「アバルト595」は、2007年に復活した「フィアット・500(チンクエ・チェント)」をベースにモディファイをおこなったホットモデル。往年の「チンク」の「サソリ」バージョンの復活とあってイタリア車好き界隈には大きな話題を呼んだ。
発売から徐々に販売数を伸ばし、カーマニアだけでなく広い層に支持者を増やしている。正確には2009年に初回発売された当初のアバルト仕様は「500」で、2013年に追加された上級バージョンから「595」の名が与えられ、その後すべてのアバルト仕様が「595」に統一された。
アバルト595の魅力とは
アバルト595は、イタリアの小型車フィアット500をベースに、アバルトが高性能に仕上げたホットハッチである。独特のスタイルと力強い走行性能、さらにコンパクトなボディが特徴で、日本国内でも多くの支持を集めている。
街乗りからスポーツ走行まで幅広いシーンで楽しめる1台として、多くのカーマニアの心を掴んでいる。この魅力溢れる「アバルト595」について、その特徴や走行性能を詳しく見ていこう。
コンパクトでスタイリッシュなデザイン
アバルト595のサイズは全長3655mm/全幅1625mm/全高1515mmと、トヨタ・ヴィッツやホンダ・フィットなどの現代のコンパクトカーに近い寸法で、日本の狭い路地でも進入をためらうことは少ないだろう。
エクステリアもそのコンパクトなサイズに合った可愛らしい印象にまとめられていて、元祖「チンク」のエッセンスをふんだんにオマージュした独特のデザインテイストと相まって人気の要因となっている。
ただし、ベースモデルの「フィアット500」と比べると、バンパーやマフラーエンド、内装などが「サソリ」バージョンに相応しくスパルタンな風味が加えられている。
多くのファンを魅了するエンジン音
「アバルト・595」というと、後ろ姿のアイコンにもなっている4本出しマフラーから発せられる、その可愛らしい姿からは想像できない荒々しいエキゾーストノートが評判となっている。その音は「595コンペティツィオーネ」に設定された「レコードモンツァ」マフラーによるもの。
3500rpm以下では消音度の高い内側2本から排気をおこない、それ以上では外の2本を解放して高い排圧を抜くという可変機構が付いた仕組みになっている。そのため、高回転では市販車とは思えない猛々しい排気音を奏でる。
高性能エンジンと走行性能
エンジンは1368ccの直列4気筒DOHCターボ仕様を搭載。出力は140PS/5500rpm(MT)、トルクは18.4kgf·m/4500rpmを発揮。後に追加される限定モデルには180PS/190PSを発揮する仕様もある。
135PSという数字は特筆するほどには思えないが、軽量な1110kgの車重と猛々しい排気音によって、レーシーな気分で運転できるだろう。高性能なエンジンを搭載する「595」は、その動力性能に合わせて足まわりも固められている。
駆動輪を支えるフロントサスペンションには、「フィアット500」比で20%高いバネレートのスプリングが装着され、減衰力も強化されている。ホイールはベースグレードで「フィアット500」の同グレードより大径な16インチを採用。タイヤも205幅のワイドサイズを履く。
特別仕様車や2020年以降の「F595」にはさらに大径の17インチホイールが装着される。
カスタマイズ性と豊富なオプション
「アバルト595」には豊富なメーカーオプションが用意されていて、自分好みの仕様に仕立て上げることが可能となっている。大きなところでは前出の「レコードモンツァ」マフラーや、「サベルト」社と共同開発した「アバルトコルサ」シート、5枚の花弁をイメージした17インチのアロイホイールなど。
外装ではアバルトのレーシーなイメージに呼応するサイドストライプやサソリマークのステッカー、チェック柄のルーフデカール、そしてミラーとドアハンドルのカバーなどが用意される。他にも社外の「アバルト595」用パーツが多くリリースされているので、自分だけの1台を作り上げることも可能だ。
また、2021年には、通常は選択できないボディーカラーやシートカラー、アクセサリーパーツの組み合わせが可能になる「メイクユアスコーピオン」というキャンペーンが実施された。メーカーもカスタマイズの普及に力を入れていることが窺える。
アバルト595のスペック紹介
補足として「アバルト595」(ベースグレード)のスペックを記しておこう。
エンジン性能
- エンジン:1368cc直列4気筒DOHCインタークーラー付きターボ
- 出力:140PS/5500rpm(MT)
- トルク:18.4kgf·m/4500rpm
※後期モデルの「F595」は145ps、特別仕様は180ps/190psの仕様もあり
トランスミッション
搭載されるトランスミッションは、5速MTと5速セミAT(アバルト・コンペティツィオーネ)の2種が用意され、仕様によって組み合わせは異なる。ギヤレシオは広めの設定で、高速走行も余裕を持って行える。
サスペンションとブレーキ
サスペンション形式は、前がマクファーソンストラット式、後ろがトーションビーム式と、「フィアット500」と同様のオーソドックスな方式を採用している。オプションで「コニ」製の機械式可変FSDダンパーが用意されている。
ブレーキは前後ディスクブレーキ仕様で、2013年の走行仕様「SS(エッセエッセ)」にはブレンボ製キャリパーと大径ローターが用意された。
アバルト595の走り心地
ここでは「アバルト595」のインプレッションに基づく特性を紹介していこう。
市街地での使い勝手
まず、低く構えたレーシーな雰囲気から乗り心地が心配になるが、サスペンションのセッティングはむしろマイルドだと感じられるもので、普段使いでも足の硬さを感じることはほとんど無いだろう。
エンジンは低速域でのトルクが豊富というわけではないが必要充分で、街中を流す程度であれば不満は感じられない。何よりコンパクトな車体サイズで通る道幅をほとんど気にしないで済むのは快適だ。
ワインディングロードでの楽しさ
街中ではマイルドさを感じたが、コーナーリングの荷重でサスペンションが大きくストロークするワインディングでは、奥に行くに従い踏ん張ってくれるため、ステアリング操作に対しても遅れることなくスッと反応してくれる。
車体の軽さもその軽快感に確実に貢献しているだろう。ただ、ワイドレシオのギヤ構成のため、低いギヤでの上り坂での加速ではつながりに不満が出る場面があるかもしれない。
高速道路での走行性能など
140PSのベースグレードでも、意外にも高速道路での加速に不満は感じられず、軽快にキビキビと移動に専念できる。180PSモデルであれば、よほどでない限りは他の車両に後れを取ることはないだろう。
短いホイールベースのわりに直進安定性も悪くないようで、120㎞/h程で不安を感じることはない。
どのような層に支持されているのか
クルマのキャラクターを考えると、イタリア車好きの熟年男子が多いだろうと思っていたが、実際のところは女性オーナーの比率がかなり多いらしい。ベースとなった「フィアット500」なら分かるが、ホットバージョンの「アバルト595」で、しかもMT仕様を乗り回す女子が多いというから驚かされる。
さてそんな可愛らしい外観にサソリの毒針のような意外な戦闘力を秘めた「アバルト595」に興味を惹かれたなら、ぜひとも「おもしろレンタカー」の利用を勧めたい。
今なら180PSの「レコードモンツァ」マフラー装着車両にも乗れるので、まずは問い合わせしてみよう。