スポーツマフラーは必要?装着のメリットとデメリットを詳しく解説

愛車のカスタムをおこなう際に、最初の選択肢になりやすいのが社外のマフラーである。いわゆる“スポーツマフラー”と呼ばれるカスタム用のマフラーは、音量や音質を変えられるほか、リヤの雰囲気を引き締める効果があり、軽量化によって走行性能の向上も見込めるという、マルチな効果が魅力のアイテムである。

ここではその“スポーツマフラー”にスポットを当てて、少し掘り下げてみよう。

スポーツマフラーとは何か?

“スポーツマフラー”というアイテムは、カスタムを目的とした社外品のマフラーだ。ひと昔前までは性能向上が主な目的の商品だったが、昨今ではドレスアップの目的も重要な要素として捉えられている。

スポーツマフラーの定義

上記のように“スポーツマフラー”の役割はいくつかあるが、定義としては、ノーマル状態から性能や音質、ルックスを変えるためのアイテムである。実際は数万円〜数十万円と高価なパーツのため、カスタムの各要素を複合して変更できるものがほとんどだ。

スポーツマフラーの効果

スポーツマフラーの効果を要素ごとに見ていこう。

性能向上

まずは出力やレスポンスなど、エンジンの性能を強化するという効果が挙げられる。

純正品ではコストや耐久性などの要因で効率面に妥協せざるを得なかった部分を、割り切った設計思想や高品質な素材の使用によって改善し、排気効率を高めることで抑えられていたパワーとレスポンスを引き出すものである。

音量と音質の向上

音量と音質の向上は、カスタムの醍醐味のひとつである。パワーを引き出すために排気効率を高めるには、まず排気の抵抗を減らすことが効果的だ。

排気の抵抗になっている最大の要素は消音器。音とはエネルギーだと言えるので、それを抑えるためにはエネルギーを奪う必要がある。純正の消音部の構造は、通路を絞ったり、複雑な迷路状に構成したり、吸音剤を使用したりして排気のエネルギーを奪っている。

それらの全てが排気のエネルギーを奪い、流速を落としてしまう仕組みのため、排気効率の面ではマイナス要素になってしまう。スポーツマフラーは、排気効率を高めるために割り切って、消音の割合を減らして排気の抜けやすさを高めている。

つまり排気効率を高めると、必然として音量は大きくなってしまう。これは騒音という問題がある反面、運転を盛り上げてくれる要素でもある。この要素はスポーツマフラーの魅力のひとつといえる。

また、純正の音量を抑える構造を取り除くことで、それまで抑えられていた部分を調整し、音質を変えることができる。音質にこだわった設計によって製作されたマフラーは、加速時の排気サウンドがより気持ちのいいものになっている。

スポーツマフラーの種類

スポーツマフラーは、大きく分けて以下の種類が存在する。

  • スリップオン・タイプ
  • フルエキゾースト・タイプ

スリップオン・タイプは、消音器を含むマフラーの最後端のジョイントから後ろの部分を交換するタイプである。マフラーとしては最小限の構成になるので、交換が楽で、交換コストも低く抑えられるのが魅力だ。

ただし、性能向上の面ではフルエキゾースト・タイプに劣る。フルエキゾースト・タイプは基本的に“タコ足”と呼ばれるエキマニ(エキゾースト・マニフォールド)から後ろの部分を丸ごと交換するタイプ。

基本構成としては、フロントパイプ、メインパイプ、サイレンサー部となるが、商品によってはスポーツ触媒(抵抗の少ない触媒)とセットだったり、触媒から後ろの部分だったりするものもある。

排気系のほとんどの部分を変更できるため、性能向上の点では高い効果が期待できるが、一方でコストは大幅に増加する。

スポーツマフラーの構造や素材

スポーツマフラーには、タイプ(構成)の他に、素材でも種類が分かれている。

スポーツマフラーの構造

フルエキゾースト・タイプでその構成を解説していこう。排気はまずエンジンの排気ポートから“エキマニ”によって一箇所に集合される。直列エンジンなら一箇所に、V型や水平対向では2箇所に分けて集合される。

その後、“フロントパイプ”と呼ばれる部分を通し触媒に繋がる。公道を走るためには触媒の装着が必須であり、ほとんどの製品がこの構成を採用している。ただし、効率をさらに高めるために“スポーツ触媒”をセットにしている製品もある。

そして触媒から後を“メインパイプ”と呼び、リヤアクスルの後ぐらいにジョイントがあり、最後部の消音器とエンドパイプ(マフラーカッター)につながる。製品によっては、消音と効率のバランス、そしてスペースの問題から、メインパイプに“サブマフラー”と呼ばれる消音器を備えるものもある。

素材の違いと効果

素材の種類とその特徴は以下の通り。

ステンレス

最も多く使用されているのがステンレスである。サビに強い性質と加工のしやすさ、そして見た目の良さで選ばれている。比重はスチールよりやや大きいが、強度が優れることで薄くすることができるため、スチールの製品より軽量なことも多い。デメリットはやや高価なこと。

スチール

最大のメリットはコストの低さであり、マフラー用の素材として最も安価に製造できるため、純正マフラーの素材として現在も多く使用されている。現在ではスポーツマフラーとしては少数派であるが、低価格を特徴とする場合に選ばれることがある。デメリットはサビること。

チタン

性能を追求するなら最高の素材と言われているのがこのチタン。特筆すべきは、ステンレスの60%という比重の軽さによる軽量性であり、車種によってはハンドリングが変化するほどの効果が得られる。

デメリットは価格が高い点に集約される。まず素材自体の価格が高いことに加えて、加工が難しく歩留まりも良くないため、それらが製品の価格に反映されてしまう。

カーボン

カーボンは強度と軽量性、成型の自由度などでチタンを上回る特性を持つ素材なので、F1などのレースシーンでは無くてはならない素材のひとつ。ただし、耐熱性は200度(※一般的なCFRP)程度なので、出口部分でも300度と言われる排気系には使用できない。

ただし、マフラーエンドの外筒や消音器のケースに、軽量化とドレスアップの目的で使われることがある。

スポーツマフラーの効果

スポーツマフラーの装着による効果を具体的に見ていこう。

エンジンがノーマルの場合

スポーツマフラーを装着するケースの中では、エンジンがノーマルの車両に装着する場合が最も多いだろう。タイプではスリップオン・タイプが多いと思われる。

この場合、明確に言えば、大幅な性能向上は期待しないほうがよい。音量や音質の変化により、体感的に良くなったと感じられる場合も少なくないだろう。しかしパワーを計測してみると、思ったほどの変化は出ないことが多いだろう。

パワーアップの鍵は燃焼効率の向上である。マフラーで排気効率が向上すればパワーが向上するように思えるが、実際には吸気側がノーマルの場合、バランスを崩す結果になる可能性が高い。

また、ECUがノーマルのままでは吸気排気の流量の変化に対応できる範囲が限られるので、ある程度以上の効率の引き上げはトラブルにつながってしまう。少なくとも“車検対応品”を選択すれば問題は生じないだろう。

エンジンをチューニングした場合

エンジン本体にチューニングを加えた場合、その内容にもよるが、基本的には大幅な出力向上を狙っているだろうから、当然吸排気系にもその出力向上に見合った効率の向上が求められる。

スリップオン・タイプでは一部分しか効率が上げられないため、フルエキゾースト・タイプへの交換が望ましい。燃焼の能率の向上に見合った性能のマフラーであれば、計算通りの出力向上が得られるだろう。

スポーツマフラー装着時の注意

スポーツマフラーを装着する際には、性能向上や外観の変化といったメリットだけでなく、いくつかの注意点も考慮する必要がある。音量の増加による近隣への配慮や、装着作業中の安全対策など、事前に理解しておくべきポイントが多い。

ここでは、スポーツマフラー装着時の注意点を具体的に解説する。

装着によるデメリット

スポーツマフラー装着のデメリットとして最初に挙げられるのは音量面である。先述のように排気音量と性能はトレードオフの関係にあるので、性能が上がれば音量は大きくなる。

性能向上のウエイトが大きくないスリップオン・タイプでも、カスタムパーツとしての手応えを感じてもらうために音量を大きめに設定している製品もある。車検対応品でもノーマルに比べて多少なりとも音量が大きくなるため、深夜の住宅地では走行に気を使う必要があるだろう。

また、製品によっては脱着にリスクが生じると判断されるケースもあるため、ディーラーに点検や車検、修理を依頼する際に断られる可能性があることも頭に入れておいた方がいいだろう。

DIYで装着する際の注意

自分でマフラーを脱着する場合はいくつか注意したい点がある。まずは火傷しないように注意。走行した後はマフラーが熱せられているので、一度冷ましてから作業をするようにしたい。

そして純正マフラーの重量をナメて掛からないこと。純正のマフラーは消音のために内部構造が複雑化しており、さらに強度や耐久性に余裕を持たせているため、かなりの重量がある。

脱着の際にはその重量を支える方法も考えておこないたい。また、ボルトナットでの固定だけでなく、ダンパーゴムで吊ってある部分もあるので、その脱着もイメージしておこう。

スポーツマフラーの選び方

スポーツマフラーを選ぶ際には、性能向上を目的とするのか、軽量化を狙うのか、あるいは見た目を重視するのかによって選択肢が異なる。

適切な製品を選ぶことで、車の特性を最大限に引き出すことが可能となる。ここでは、目的別にスポーツマフラーの選び方について詳しく解説する。

性能向上が目的の場合

性能の向上を求めている場合でも、いくつかの選択肢があるだろう。出力の向上を狙う場合は排気効率の良いものを選択する必要があるが、エンジン本体や吸気系がノーマルの場合、効率が過剰に良いものを装着するとバランスを崩し、逆効果になる可能性が高い。

軽量化が目的の場合、社外品の多くは純正より軽量に作られているはずなので、ステンレス製の製品でもその効果は得られるだろう。費用に余裕がある場合はチタン製を選択すれば、スリップオン・タイプでも軽量化の効果を体感できるだろう。

チューニングと合わせて装着する場合

吸気系も併せてモディファイする場合や、エンジン本体に手を入れる場合でも、丁度良い効率のものを選ぶことが肝要だ。

例えばフロント&メインパイプの径は太いほど効率が良くなる傾向にあるが、吸気系やエンジンの特性によっては適度な径に抑えた方がトルクが出て扱いやすくなることも多い。

見た目で選ぶ場合

ドレスアップが目的であれば、スリップオン・タイプが最適である。最も手軽に導入できるタイプなので、各社から多くの種類がリリースされているから、出口の形状やチタン、カーボンなどの素材の違いを好みに応じて選択できる。

音量もこだわりたい場合はできるだけ実際の音を確認しておきたい。現在では動画が公開されている場合もあり、ショップに足を運べばデモカーが用意されていることもある。

スポーツマフラーの魅力は音質や性能向上だけでなく、愛車の雰囲気を一変させることにもある。しかし、実際に装着後のサウンドやフィーリングをイメージするのは難しいと感じる方も多いだろう。

そんなときには「おもしろレンタカー」の活用をおすすめする。多彩なカスタム車をラインナップしており、スポーツマフラー装着車も試乗可能だ。音量や乗り味をじっくり体感し、自分に合った選択ができるはずだ。ぜひ一度、その魅力に触れてみてはいかがだろうか。