空冷と水冷って何が違う?エンジンの冷却方法の違いを解説

クルマの中で多くの熱を発生するエンジンは、効率よく冷却して適正な温度を保つことが重要だ。このエンジンの冷却方法には、主に「空冷式」と「水冷式」がある。これらの違いとは何なのだろうか。

本記事では、エンジンの冷却方法である空冷式エンジンと水冷式エンジンの違いを解説する。

エンジンをどのように冷却するか?

クルマのエンジンは、燃料を燃焼させて動力を発生させる装置である。その燃焼のエネルギーを回転運動に変換してトランスミッションやドライブシャフトなどを経由してタイヤが駆動しているのは多くの人がすでに知っていることだろう。

このエンジン内部で爆発が起きているときに問題となるのが、爆発時に発生する熱だ。

エンジンの燃焼によって発生した熱を適切に冷却できない場合、エンジンに熱が保持されたままとなり、燃料の異常燃焼が発生してパワー不足になることがある。また、エンジンで発生した熱がエンジンを構成する各パーツに留まっていると、シリンダーブロックやピストンなどの構成部品が熱膨張し、正しい圧縮や燃焼などができなくなり、エンジンにトラブルが発生したり故障したりする。

このような異常燃焼や熱膨張による不具合などを解消するために必要なのがエンジンの冷却なのだ。そのため、エンジンの性能を追求するのであれば、エンジンの冷却性能も同時に向上させなければならないということになる。つまり、より良いエンジンの追求とエンジンの冷却効率の向上はセットで考える必要があるということだ。

ここまで説明してきたように、エンジンの冷却性能はエンジンの性能にも直結するため、エンジンで発生した熱を適切に冷却する工夫が必要である。そこで登場するのが、今回のメインテーマである「空冷」や「水冷」といった冷却方法となる。

空冷式エンジンとは?

エンジンの冷却方法の1つである「空冷」は、文字通り空気でエンジンを冷やすことを意味している。

クルマの各部をよく見ると、エンジンで発生した熱を空気で冷やすために、エンジンルームに空気を誘導する構造が採用されている。その役割を果たしているのが、フロントグリルをはじめとするボディ各部に設けられたエアインテークである。

しかし、エンジンルームに空気を誘導するだけだと、エンジンを効率よく冷却することはできない。そこでエンジン本体に設けられているのが放熱フィンである。放熱フィンは、エンジンで発生した熱をエンジン本体の外側のフィンに誘導し、エンジンルームに取り込まれた空気を当てて冷却するという構造になっている。

エンジンルームに空気を取り込む工夫や、エンジン本体にフィンを設けることで冷却効率を向上させれば十分と思われるかもしれないが、これらは走行中の冷却効率を向上させるに過ぎない。クルマは、走行している場面だけでなく、停止している場面もある。そのため、クルマが停止している際もエンジンを冷却し続けなければ、エンジントラブルや故障を避けることはできない。

そこで登場するのが、強制的に空気をエンジンに当てる冷却ファンだ。エンジンの動力の一部を利用してファンを回してエンジンを強制的に冷やす冷却ファンは、クルマが止まっているときにもエンジンに空気を当てることができる。

このように進化を遂げてきた空冷式エンジンだが、エンジンの排気量が増加し、シリンダー数が増えると、冷却が追いつかないという問題が生じる。これが空冷式エンジンのウィークポイントとなり、空気でエンジンを冷やす方法から水を使ってエンジンを細部まで冷やす方法に変わった。

水冷式エンジンの特徴

エンジンの冷却方法として主流となっている構造が水冷式だ。水冷式エンジンは、文字通り「水」を使ってエンジンを冷やすという方法になる。エンジンを水で冷却するといっても、単に水をかければよいわけではない。

冷却水(クーラント/不凍液)は、エンジンのシリンダーブロック内部に設けられた「ウォータージャケット」を通り、エンジンの熱を吸収する。エンジンから奪った熱により温まった水は、ラジエーターを通って冷却され、再びエンジンを冷やすために循環する。

なお、ラジエーターはエンジンルーム前方に設置され、クルマの形状によって取り入れられた空気を利用して冷却効率を高めている。この冷却効率の上げ方は空冷エンジンに共通する点だ。

水冷式にすることで、エンジンの冷却効率は向上する。しかし、エンジンを冷やすだけでは、エンジンのパフォーマンスを最大限に発揮することはできない。エンジンの性能を最大限に発揮させるには、適切な温度管理が不可欠である。

その温度管理を担っているのが、サーモスタットという部品である。サーモスタットは、エンジン内に循環する冷却水の通り道をコントロールしている。つまり、冷却水をウォータージャケットのみに通すのか、ラジエーターを経由させて循環させるのかを制御している。このサーモスタットがあることで、エンジンが適温に保たれる。

また、エンジンの性能を素早く発揮させるために、冷え切った状態での効率を向上させる工夫も施されている。それがグリルシャッターだ。グリルシャッターは、冷え切っているエンジンを素早く温めるために閉じて、エンジンが温まってきたらエンジンの冷却効率を高めるために開く可動式のフラップ状のパーツである。

エンジンの熱対策として誕生した水冷式エンジンは、冷却効率が高く、温度管理が容易であることから現在の主流となっている。

昔の主流は「空冷」だった|特徴やメリット・デメリットまとめ

かつて多くの自動車メーカーが採用し、主流だった空冷式エンジンは、独特のメカニカルサウンドやフィーリングが魅力である。しかし、先述したとおり、空冷式エンジンは、走行中の冷却効率は良いものの、止まっているときの冷却効率が悪い。そのため、渋滞や混雑時などストップ&ゴーが頻発する状況では、トラブルが発生しやすい。

クルマのエンジントラブルは走行の可否に直結するため、安心して乗りたいのであれば空冷式より水冷式の方が良いといえるだろう。とはいえ、空冷式にしかない独特のサウンドやフィーリングは、今なお多くの人を魅了している。

一度体感したら忘れられないクルマらしいサウンドやフィーリングは、空冷式ならではの魅力だ。この空冷ならではの特徴を絶やさないためにも、今も空冷式エンジンを大切にしている人が多くいる。

現在の主流は水冷|特徴やメリット・デメリットまとめ

現在、ほとんどのクルマが採用しているエンジン冷却方法が水冷式だ。水冷式エンジンは、空冷式よりも冷却効率に優れており、走行時も止まっているときも安定したエンジン冷却が可能となっている。また、エンジンの細部まで冷却することができるため、排気量が大きいエンジンやシリンダー数が多いエンジンでも冷却効率が損なわれるという心配が少ない。

エンジンのサウンドや走行フィーリングは空冷式エンジンほどエモーショナルではないが、水冷式エンジンはスムーズで静粛性が高く、快適なドライビングが楽しめる。よって、高級車をはじめ、スマートさを売りとするクルマとの相性が良いといえるだろう。

ただ、水冷式エンジンでもエモーショナルなインテークサウンドやエグゾーストサウンドを奏でるものもある。そのため、ハイパフォーマンスな水冷式エンジンでも十分にエモーショナルなドライビングを楽しむことも可能だ。

エンジンが冷却されているか心配することなく、安心してドライブを楽しみたいのであれば、水冷式エンジン搭載のクルマを選ぶとよいだろう。

冷却効率を重視するなら水冷エンジンがいい

ここまで解説してきたように、エンジンは冷却させることが重要なポイントだ。冷却効率を重視するのであれば、空冷式より水冷式の方が良いといえる。また、猛暑や真夏日が続く近年の気象状況を勘案すると、空冷式より水冷式の方が安心して乗ることができるだろう。

ただ、水冷式エンジンでもエモーショナルなインテークサウンドやエグゾーストサウンドを奏でるものもある。とはいえ、現在ほとんどのクルマが水冷式エンジンを搭載しているため、クルマ選びの際に水冷式かどうかを確認する必要はほぼない。

どうしてもエモーショナルなサウンドやフィーリングを持つ空冷式エンジンのクルマに乗りたいのであれば、空冷式エンジンの扱い方を理解したうえで購入やレンタルするとよい。

エンジン冷却効率や性能はパフォーマンスに影響する

エンジンの冷却方法である空冷と水冷は、空気でエンジンを冷やすのか、水でエンジンを冷やすのかといった違いがある。

どちらも冷却効率を上げる工夫や技術開発がされてきたが、水冷式の方が冷却効率が高く、温度管理がしやすいため、現在ほとんどのクルマが水冷式エンジンを搭載している。

エンジンの冷却効率や冷却性能は、クルマの動力性能や耐久性に直結する重要な要素である。

クルマのパフォーマンスを落としたり、エンジンの故障で動かなくなったりしないようにするためにも、エンジンがしっかり冷却されるよう定期的な点検やメンテナンスをしておくことがポイントとなる。

安全にクルマを維持するためにも、定期点検や走行距離、使用環境に応じたメンテナンスを欠かさず行うことが重要である。

空冷エンジンと水冷エンジン、それぞれの特性を理解すると、クルマの走りやフィーリングの違いがより明確になる。特に、空冷エンジン特有のサウンドやフィーリングに魅了される人も多い。しかし、実際にその違いを体感しなければ、その本当の魅力は分からない。「おもしろレンタカー」では、空冷エンジンを搭載した名車もレンタル可能。ぜひ実際にドライブして、その独特のフィーリングを味わってみてほしい。