アバルト595は、そのコンパクトな外観からは想像できないほどのパフォーマンスを秘めたホットハッチとして、多くのファンに支持されている。しかし、この特異なモデルには、購入前にしっかりと考慮すべきポイントもいくつかある。
この記事では、アバルト595を購入する際に注意すべき点について、詳しく解説していく。
アバルト595を買って後悔する?購入前に知りたい注意点
「アバルト595」は、フィアットがアバルトブランドで発売している「フィアット500」のホットモデルだ。2009年の発売以来、大きなモデルチェンジをおこなわないまま現在に至るまで好調に販売を続け、売り上げを堅調に伸ばしている。
ここでは巷で聞かれる「アバルト595」の、購入前に知っておきたい注意点を探ってみたい。
燃費の悪さ
まず気になるポイントが「燃費が思ったよりも良くない」という意見だ。「アバルト595」に搭載されているのは1368ccの直列4気筒DOHCターボ仕様エンジン。
1.4リットルクラスのターボと聞くと今主流の「ダウンサイジングターボ」を思い浮かべるが、「595」のエンジンは2009年の発売から一貫して搭載され続けている古い設計の物なので、燃費を向上させるのは改良では限度がある。
実際の数字は、街乗りで10〜11㎞/L、高速道路でも14〜16㎞/Lという数字となっている。
メンテナンスコストの高さ
維持費という点ではメンテナンスの費用も気になるところだ。アバルト車では新車から3年間をカバーするイージーケア、その後の2年間をカバーするイージーケアプラス、さらに2年間をカバーするイージーケア7の3つが用意されており、最長で7年間のメンテナンス費用が毎回個別に払うよりもお得になるプログラムが利用できる。
その費用を参考にすると、新車購入から3年目以降の2年間で約9万円弱の費用となっている。これはディーラー整備に出した場合の7割ほどの価格設定と仮定すると、工賃の安い一般の整備工場に委託すればさらに低く抑えられると考えられ、極端に高いわけではないだろう。
となると、メンテナンス費用で最も大きなウエイトを占めるタイヤ交換の影響が大きいと思われる。「595」は205サイズの16インチタイヤが標準となっている。純正同等品であればハイグリップタイプのタイヤになるので、エコカーに装着されているものと比較すると、倍近い出費になることもある。
ただ、この「595」はスポーツ系のクルマなので、それを考慮するとけっして高い部類には入らないだろう。
再販価値の低下
掛かる費用を長い目で見たときにはリセールバリューも大きな要素だ。「アバルト595」の新車価格は現行モデルで約450万円が中心。一方の中古買取査定額を見てみると、下は30万円、上は270万円という価格だ。
単純に数字だけを比較すると、買取の最高額で比較しても約6割まで減少してしまうことになる。これは輸入車全体で見るとそれほど低いというわけではないが、実際はその数字を遙かに下回る場合も少なくないので、高年式車でも半分以下を覚悟しておいたほうがいいだろう。
実用性の制限(荷物スペース、後部座席)
室内空間に関しては、ベースの「フィアット500」とほとんど変わらないと見て良いだろう。大きく違うのは前2脚のシートがヘッドレスト一体式のスポーツタイプになっている程度で、室内空間に影響のある装備の違いは見られない。後部のラゲッジスペースも同様だ。
もともとルーフが高めのデザインのため、ヘッドスペースの心配も少ない。元々がコンパクトな3ドアハッチバックタイプの車なので絶対的な広さは望めないが、アバルトだからといって特に懸念するところはないと思われる。
故障リスクと部品供給の問題
イタリアメーカーのクルマというと、20年ほど前までは眉をしかめる人がいるほど故障に関しての信頼性が低いイメージがあった。
初期モデルが発売された頃はまだそういうイメージと実状が近い状態だったかもしれないが、それから20年近く同じ構成で改良が加えられたモデルということもあり、信頼性についての不安の声を耳にすることはあまり無くなった。
ただし、セミATの故障についての報告が散見されるので、AT使用の場合はその状態に気を使ったほうがいいだろう。そして、2024年5月に「フィアット500」の日本向け生産の終了発表があったのを受け、多くの部品を共有する「595」も、いずれ部品の調達が困難になるのではないかと心配の声が上がった。
確かな情報については発表を待たないとならないだろう。
アバルト595の魅力
アバルト595は、その魅力を一言で表すと「個性的な走りとデザインを持つホットハッチ」と言える。
コンパクトなボディとスポーティなスタイリング、そして強力なパフォーマンスが多くのファンを惹きつけています。見た目だけでなく、走りの質やエンジンサウンド、さらにカスタマイズの楽しみも加わり、他のコンパクトカーとは一線を画す存在感を持っている。
スタイリッシュなデザイン
「アバルト595」の魅力は、なんといっても「フィアット500」と共通する親しみのある可愛らしいデザインだろう。アバルト仕様はかわいらしさにスパルタンな印象が加わり、さしずめかわいさと凶暴さが同居したブルドッグを見るような感覚かもしれない。
女性オーナーが多いというのも頷ける。
高性能エンジンと走行性能
搭載されるエンジンは1.4リットルのDOHC直列4気筒ターボで、最大で190PSを発揮する。今となっては数字だけ見ると埋没してしまいかねないが、コンパクトな1100kg前後のボディを加速させるには充分すぎる出力だ。
アバルトで鍛えられた足回りもしっかりそれを支え、その気になれば鋭い走りを披露することも可能となっている。
独特のエンジンサウンド
充分すぎる出力に加え、一部のグレードやオプションで装着される「レコードモンツァ」マフラーによる迫力のエキゾーストサウンドも魅力のひとつ。
コミカルさを感じる外観から猛々しい排気音が聞こえるミスマッチが印象に残る。
カスタマイズ性
そして多くの純正オプションが用意されていることに加え、社外ブランドからもさまざまなカスタムパーツがリリースされているので、他の「595」と一線を画した自分だけの仕様に仕立てることができ、カスタムの楽しさも広がる。
比較検討
アバルト595は、同じくフィアット500をベースにしたモデルや、限定版のアバルト695と比較されることが多い。それぞれに特徴があり、価格や装備、走行性能に差がある。
どのモデルが自分に合うのかを見極めるためにも、各モデルの違いを比較してみることが重要です。ここでは、アバルト595とフィアット500、アバルト695の違いを詳しく比較してみよう。
フィアット500との違い
ベースとなる「フィアット500」との違いを見てみよう。まず外観では前後のバンパーに「595」専用の戦闘的なイメージのものが装着されている。
そして多くの車両が専用のオプションで用意されたデカールを装着している。内装は「フィアット500」が白基調なのに対して、「595」はブラックがベースの引き締まった印象になっている。
シートとステアリングも専用の物を装備。エンジンは「フィアット500」が直列4気筒1240ccと直列2気筒875ccターボの2種類に対して、「595」は直列4気筒1368ccのインタークーラー付ターボとなっている。力もそれぞれ100PS/85PSに対して、140PS(最大190PS)と大きな差がある。
クルマの性格と出力に合わせて、足まわりは固められ、グレードにより強化ブレーキが用意され、大径のホイールにワイドタイヤが組み合わされる。
アバルト695との比較
「アバルト695」は主に台数限定の特別仕様車に与えられるグレード名。2010年の「695トリブートフェラーリ」を皮切りに、ほぼ毎年企画され、それぞれの企画に応じた台数で販売されている。
基本的には「595」の豪華版という位置づけで、エンジンは高性能版(180PS仕様が多い)が搭載され、特別な内外装のカラーリングや、強化ブレーキ&サスペンション、エアロパーツなどが装着される。
元の販売価格が高いことに加えて台数限定ということもあり、中古車の相場は「595」よりも100万円以上高値が付いている事も少なくない。
購入を避けるべき人
アバルト595は魅力的なホットハッチですが、すべての人に向いているわけではない。特に、燃費や実用性を重視する方、静粛性や快適性を求める方には不向きであるかもしれない。
アバルト595はその走りの楽しさが最大の魅力であり、日常使いよりもスポーツ走行を楽しみたい方に適したモデルだ。ここでは、アバルト595がどのような人に向いていないかについて詳しく説明していく。
実用性を重視する人
「アバルト595」はその走り重視というキャラクターから、燃費や静粛性、乗り心地などの面で実用性の充実を求める人には向かないと言える。
そういう人にはベースの「フィアット500」を勧めたい。室内の広さやラゲッジスペースの容量を重視する人は最初から選択肢に入らないだろう。
低燃費・低維持費を求める人
かかる費用については極力抑えたいと考えている人にもお薦めできない。燃費については、現行のエコカーと比べると、はるかに悪い数値であり、年間の燃料コストにもかなりの差が生じるだろう。
また、メンテナンス費用についても安いとは言えない。本格的なスポーツカーに比べれば大人と子供ほどの差はあるが、平均的なファミリーカーと比べると、かなり割高に感じるだろう。
長距離ドライブが多い人
また、普段使いの頻度が多かったり、長距離の移動が多いというケースには正直向いていない。前述のように消耗品は平均的なファミリーカーと比べると割高で、燃費も人によっては眉をひそめるような数字に映るだろう。
どうせ費用をかけるなら、「595」の楽しさを堪能できる部分に支払うべきだと考える。いろいろと購入前に考えておきたい注意点について掘り下げてみたが、このクルマの本質と魅力は実用性やコスパとは遠いところにある。
もしかしたら、今は燃費や実用性が重要だと考えている人でも、実際にその目で見て運転してみたらその魅力の虜になってしまった、というケースも往々にしてある。もし購入を検討しているというなら、直接その魅力に触れて確認ができる「おもしろレンタカー」を利用してみてはどうだろうか。