力では依然としてトヨタがリードしている。

ハイブリッドはEVへの移行期における中間技術と認識されていたが、欧州を中心とした急速なEV化に陰りが見え始めた現在、再びハイブリッドが見直されつつある。まだまだハイブリッドの発展は続くだろう。

ハイブリッド技術の進化に伴い、各メーカーが独自のシステムを採用し、燃費性能や走行特性に違いが生じている。しかし、実際にその違いを体感しなければ、自分に合うハイブリッド車を選ぶことは難しい。

「おもしろレンタカー」では、トヨタ、ホンダ、日産をはじめとする多様なハイブリッド車を取り揃えており、それぞれの特性を試乗で確かめることができる。ハイブリッド車の走りを体感し、自分に最適な一台を見極めるために、ぜひ一度利用してみてほしい。