スープラ(A90)の魅力を徹底解説

2019年に、先代の80型から17年越しの復活を遂げた90型のトヨタ・スープラ。

中身はほぼBMW・Z4とも言われているこの90型スープラがどんなクルマなのか、ここで紐解いてみよう。

A90スープラの概要と人気の理由

90型のスープラは、トヨタのスポーツモデル専用ブランドGRからリリースされる最初のモデルということでGRスープラというネーミングが与えられている。

開発はBMWと共同でおこなわれ、Z4とは外装が異なる兄弟車と言って良い位置づけとなっている。

先代の80型でジャパニーズ・ハイパフォーマンスカーとして世界に認知され、映画に起用されたことなども手伝って大きな人気を得たため、スポーツ車やカスタマイズ好きのユーザーから次期モデルの要望が高まっていたようだ。

そんな中、17年ぶりの復活を遂げた90型のスープラは走りの評判も良く、日本のみでなく世界のスポーツ車好きの心を掴んでスマッシュヒットとなった。

スープラの歴史

スープラという車名は、元々は40型セリカの上位グレードである「XX(ダブルエックス)」の北米で販売する名から始まったというのは、その筋では有名な話。2代目の60型では、国内仕様はまだセリカの上位モデルだったが、次の70型からは一つの車種名として独立。国内でも「スープラ」の名で販売された。

その後新しいプラットフォームによってフルモデルチェンジを受けて80型となり、2002年の販売終了から17年後にこの90型として復活を遂げた。

現行モデル(A90)の詳細

ここからは90 型スープラの特徴について見ていこう。

エクステリアデザイン

外観のデザインは曲面を基調としたなめらかな流れの面で構成されたもので、先代の80型からのDNAの継承を感じさせる雰囲気を持っている。

フロントバンパーやフェンダーなど、各所に設えられたエアダクトの処理が特徴的だが、そのほとんどはダミーで機能的な効果は無く、デザイン上の処理のようだ。

また、外観上のポイントにもなっているダブルバブル・ルーフは2000GTから継承したものとも考えられる。

プラットフォームを共用するBMW・Z4との共通部品はドアミラーとドアノブのみとなっている。

インテリア・内装

内装は黒基調の落ち着いた雰囲気で、このデザインもBMW・Z4とはまったく異なる。

シートもM仕様を含めてZ4とは異なるデザインになっているが、ベース機構は共用だろう。

デザインは異なる仕上げになっているが、ステアリングやメーター、各種スイッチ類などはBMW製のものを使用しているので、外観も操作の感じもトヨタのものとは異なる。トヨタ車から乗り換えた際は慣れが必要かもしれない。

シャーシ・フレーム

90型スープラで最も重要なのがシャーシの設計だ。基本のプラットフォームはBMWのものを使用しているが、走りの根本である四輪の位置関係を決めるホイールベースとトレッドの比率を理想値に近づけるため、これまでに無いディメンションから設計をスタート。

トレッド(F:1610mm/R:1615mm)は日本国内でも実用性に支障をきたさないギリギリの幅として、ホイールベース(2470mm)を割り出した結果、GR86よりも100㎜短い数値となった。

その理想値に近い比率によって、ピュアスポーツ車として世界でも高い評価を得ている。

エンジンとパワートレイン

エンジンはBMW製の直列4気筒と直列6気筒の2タイプという設定。そもそもスープラはセリカに6気筒エンジンを搭載したモデルとして生まれたため、直列6気筒にこだわってきたが、この代で初めて直列4気筒エンジンが搭載された。

直列6気筒エンジンはBMWを代表する伝統的なエンジンでもあり、スープラの心臓として不足は無いだろう。

2998ccのDOHC直噴仕様エンジンに、BMW独自のツインスクロール機構を持つターボチャージャーが組み合わされ、340ps/51kgmという代パワーを発生させる。一方で直列4気筒エンジンは排気量が1998ccと少なく設定されている。

6気筒と同じく直噴のツインスクロールターボという仕様で、低出力版が197ps、高出力版が258psと2種類が用意されている。ミッションは当初8速ATのみという設定だったが、マニアの強い要望が募ったことから2022年には6速MTが一部グレードに追加された。

走行性能

90型スープラは、シャーシとボディの剛性がレースマシンのレベルだという。

オープンボディのZ4で充分な車体剛性を達成する設計がおこなわれたため、そこにルーフの剛性が加わり、レクサス・LFA以上の性能を獲得しているそうだ。

その頑強なシャーシとボディを軸にして、BMW製が誇るサスペンションの技術が加わった結果、この価格帯のクルマとしてはかつて無いほど高い水準の走行性能を実現。さらに電子可変制御のAVSサスペンションや車体姿勢制御なども加わり、公道からサーキットまで楽しめる、抜かりの無い仕上がりとなっているようだ。

安全装備・快適装備

ピュアスポーツ車といえど、公道の走行が基本の車両に安全装備は欠かせない。

いまではコンパクトカーにも標準装備されている、レーダーやカメラを使った衝突回避システムを装備。車線逸脱警告などもおこなわれる。

そして、そのシステムを活用するクルーズコントロールや、ブラインドスポットモニターも装備している。また、遠隔通信機能も備わっていて、専用アプリでスマホと連動し、車両の位置やバッテリー状態などが確認できる機能も使用できる。

A90スープラの中古車市場動向

90型スープラの中古車価格の動向を見てみよう。

中古車相場の推移

90型スープラの発売は2019年。初年度の国内(新車)販売台数は880台と少なかったが、翌年は2650台と大幅に伸ばし、2021年が0000台、2022年がおそらくコロナの影響で690台と大幅に落ち込み、2023年は1490台と盛り返す流れになっている。

2024年はまだ半ばだが、前半は月産目標の200台に少し足りないくらいのセールスを維持している模様。と、新車の販売は今年も堅調のようだが、中古車市場についても、台数はほぼ同じような比率で推移している。

価格はおよそ370〜1000万円の間で取引されているようだが、800万円を超える固体は特別仕様車や高価な外装キットを装着したもののようで、実質の上限は800万円に満たない額と見て良いだろう。

人気のグレードとオプション

グレードは、直列6気筒エンジン搭載のRZ、高出力版直列4気筒エンジン搭載のSZ-R、低出力版直列4気筒エンジン搭載のSZの3種構成。グレードでの人気はRZが過半数を超えているようで、やはりフラッグシップを求める層が多いということだろう。

オプション装備で価格に影響が出ると思われるのはRZのみに設定されたシートの表皮だろう。標準はアルカンターラだが、オプションで本革が選択できるので、これが適用された固体は少し高価となっている。

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中古車選びのポイント

90型スープラの中古車を選ぶ際に注意すべき点はいくつかある。まずは故障の際の修理が国産車に比べてやや高くなる可能性があるという点。

前述のように中身はほぼBMW・Z4のため、使用されている部品も当然BMW製となる。ディーラー修理ならトヨタ扱いとなるので懸念は少ないだろう。

しかし、修理費用を抑えるために自分で修理の手配をする場合、国産車の部品よりもコストが掛かってしまうことを覚悟した方が良い。特にスープラは軽量化のために前部の外板がアルミ製となっているので、補修や交換の費用はかさむだろう。

中古車を自分で査定するときは、それらの点を考慮しておいた方が良いだろう。

A90スープラのカスタマイズ事例

90型スープラはカスタムの需要もかなりある車両だ。そのため国内外で多くのカスタムパーツがリリースされている。ここではカスタムのポイントを見ていこう。

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外装のカスタマイズ(エアロパーツ、ホイールなど)

カスタムパーツの中でも、車両の雰囲気が変更できる外装パーツはいちばんの人気だろう。パッと調べただけでも多くの製品が見つかることでもそれがわかる。

バンパーの下端や両サイドなどに装着する補助スポイラーの類いや、ミラーやサイドパネルのカバー、エンブレムチューンなどの“ちょい足し”パーツは手軽に導入できるので需要が多い。

その一方で、リヤゲート後端に装着する大型のウイングやディフューザーの追加を始め、バンパーごと交換してしまうケースや、ワイドボディキットを装着してしまう大胆なカスタムも、けっして数は多くないが支持されているようだ。

とにかく種類は豊富にあるので、目的と予算に合わせて自由に選べるという状況になっている。

内装のカスタマイズ(シート、ステアリングなど)

内装で最も多いのはステアリングのカスタムだろう。かつてはスポーツ系の社外ステアリングに交換するのがセオリーだったが、今はエアバッグやいろいろなスイッチ類がビルトインされているので、その機能を捨てるという選択はしづらい。

そのため、純正のステアリングをベースにして、メーカーでカスタムが施された製品が販売されている。価格が高くなってしまうのは避けられない。

また、シートに被せるカバーや、表皮を張り替えるサービスもあるようだ。

エンジンチューニング

高出力の設計で作られた3ℓクラスのエンジンなら、フルチューンで1000psを狙うことが可能だ。さすがに市販のエンジンでその域にはとうてい届かないが、90型スープラに搭載されている6気筒の「B58型」は、ECUチューンのブーストアップで400ps(60kgm)を超えることが出来ると言われている。

エンジンチューニングとしてはかなりの高コスパでパフォーマンスアップが狙える。

あとはマフラーの交換が人気だ。

純正でも充分高い排気効率を持っているようなので、パワーアップ目的よりも軽量化とイメージアップのためと考えた方が良いかもしれない。

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サスペンション、ブレーキのアップグレード

足まわり、ブレーキともに、公道では不足するということはほぼ無いと言えるくらいのレベルのものが装備されているし、ダンパーはモード変更で固くできる機能もあるので、サーキットでタイムアタックするような場合でない限りは交換の必要は無いと思われる。

ただし、外観のイメージ変更のために車高を下げたいというような場合は、車高調整式のダンパーに交換するというケースもあるだろう。製品は国内メーカーからもリリースされている。

ブレーキのアップグレードキットもリリースされているので、ストッピングパワーを上げることは可能だ。

A90スープラのライバル車との比較

もし90型スープラの購入を考えている場合に、比較対象となる車種との違いが気になるだろう。カンタンにライバルと想定される車種との比較を見ていこう。

国産スポーツカー(新型フェアレディZ、新型シビックtypeR、A80スープラ)

国内で90型スープラのライバルというと、RZ34型のフェアレディZが筆頭に挙げられるだろう。性能で見ると、Zは3.7ℓのV6エンジンで最大405psを発揮。スープラを大きく上回っている。パワーウエイトレシオで見てもスープラが0.22、Zが0.25となるので、加速性能はZが有利だ。

シャーシ性能は数値にできないが、剛性はスープラが優れていると見て良いだろう。

車体のサイズはほぼ同じだが、ホイールベースはスープラが80㎜短く、前後重量配分的にも50:50を達成しているスープラが有利だ。

動力性能はフェアレディZが有利だが、その他の要素ではスープラが勝っていると言える。

輸入スポーツカー(ポルシェ・ケイマン、BMW・Z4など)

輸入車のライバルとしては、兄弟車のBMW・Z4と、ある意味ど真ん中のライバルと言えるポルシェ・ケイマンが挙げられる。

Z4とは同じプラットフォームなので、シャーシとパワートレーン、足まわりなどは同じと考えて良いので、まずボディの違いはどうだろう。クルージングの楽しさや官能面ではオープンルーフに軍配が上がるが、いざ走りの比較となると、剛性が圧倒的に高く、空力的にも優れているクローズドボディが有利だ。

この比較については好みで分かれると言うしかないだろう。

ケイマンと比較してみよう。

スープラのRZの対象となるグレードは、同じ6気筒エンジンを積むGTS 4.0だろう。

GTS 4.0のエンジンは4ℓ水平対向6気筒(NA)で、400ps/42.8kgmとなっており、出力特性ではケイマンが有利だ。

車重は1420kgとスープラより軽く、パワーウエイトレシオは0.29。この数字からは、ケイマンの方が軽快で力強いということができるだろう。

加えて、8000rpmまで気持ちよく回るNAならではのfひーリングも魅力。そしてなんと言ってもケイマンの特徴はミッドシップ・レイアウトだという点だ。

同じ後輪駆動なら、駆動輪への荷重に有利なミッドシップがFRよりも有利とされている。ポルシェが熟成させたシャーシと足まわりの完成度もトップレベルだろう。

走りの性能においては、まだポルシェの方が一枚以上うわ手と言って良いだろう。

価格、性能、使い勝手などの比較

性能の面ではそれぞれ得意とする部分があり、用途や好みによってマッチする人は分かれるだろう。そして、その車種を購入する上では価格も重要な判断材料となる。

スープラRZの新車価格730万円を基準として見ると、国産ライバルのZR34フェアレディZのバージョンSTが660万円で、カタログスペックで比較する範囲ではコスパが良いと言える。

ケイマンGTS 4.0の新車価格は約1200万円とかなりの差がある。この価格差を考えると、スープラの性能はかなり健闘していると言って良いのではないだろうか。

ただ、ここまで価格に差があると、ライバルとして見るのは少し無理を感じないではない。

ちなみに中古での価格ではケイマンGTS 4.0は1300万円以上と新車より値上がっているようなので、その差はさらに開くことになる。
スープラはどんな人におすすめか?

さて、以上の90型スープラを掘り下げてみた情報から、どんな人にオススメできるのかを考えてみよう。

まずは、ピュアスポーツとしてイチから設計されたクルマを楽しめる人。スープラの魅力の一つは、そのこだわりのシャーシ設計にあると言っていいだろう。

ある意味このように採算を度外視してこだわりを優先させて作られた車種は、世界を見渡してもかなり少ないだろう。

今のご時世にレシプロエンジンのみの構成で、さらに1000万円以下でとなると、他には無いかもしれない。

走りに関しても、安全性や快適装備をしっかり備えた状態で1500kg台という重量に抑えられ、加速性能も必要充分以上のポテンシャルがあり、高性能な足まわりと充分な容量のブレーキを備えているので、サーキットなどで本格的に走りを楽しみたいという人も満足させられるに違いない。

あと用途に関しては、ソロ、または2人でのツーリングやレジャーを楽しむ人が適している。スープラは2シーターで後席が無いので、子供や家族を乗せての移動はできない。

このようなクルマは今後新たにリリースされる可能性はかなり低いと思われるので、今のうちにこだわりが詰まったそのスープラの走りを体感してみていただきたい。

お試しで乗ってみたいという場合は、手軽にレンタルで試乗ができるおもしろレンタカーがオススメだ。