クルマに大径ホイールが装着され、扁平率が低いタイヤが装着されると、見た目がよくなったり、足まわりの存在感が強調されたりするなどのメリットがある。しかし、低扁平タイヤを装着してホイール径を大きくすると、乗り心地が悪化したり、維持費が高くなったりするなどのデメリットも生じる。
今回は、低扁平タイヤ(扁平タイヤ/ロープロファイルタイヤ)が多くのクルマに装着されるようになった理由、メリット・デメリットなどを解説する。
低扁平タイヤ(扁平タイヤ)とは?

低扁平タイヤ(扁平タイヤ)とは、サイドウォールの厚さ(高さ)が薄い(低い)タイヤのことだ。クルマを横から見たときに見えるタイヤの側面部分をサイドウォールと呼ぶが、このサイドウォールの厚さが薄いタイヤを低扁平タイヤ(扁平タイヤ)という。
タイヤのサイドウォールの数値である扁平率は、タイヤに記載されたサイズを確認することで知ることができる。例えば、タイヤサイズが「225/45R18」の場合、「45」の部分がサイドウォールの厚さ、つまり扁平率を示す数字となる。
名称に「率」と付いていることからもわかるとおり、タイヤのサイドウォールの厚さは割合ということだ。ちなみに、単位は「%」だ。
例として挙げた「225/45R18」のタイヤでは、扁平率は45%である。この数値が小さくなるほど、サイドウォールの厚さ(高さ)が小さくなる。逆に、数値が大きくなるほどサイドウォールの厚さ(高さ)が大きくなるということだ。
一般的に、扁平率が55%以下のタイヤは、一般的に扁平タイヤと呼ばれる。近年の新車装着タイヤを見ると、扁平率50%以下のものが多い。
スーパーカーとして知られるランボルギーニ アヴェンタドールのタイヤサイズを見てみると、フロントが255/30ZR20、リアが355/25ZR21である。つまり、フロントタイヤの扁平率は30%、リアタイヤの扁平率は25%ということだ。
余談ではあるが、アヴェンタドールのタイヤの扁平率が前後で異なっていても、車両のサイドビューに違和感が生じないのは、タイヤの幅が前後で異なるためである。
アヴェンタドールの例は極端かもしれないが、高い人気を誇るSUVであっても、扁平率50%のタイヤが新車装着されていることは珍しくない。このような事例からも、近年の新車に装着されるタイヤは、扁平タイヤであることが多いと言える。
低扁平タイヤのメリット
低扁平タイヤには、主に次のメリットがある。
- スタイリングがよく見える
- コーナリング性能が向上する
低扁平タイヤは、サイドウォールの高さが低くなるため、ホイールの大きさが強調され、引き締まったスタイリングになる。また、サイドウォールの高さが低くなると、ステアリング操作をしたときに、タイヤがたわみにくい。そのため、よりダイレクトなハンドリングになり、コーナリング性能が向上する。
低扁平タイヤは、スタイリングを重視する場合やステアリングレスポンス・コーナリング性能を上げたいときに有効といえるだろう。もし、クルマのスタイリングを向上させたい、ステアリング操作に対するレスポンスを向上させたい、コーナリング性能を上げたいと考えているのであれば、ホイールをインチアップして低扁平タイヤを装着してみるのもいいだろう。
低扁平タイヤのデメリット
低扁平タイヤの主なデメリットは次のとおりである。
- 乗り心地が悪くなる場合がある
- 燃費性能が悪化する場合がある
- 維持費が高くなる傾向にある
扁平率が低いタイヤはタイヤそのものがたわみにくくなっているため、路面からの入力(衝撃や凹凸など)をダイレクトにクルマに伝えることになる。よって、乗り心地が悪化する可能性が高い。
ただし、乗り心地はサスペンションのセッティングによっても大きく変わるため、タイヤとホイールを変えても乗り心地に影響しない場合もある。つまり、タイヤの扁平率を低くしたからといって、必ずしも乗り心地が悪化するとは限らない。
また、低扁平タイヤは、転がり抵抗が大きくなる。そのため、燃費性能が悪化する場合がある。さらに、タイヤは一般的に扁平率が低くなるほどタイヤ本体の価格が高くなることが多い。よって、扁平率が高いタイヤから扁平率が低いタイヤに変えると、燃料費やタイヤ交換費用などの維持費が増加する可能性がある。
ここまで解説してきたように、タイヤの扁平率を下げて低扁平タイヤ(扁平タイヤ)を装着した場合、メリットよりもデメリットが多いように感じられるかもしれない。しかし、先述したとおり、近年新車装着タイヤでさえ、扁平率が50%以下のものが多くなっている。なぜ、一般的に扁平タイヤと呼ばれる扁平率55%以下のタイヤが増加したのだろうか。
低扁平タイヤが増えた理由

クルマに装着されるタイヤの扁平率が低くなってきた理由は主に次の3点だ。
- クルマの性能が向上した
- 車両重量が重くなった
- ブレーキ性能を確保するため
現在新車で販売されているクルマと過去に販売されていたクルマを比較すると、同じエンジン排気量でも最高出力や最大トルクが異なる。つまり、クルマ全体の性能が向上しているということである。
エンジンの性能が上がり、最高出力や最大トルクが高くなれば、そのクルマやエンジンに見合うブレーキが必要となる。もちろん、クルマの進化とともにブレーキも進化しているが、エンジンの出力に合わせた制動力を得るためには、ブレーキのサイズ(ディスクローターやパッドなど、ブレーキユニット全体)を大きくしなければならない。さらに、衝突時の安全性の確保、先進的な予防安全機能の装備、クルマの電動化などによって、クルマの重量は重くなっている。
このように、クルマに求められることが多くなったことも影響し、より高い制動力を発揮するブレーキの装着が必須となった。言い換えれば、ブレーキサイズを大きくせざるを得ない状況になっている。
クルマに装着するブレーキサイズを大きくすれば、必然的にホイールのサイズを大きくする必要がある。ホイールサイズが大径化すると、タイヤの扁平率を下げる必要が生じるため、近年の新車装着タイヤの多くが一般的に扁平タイヤと呼ばれる扁平率55%以下となっているのだ。
そのほか、スポーティなグレードやスポーツモデル特有のダイレクトなドライブフィールのためにホイールサイズを大きくし、低扁平タイヤを装着するという場合もある。
タイヤの違いによるメリット・デメリットを体験したいなら

クルマのタイヤの扁平率を低くすると、スタイリングがよくなったりコーナリング性能が向上したりするというメリットがあるが、乗り心地が悪化したり維持費が高くなったりするといったデメリットもある。
これらのメリットやデメリットは、実際に運転したり、同乗者の感想を聞いたりしなければわからない。もし、タイヤの扁平率による違いやメリット・デメリットを体験したいのであれば、さまざまなクルマに乗って体感することが最も確実な方法といえるだろう。
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