その愛らしいデザインと、アバルトによるスパイスが効いた独特の存在感で、長く人気を博しているアバルト595。そのアバルト595が2024年をもって生産終了し、販売終了が近いとのウワサが流れている。
ここでは、その生産終了の噂について掘り下げていこう。
アバルト595の変遷
アバルト595は、2007年に復活したフィアット500(チンクエチェント)のホットモデルの位置づけになる車種。フィアット500をベースに、エンジンや足まわり、内外装がモディファイされ、2009年よりアバルトブランドより発売されている。
フィアット500との関係
ベースのフィアット500との主な違いは以下の通り。
- エンジンが1368 ccの直列4気筒DOHCターボ仕様(140ps〜190ps)になる
- サスペンションをハードタイプに変更
- 外装は前後バンパーを専用のものに変更、専用のデカールも用意される
- 内装は専用のステアリング、ヘッドレスト一体型のシートを装着し、ブラック主体の色使いとなる
- ホイールをインチアップし、ハイグリップタイヤを装着
- 一部仕様を除き、「レコードモンツァ」マフラーを装着
ほぼ毎年、特別仕様車が企画されており、専用のボディカラー、内外装の仕様やエンジンのセッティング変更によるパワーアップ、ハード仕様の足まわりなどが装着される。
アバルト595ファミリー
2009年からの主なカタログモデルは、以下のラインナップとなっている。
- 500:初期のベースグレード
- 500C:500のオープン仕様
- 695:180ps仕様のエンジンを搭載したモデル
- 595:当初は500の上位仕様だったが、後にベースグレードとなる
- 595ツーリズモ:595の上位モデル
- 595コンペティツィオーネ:走りの性能を高めた最上位モデル
- F595:レコードモンツァを標準装備した新たベースグレード
シャーシやエンジン、ボディの基本構成はほとんど変わらず、外装デザインの変更やエンジンセッティングの調整によるパワーアップなどで性能向上を図ってきた。
「アバルト595」は、2007年に復活した「フィアット・500(チンクエ・チェント)」をベースにモディファイをおこなったホットモデル。往年の「チンク」の「サソリ」バージョンの復活とあってイタリア車好き界隈には大きな話題を呼んだ。 発[…]
主な特別モデル
アバルト595には、ほぼ毎年リリースされてきた特別モデルが多くあり、そのほとんどはエンジンのセッティング変更により160〜190psへとパワーアップされている。
主なモデルを列挙してみよう。
※エンジンや足まわりをグレードアップさせる「SS(エッセエッセ)キット」を発売。このキットが、多くの特別仕様車のベースとなっている。
- 695トリブートフェラーリ:フェラーリとのコラボモデル
- 695トリブート・アル・ジャポーネ:トリブートフェラーリの日本限定発売モデル
- 500/500Cグリージョレコード:専用の内外装色
- 695エディツィオーネマセラティ:マセラティとのコラボモデル
- 595 50thアニバーサリー:イメージカラーの赤を採用し、専用デカールやホイール、ステアリング、シートなどを装備
- 595リミテッド:専用ボディカラー
- 695ビポスト:695の50周年を記念して、レース専用モデル「695アセットコルセ」の公道仕様に仕上げられたハイパフォーマンスモデル
- 595コンペティツィオーネ・スコルピオ:コンペティツオーネの専用ボディカラー、ブレンボ・ブレーキなどを装備した仕様
- 595コンペティツィオーネ・パフォーマンスパッケージ(Ⅰ/Ⅱ/Ⅲ):機械式LSDなどを装備
- 595(C)ツーリズモ・MTリミテッド:ツーリズモをベースとした5MT仕様
- 695Cリヴァーレ:高級ボートメーカー・リーヴァ社とのコラボモデル
- 595コンペティツィオーネ・スティーレ:普段使いのしやすさを向上させたモデル
- 695セッタンタアニヴェルサーリオ:アバルト70周年を記念して、創立年にちなんだ1949台限定で発売。コンペティツィオーネをベースにワイドフェンダーや大型ウイングを装備
- 595(C)・ピスタ:595よりパワーアップし、ハードな足まわりを採用
- 595(C)・エッセエッセ:コンペティツィオーネをベースにアクラポヴィッチ製のエキゾーストシステムを装備
- 595・スコルピオーネオーロ:ブラック&ゴールドのカラー
- 695アンノデルトーロ:特別色のモデル
- 595・モンスターエナジー・ヤマハ:2輪のMotoGPに参戦するヤマハのファクトリーマシンをイメージした仕様
- 695・トリビュート131ラリー:過去にWRCで活躍した「フィアット・131 アバルト ラリー」をイメージした仕様
- 695・ペッレ:ブラウンレザーシートを装着した仕様
生産終了のウワサの要因
2024年に入ってから、このアバルト595が生産終了するのではないかというウワサが聞かれるようになった。
5月には日本向け車両の生産は終了とのアナウンスが正式におこなわれたので、残るは国内の在庫と日本以外の地域向け生産車両を求めることになるが、以下の理由から、レシプロエンジンのままモデルが継続される見込みは薄いと言わざるを得ない。
フィアット500の生産が終了
アバルト595の生産が終了してしまうというウワサの要因は、ベースモデルのフィアット500の生産終了を受けてのものだ。今後はEVモデルの500eへと順次切り替えが進むだろう。
となると、必然的にフィアット500をベースに製造されるアバルト595シリーズの生産も時間の問題となる。アバルト(フィアット)からの公式なアナウンスは無いが、日本向け以外の生産も、いずれ停止されることが予想される。
アバルト595の存続の可能性
実際問題、ベース車両が無くなればそのモディファイド・モデルであるアバルト595の製造は困難となる。すでにメーカーサイドでは595の生産計画は完了していると考えられるため、今後発売される最後の特別仕様車で595シリーズのリリースは終了すると予想される。
希望的観測として、500eが主力となる中で595シリーズもEVとして存続する可能性が考えられる。しかしEVとなればレシプロエンジンを搭載する“サソリ”のモデルとは別物だと感じる人も少なくないだろう。
アバルト595を買うならいつ?
全ての国向け車両の生産終了が目前に迫っている今、アバルト595を購入するタイミングはどう考えるべきか、新車と中古の両面から見てみよう。
アバルト595は、そのコンパクトな外観からは想像できないほどのパフォーマンスを秘めたホットハッチとして、多くのファンに支持されている。しかし、この特異なモデルには、購入前にしっかりと考慮すべきポイントもいくつかある。 この記事では、[…]
アバルト595のバリエーションと新車価格
現行のアバルト595のシリーズは以下の4種となる。
- F595:448万円
- 695ツーリズモ:470万円(カブリオレは500万円)
- 695コンペティツィオーネ:480〜500万円
- アバルト500e:630万円(カブリオレは660万円)
また、75周年を記念した限定モデル「ABARTH 695 75°ANNIVERSARIO」も販売中だ。これらの日本向けモデルはすでに生産が終了しているため在庫限りとなる。
新車で最終モデルを求めるなら在庫があるうちに購入しないとならないため、すぐにでもディーラーに問い合わせを行うべきだ。
中古市場の相場状況
アバルト595の中古車相場は以下の通り。
- 595/F595:100〜400万円
- 595/695ツーリズモ:120〜330万円
- 595/695コンペティツィオーネ:140〜380万円
中古市場では、ベースグレードの595/F595が大半を占めており、ツーリズモやコンペティツィオーネは比較的少ない傾向にある。日本国内でも10年以上販売されていることから、年式による価格の差は非常に大きく、最安と最高では300万円近い開きがある。
例えば2013年モデルは100万円からと非常に安価で購入できるが、車両の程度にはバラつきがあり、慎重に選ぶ必要がある。一方、高年式車は価格が高い分、状態が良いと考えて差し支えないだろう。
アバルト595を勧められる人
アバルト595は、スパルタンな走行性能とユニークなデザインで、多くの車好きに愛されている。その魅力を最大限に楽しむためには、どのような人に向いているのだろうか。
ここでは、アバルト595が特に魅力的だと感じる人々について紹介していく。
独特の雰囲気に惚れ込める人
アバルト595の最大の魅力は、そのコンパクトさと愛嬌のあるデザインが生み出す唯一無二の雰囲気に、アバルト特有のスパルタンなスパイスが効いている点だろう。
そのため、外観に惚れ込めるかどうかで好みは大きく変わってくる。まずはこのルックスに惹かれた人がターゲットになる。
アバルトの歴史とイタリア車が好きな人
ベースの「500」もイタリアのコンパクトカーを代表する名車の系譜を汲むクルマだが、アバルトはイタリアのレースでの輝ける足跡があり、その名前を聞くだけで気持ちが昂ぶるスポーツカー好きも少なくない。
そのバックボーンに価値を見出す人は、アバルト595にさらに愛着を持つことができるだろう。
国産車には無いスパルタンさを求める人
アバルト595は、ミニマムな車体にサソリの血が注入されたコンパクトなホットモデル。このサイズでサーキットを攻めてみたいと思わせるスパルタンなポテンシャルを秘めたクルマは今となってはほとんど無いだろう。
小さなクルマで本格スポーツカーに迫る楽しみを堪能したい人には、唯一の選択肢といえるだろう。 そんな唯一無二の存在であるアバルト595(とそのシリーズ)は、サイズ感から乗り味まで、実際に乗ってみないとその魅力が実感できないところも多いはず。
アバルト595に興味を持ち、どんな乗り味なのかを確かめたい人は、おもしろレンタカーを利用して、その魅力をじっくり確認してほしい。