クルマのエンジンには、NAエンジン(自然吸気)、ターボチャージャーやスーパーチャージャーといった過給機が装着されている過給エンジン、他の動力と組み合わせたハイブリッドなど、さまざまなタイプがある。これらの中でNAとターボではどちらが良いのかは、よく比較されるテーマである。
この記事では、NAエンジンとターボエンジンの特徴、メリット・デメリット、どのような基準でエンジンタイプを選べばよいのかを解説する。
エンジンのタイプは主に2つある

ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの内燃機関は、「自然吸気(Natural Aspiration/Normal Aspiration)エンジン」とターボチャージャーやスーパーチャージャーなどの「過給エンジン」の2種類に大別される。どちらも内燃機関であるものの、空気の取り入れ方に違いがあり、出力特性が異なる。
では、それぞれどのような特徴やメリット・デメリットがあるのだろうか。
NAエンジンの特徴やメリット・デメリット

NAエンジンは自然吸気エンジンとも呼ばれる。NAとは、Natural Aspiration(ナチュラル・アスピレーション)またはNormal Aspiration(ノーマル・アスピレーション)の略であり、過給機を使わずに空気を吸引する方式を意味する。
NAエンジンは、スロットルの操作量に応じて空気が取り込まれるため、アクセル操作に対して出力が高まっていく。よって、ドライバーのアクセル操作に対して素直な反応を示すことが特徴だ。
NAエンジンのメリット
ドライバーの操作に対して素直な反応を示すNAエンジンのメリットは他にもある。NAエンジンのメリットをまとめて紹介しよう。
- アクセル操作に対して素直に反応する
- 出力コントロールがしやすい
- エンジン回転数と出力がリンクする
- 内燃機関らしい操作フィールを楽しめる
- 出力が徐々に高まるエンジン回転を楽しめる
- エンジンのタイプによっては高回転域で心地よいサウンドを楽しめる
- ターボエンジンなどの過給機エンジンと比べると燃費性能が良い傾向にある
など
NAエンジンには主に上記のようなメリットがある。したがって、内燃機関らしいフィーリングを楽しみたい場合は、NAエンジンのほうがよいといえる。
NAエンジンのデメリット
さまざまなメリットがあるNAエンジンにも、デメリットは存在する。NAエンジンの主なデメリットは次のとおりだ。
- エンジン排気量によってはパワー不足を感じる
- エンジンの種類によってアクセルレスポンスが異なる
- ターボエンジンと比べると馬力やトルクが低くなる
など
NAエンジンは、エンジン排気量が出力に直結している。また、ターボエンジンと比較すると馬力とトルクが低くなるため、小排気量で高出力を求める場合は、過給機付きエンジンのほうが適しているといえる。
ターボエンジンの特徴やメリット・デメリット

過給機付きエンジンのひとつであるターボエンジンは、エンジンが排出する排気ガスを利用してタービンを回し、コンプレッサーを動かして吸気を圧縮し、エンジン内に強制的に空気を送り込む構造を持つエンジンである。
そのため、エンジン排気量を抑えつつ、馬力やトルクをアップさせることができる。欧州車を中心に多く採用されているダウンサイジングエンジンは、ターボチャージャーを使って圧縮した空気をエンジンに送り込むターボエンジンだ。エンジン排気量を下げてターボチャージャーを装着することで、これまでのNAエンジンと同等、あるいはそれ以上のパワーを実現している。
では、エンジン排気量を抑えつつ、馬力やトルクを高められるターボエンジンには、どのようなメリット・デメリットがあるのだろうか。
ターボエンジンのメリット
ターボエンジンのメリットは、排気量がエンジンの出力に直結するNAエンジンとは異なり、エンジン排気量を抑えつつパワーを出せることが大きなメリットだ。その他にも、以下のようなメリットがある。
- エンジンそのものの大きさを小型軽量化しつつ出力を高めることができる
- ターボチャージャーの特性を利用することでトルクや出力をコントロールできる
- ドッカンターボのような急激な出力特性を持たないターボチャージャーも存在する
- 2010年代後半以降のターボエンジンは高出力でありながら燃費性能も優れている
- より高い出力のエンジンを作ることができる
など
ターボエンジンといえば、かつてのドッカンターボをイメージする方も多いかもしれない。しかし、近年(2010年代後半以降)のターボエンジンでは、ドッカンターボの特性がない小型タービンを用いたターボチャージャーや、大型タービンと小型タービンを組み合わせたツインターボチャージャーなど、さまざまなタイプのターボチャージャーがある。
かつてのターボは出力向上を目的とした過給機であったが、近年では排気量と燃料消費を抑えつつ高出力を得るためにも活用されている。つまり、高出力化と燃費性能を両立させるためにターボチャージャーが使われているということだ。
このように、ターボエンジンは進化を続け、さまざまな用途で活用されている。
ターボエンジンのデメリット
技術の進化によって、メリットが増えているターボエンジンには、デメリットも存在する。
- 出力を向上させるためのターボエンジンの場合はNAエンジンより燃費性能が悪くなる
- エンジン本体は小型化できるが、ターボチャージャーや補機部品の装着スペースが必要となる
- NAエンジンほど高い回転域まで回せない
- ドライバーのアクセル操作に対するレスポンスがNAエンジンよりリニアではない
など
NAエンジンとターボエンジンを比較すると、NAエンジンのようなドライバビリティは低くなるといえる。ただし、前述したようにターボエンジンの進化により、従来のデメリットは次第に解消されつつある。
近年のエンジンにはNAに近いターボもある

ターボエンジンは、出力を高めるための装置であるものの、近年では出力を高めるのと同時に環境性能を両立しているターボエンジンや一定のエンジン回転数になったら突然ターボが効き始めるといったドッカンターボではないタイプが増えている。ターボエンジンの中にはNAエンジンに近いフィーリングのエンジンもあるほどだ。
例えば、欧州車を中心に採用されているダウンサイジングターボエンジンは、排気量を抑えたエンジンにターボチャージャーを装着することで、従来と同等かそれ以上のトルクとパワーを実現し、環境性能も高めている。出力と燃費を両立するこれらのターボエンジンは、低回転域から最大トルクを発生させる特性を持つ。
具体的には、1,500rpm前後のエンジン回転域から最大トルクを発生させ、4,000rpm程度まで最大トルクを発生させ続けるという特性になっている。このような特性のターボエンジンにより、かつてのターボエンジンのようなターボラグが感じにくくなっているため、NAエンジンのような操作感で扱うことができるようになっている。
したがって、現代のターボエンジンは、かつてのネガティブな特性が大きく改善されているといえる。
NAとターボを選ぶときの判断基準

NAエンジンとターボエンジンは、どちらにもメリットとデメリットがある。内燃機関らしいエンジンの回転フィールを楽しみたいのであれば、NAエンジンのほうがよいだろう。また、高回転域での心地よいサウンドを楽しみたい場合も、NAエンジンのほうがよいといえる。
一方、エンジンを回して楽しむことよりも、低回転域から力強い加速を感じることができ、長距離運転をするときにアクセルペダルの踏み込み量を抑えて静かに走りたい場合などは、ダウンサイジングターボエンジンがおすすめだ。
ただし、運転のしやすさや加速感は車種によって異なるため、クルマ選びの際はNAエンジン車とターボエンジン車を乗り比べ、自分の感性に合うほうを確認することをおすすめする。
それぞれの特徴を理解して乗り比べると楽しさがわかる

車種によってNAエンジンとターボエンジンのラインナップがあることから、NAエンジンとターボエンジンはよく比較される。しかし、ここまで解説してきたとおり、それぞれのエンジンには特徴があり、メリット・デメリットも存在するため、どちらがよいかを断言するのは難しい。
もし、NAエンジンとターボエンジンのどちらの方が良いのか悩んだときは、実際にNAエンジン車とターボエンジン車の両方に乗って、エンジンのフィーリングを体験するとよいだろう。両方のエンジンを試乗し、自分が求める走行フィールに合ったものを選ぶことで、購入後に後悔する可能性を減らせる。
さまざまなクルマのエンジンフィールを実際に体験するには、多種多様な車種を取り揃えたおもしろレンタカーで乗り比べてみるのがおすすめだ。